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14.依頼報告

「常時依頼ってここでいいのか?」


 ガロの街に戻ってきて、すぐに冒険者ギルドに顔を出した俺たち。カウンターの受付嬢に尋ねる。


「はい、ここで受け付けております。なんの常時依頼でしょうか?」


「ゴブリン退治だ。ここに耳を出せばいいのか?」


「はい、ギルドカードと一緒に出してくだされば、こちらで確認いたします」


 そう言われ、三人でギルドカードを提出し、俺がアイテムボックスからゴブリンの耳52個を取り出す。ついでに、ホブゴブリンの耳も10ほど取り出すが、ホブゴブリンの耳を取り出すところで受付嬢の顔が引きつった。


「す、すごい数ですね。パーティーでそれだけの数を?」


「あぁ、あとついでにゴブリンシャーマンとおぼしき奴も狩ったんだがこいつも常時依頼の対象なのか? 討伐証明部位がどこか知りた──」


「ゴ、ゴブリンシャーマンですって!?」


 俺が全てを言い終わる前に受付嬢が身を乗り出す。


「それ本当でしょうね? 嘘だったら大変なことになりますよ?」


 受付嬢が脅してくるが俺は慌てず騒がず、ゴブリンシャーマンが使ってた杖を6本取り出す。杖の先端がしゃれこうべになってるかなり特徴的な杖だ。このしゃれこうべって人間のなんかな?


「ゴ、ゴブリンシャーマンの杖! ほ、本物……。しかも、6本も!? た、大変! ギルドマスターに報せないと!」


 そう言って受付を放棄して、奥へと引っ込む受付嬢。おーい、こっちは放置か。ていうか、仕事放棄せずに誰かに頼むなりしろよ。

 しかし、ゴブリンシャーマンの何がそんなに危険なのか。確かに魔法を使うのは厄介だったが、魔法さえ封じてしまえば楽勝だったけどな。気づかない間に死んでたし、耐久もそんなにないのだろう。

 しばらく待ってると、先ほどの受付嬢が神妙な顔でこちらにやってくる。


「すいません、お待たせしました。ギルドマスターがお会いになるそうなので、2階のギルドマスターの部屋までご案内いたします」


 ギルドマスターの呼び出しかよ。俺まだFランクなんだが? ていうか、今回ばかりは俺悪くないぞ。本当にゴブリンシャーマン弱かったし、「何かやっちゃいました?」案件ではないぞ、絶対。


 とりあえず、案内されるがままにギルドマスターの部屋までいく。というか、王女様ご一行もついてきてるけどいいのか? まぁ、この人らもゴブリンシャーマンに襲われてたから証人としては有用ではあるけど。


「ギルドマスター。例の冒険者をお連れしました」


 受付嬢さんがそう言い、扉を開ける。

 ギルドマスターの部屋は奥に大きな机が一つにその手前にソファが2つ向かい合って間に背の低い机があると言った感じの、別な表現をすれば校長室か社長室かって感じの部屋だった。

 奥の机に座っていたのは強面の、いかにも私冒険者を引退してギルドマスターやってますと言った感じの人だった。

 こういう場合、ヒョロガリの文官系のギルマスやら、ガチムチの冒険者引退しましたって感じのギルマスのパターンがあるのだが、今回は後者のようだ。


「ご苦労。さて、俺はガロのギルドマスターやってるギルバートってもんだが、まぁ座れよ」


 言われた通りに、用意されたソファに腰掛ける。しかし、全員座れるだけのスペースがなかったので、座れたのは俺と前島さんとアンジェリカ王女だけだった。青龍はじめ従者連中は立ったままだ。

 ギルドマスターはチラとアンジェリカ王女の方に視線を向けるが、視線を向けただけで特に気にした風はなかった。やっぱ仕立てのいい服着てるから目に入ったのか? 防具なしは俺も前島さんも同じだからな。

 まさか、王女バレじゃないよな? いや、気にしてなさそうだからそれはないか。


「しかし、Fランクがゴブリンシャーマンをね。たまにいるんだよな、登録してすぐに上位のランクのモンスターを倒してくる奴。

ま、冒険者になる前に修練を積んだ奴がいるのはおかしくないから、今回のことも不思議ではないが、問題はそこじゃない」


 そこで、ギルマスは言葉を区切ると、何が問題なのかをゆっくりと話し始める。


「問題なのはゴブリンシャーマンが六体も出たってことだ。ゴブリンシャーマンがいるということはゴブリン共が集落を作ってる可能性があるってことだ。しかも、目につく範囲だけで六体ものシャーマンだ、さらに上位のゴブリンナイト、もっと上のゴブリンキングが発生しててもおかしくない。そこまでの規模となると討伐隊を編成して向かわせなければいけない。

そういう事態を防ぐための常時依頼だが、こうやって集落が発生してしまうこともある」


 なるほど、ゴブリンシャーマンそれ自体が問題なのではなく、ゴブリンシャーマンが発生するほどの集落を形成してるかもしれないというのが問題ということか。

 とすると、これもい言っておいた方がいいのか。


「俺はモンスターを鑑定できないからわからないんだが、オーガとおぼしきモンスターもゴブリンと一緒に出現していた。証人もいる」


「あぁ、あれはオーガで間違いない。私が保証する」


 後ろで立ってるノーマンさんが保証してくれた。なるほど、あれはオーガで間違いなかったのか。まぁ、肌の色が明らかにゴブリンと違っていたし、ゴブリンの上位種って感じではなかったしな。


「何!? オーガだと!? そいつはどうした!?」


「一応倒した。討伐証明部位が分からなかったので生首だけ持ってきた。ここで出そうか?」


 本当は全身持ってきてるが、アイテムボックスのことはバレたくないのでそう答える。この世界にアイテムボックス的な何かがあるかはまだ確認できてないからな。


「い、一応……。そんなんで倒せる存在じゃないんだが。と、とりあえずだしてくれ。ちゃんとこの目で確認しておきたい」


「ほい」


 そう言われ、アイテムボックスから生首を取り出す。ていうか、結構重いな。生首とはいえかなりのサイズだからな。


「た、確かにこれはオーガだ。……これはお前が?」


「いや、俺じゃなくてこっちの青龍だ。まぁ、俺でも多分倒せるだろうけど」


 そう言って青龍を指す。青龍も当然ですと言った顔をしている。

 別に俺でも倒せると言ったのは自惚れでもなんでもなく事実だ。魔力消費を考えずに本気を出せば、第十位階のデスグラスプなりブレイクなりぶち込んでやれば死なない奴はいないだろう。


「そ、そうか……。Fランクでか。こりゃ凄まじい大型新人がきたみたいだな」


 ギルドマスターは引きつったような笑みを浮かべてこちらを見る。


「しかし、オーガとゴブリンが一緒に出たとなると、事態はより一層深刻になるなな。スタンピードが起きる可能性まで出てきた」


「あ、すまん。今思い出したがオーガとゴブリン達が一緒に出てきたのは魔物寄せの香の効果だと思う。確かそう言ってたよな?」


 そう言って、改めてアンジェリカ王女に確認をとる。


「はい、私の鑑定結果に間違いがなければそうでしょう。ですがそれは問題ではないのですよ、ゆ……ハヤト様」


「ん? どういうことだ?」


 今コイツ勇者って言いかけたな。でも、なんで言い直したんだろう。彼女にとっては俺のことを秘密にする理由はないはずだが。あ、でも俺が隠したいと思ってると向こうは思ってるから、その関係か。


「たとえ魔物寄せの香の効果でおびき出されたとしても、オーガとゴブリンが同時に現れれば、互いに争いを始めるはずなのですよ。ですが、現れたオーガとゴブリンは連携して私たちを追い詰めてきました」


 そうなのか。その場面は俺たちは見てないから知らなかった。というか、モンスター同士でも争いってするのか。


「そのお嬢さんの言う通りだ。オーガは縄張り意識が強く、同族ですら縄張りに入ってきたものに対して容赦しない。ゴブリンと同時に現れるなんて通常はあり得ないんだよ」


 つまり、それがスタンピードの前兆ってわけか。


「スタンピードって、モンスターが大挙して押し寄せてくる現象、って解釈でいいんだよな?」


「そうだ。さっきのオーガとゴブリンの話のように、本来相争うはずのモンスター達が争わずに大挙して町や村に押し寄せてくる。それがスタンピードだ」


 ギルドマスターはそう説明すると、言葉を切り神妙な顔でこちらに向き直る。


「取りあえず、ゴブリンシャーマンの発見及び、オーガ討伐の功を持って、お前達三人をDランクにまで引き上げる」


 なんか、ランクが一気に2つも上がった。それ自体は嬉しいことだが、どうやらギルドマスターの表情を見る限りまだ続きがあるようだ。この時点で嫌な予感しかしないけどな。


「その代わりではないが、是非ともこれから起きるであろうスタンピードへの対処の協力をお願いしたい。これは後にギルドから正式に緊急依頼と言う形で出すことになる」


 ほーら、やっぱこうなったか。

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