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18.スタンピード

「スタンピードだと!?」


 ノーマンさんが慌てて立ち上がり店から出る。

 おーい、護衛対象置いて行って大丈夫なのかノーマンさんよ。


「勇人様」


 青龍がこちらに対して目配せをしてくる。俺はそれに答えると席を立つ。


「とりあえず冒険者ギルドで情報収集だ。それぐらいの時間はあるだろう」


 俺がそう言うと、周りもうなずき立ち上がる。ノーマンさんも店内に戻ってきて早口で答える。


「ひ……お嬢様、スタンピードが起こったのは事実のようです。すぐさま安全な場所へ!」


 ノーマンさんがそう言うと、アンジェ王女は呆れたように嘆息する。


「はぁ、ノーマン……。貴方私の話を聞いてましたか? 勇者様が立ち向かうと言うのにその時に私が隠れてどうするのですか。ともに立ち向い、スタンピードを討伐すべきでしょう」


「そ、それは……、しかし!」


「それにスタンピードが起こったなら安全な場所などどこにあるのですか? 門が破られたら? 街中にもモンスターが入ってくるのですよ。貴方と問答している余裕はありまあせん、ギルドに向かいましょうハヤト様」


「おう。みんな行くぞ」


 そう言ってみんな連れ立ってギルドに向かう。


 ギルドにつくと辺りは騒然としていた。ギルド職員らしき人物が慌ただしく駆け回り、冒険者らしき人物達はピリピリした雰囲気でたたずんでいる。


「Dランクパーティー、ワンダラーズのハヤトだ。スタンピードの件でギルドに来た。今の状況はどうなって──」


「悪いんですけど、Dランクの貴方の相手をしている暇はないのです! 一刻を争うのであっち行った!」


 カウンターに近づいてパーティー名を告げるも、けんもほろろに追い返される。えぇー、ギルドマスターから直々にスタンピードの解決に協力して欲しいって言われたんだが? そこらへんの意思決定が末端まで行ってないのか。

 いや待てよ。確か緊急依頼という形をとるって言ってたな。とするとそれに参加すればいいのか。俺がそう思うや否や、ギルド職員の一人が羊皮紙をもってクエストボードに駆け寄る。そして、羊皮紙をクエストボードに貼ると、ギルド内にいた冒険者達がクエストボードに殺到する。


「私たちも見に行きましょう」


 青龍に促されて俺も見にいく。人が多くて見るのが大変だったが、その内容はシンプルだった。


『緊急依頼

 ランク   Dランク以上の全てのランク(強制)

 報酬    参加費:銀貨1枚(一人当たり) 解決報酬:金貨1000枚(山分け)

 依頼主   冒険者ギルド

 依頼内容  ガロで発生したスタンピードの解決


 急いで書いたのか、筆が乱れまくって読みにくかったが内容はそんな感じだ。しかし、見たことない言語なのに筆が乱れまくってると認識できるってすごいな。トランスレイト、不思議魔法である。

 そして、Dランク以上は強制参加か。なるほど、これのためにギルマスは俺をDランクに上げたのか。

 しかし、解決報酬金貨1000枚ってすごいな。日本円に換算したら10億だぞ10億。まぁ、山分けだからそのままもらえる訳ではないだろうが。

 とりあえず、これって受注どうしたらいいんだろ? カウンターで言えばいいのか?

 そう思って周りの冒険者の様子を見るがカウンターに近寄るような冒険者は一人としていなかった。次々とギルドから出て行っている。


「受付とかしなくていいのか?」


 周りは外に出ているが、俺は不安なのでカウンターの受付嬢に尋ねる。いや、これで受注してないとかだったら働き損じゃん。


「Dランク以上の冒険者はこちらで全て把握していますので、緊急依頼は受注の必要はありません。ていうか、こんな無駄話してないでさっさと行ってください!」


 怒られてしまった。仕方ないので、みんなが向かってる方向へと走って向かう。

 街の門の前まで到着すると大勢の冒険者たちがそこにたむろしていた。外壁に登るものや、武器を構え臨戦態勢の者など様々な冒険者がいるが、門の外に出ようとする冒険者は見当たらなかった。


「門の外に出ようって冒険者はいないんだな。やっぱ勝手に出ちゃまずいのか?」


 俺がそう独りごちると、側にいた冒険者が俺に話しかけてきた。


「門の外は騎士団の管轄だ。俺ら冒険者は門が破られるまでは外壁から援護するんだよ」


 なるほど、一番危険なところは騎士団が対応するのか。しかし、門が破られてからが冒険者の出番が本番といのは少々困る。こちらとしては地形も変わるような魔法攻撃をしてスタンピードを蹴散らすつもりだからだ。具体的にはメテオストライクを。

 魔法習得の時にもメテオストライクを使ったことはあるのだが、最少威力でつかったので、こぶし大の隕石がボコっと落ちた程度だったのだ。まさか第十位階がそんな威力のはずはないだろう。青龍も本来はもっと凄まじい威力ですと言ってたしな。


「じゃ、俺らは外壁の上から騎士団の援護だな」


 まぁ、援護で終わらせるつもりはないけどな。


「お任せを。私も援護ということであれば四属性魔法が使えますので」


 アンジェ王女が軽くガッツポーズをしながら、嬉しそうに声をかける。


「あたしは得物が剣だから役立たずかなぁ……」


「わ、私はそもそも戦闘が……」


 前島さんとアンナリーナさんは、がっかりしたようなホッとしたような複雑な表情で自ら戦力外を通告する。


「今の武器は槍ですから援護は無理ですね」


 と青龍。


「弓があれば射たのだが」


 そう答えるのはノーマンさん。弓は扱えるのか。一応俺のアイテムボックスには青龍用の弓もあるが、勝手に出しても良いものか分からないから黙っておく。


「とすると、この場で戦えるのは俺とアンジェだけか」


「頑張りますね!」


 本当は青龍も戦えるのだが、ギルドに得意武器を武器全般としてる以上、魔法の力は隠しておいた方がいいだろう。隠し球を発揮する場面はここではないはずだ。

 青龍から聞いたメテオストライクの効果範囲を考えれば、俺が一発ぶち当てるだけで青龍の援護射撃は必要ないだろう。


「スタンピードが来たぞ!!」


 外壁の冒険者たちから、大きな声が上がる。さて、本領発揮といこうかね。

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