表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/163

11.ゴブリン退治? 2

「居ました。ゴブリンです」

「ホブゴブリンを見つけました」


 青龍がどうやってるのか知らない謎の索敵スキルでどんどんゴブリンを見つけるお陰でこちらは大量にゴブリンを狩れている。

 しかも、恐ろしいことに途中から距離がある状態から、敵の種類と数を正確に言い当て始めた。この状況で成長もしてるとかお前マジでなんなの。


「お前の索敵スキルマジで何? 俺もそれ欲しいんだが」


「長年の経験と勘ですよ。それよりもそこそこの討伐数が稼げました。そろそろ撤退してもいい頃です」


「だな」


「や、やっと帰れる……」


 前島さんが安堵の表情を浮かべる。

 結局討伐したのは、ゴブリン32、ホブゴブリン4、ゴブリンシャーマン(だと思う)1という数だった。


「ていうか結構いたよな。いきなり魔法打ってきた個体が居た時は驚いたけど」


 その時は相手も的確に戦力にならない前島さんを狙ってきていたので、冷や汗ものだった。俺が前に出てシールド魔法で防御している間に、青龍が速攻で倒してくれたおかげでことなきを得たが。

 流石に青龍も人の生死がかかってる場面で、「お手並み拝見」などとは言い出さないようだ。


「でもこれ、ゴブリン討伐の常時依頼よね。ホブとかシャーマンとか倒してよかったのかしら?」


「そうは言っても倒してしまったのはしょうがないと思う」


 あれだ、青龍の無駄に高性能な索敵が悪い。ここまで倒すつもりなかったし。

 あと、ホブとシャーマンの討伐証明部位は分からなかったため、死体を丸ままアイテムボックスに入れてある。後でギルドに聞いてその部分だけか最悪全部出せばいいし。

 まぁ、見た感じホブはノーマルと同じく耳で、シャーマンは持ってた杖が証明部位っぽいと思うので、それだけは別に確保してあるが。


「じゃ、帰ろうか」


「お待ちください勇人様。何か聞こえませんか?」


 しかし、帰ろうとしているときに青龍が神妙な声で告げる。


「いや、聞こえないが……。あ、待て。こういうときは、『フィジカルエンチャント』」


 青龍の言葉に、身体能力を向上させる魔法を耳にかける。本来の使い方とは違うか、こういう使い方も可能はなず。


「きゃあああああ!」


 聞こえてきたのは悲鳴だった。声の質からして女性の悲鳴だ。これはすぐさま助けに入るべきだが、


「どうされます?」


 青龍の反応は冷淡だった。別に私はどっちでもいいですよという雰囲気をビンビン感じる。

 やっぱこいつ前島さんに特別塩対応なんじゃなくて、俺以外に冷淡なだけなのか? いやでも、姉ちゃんや冬美の奴に対しては敬意払ってたよな。あの二人は特別ってことか?


「助けに行くに決まってるだろ!」


「では、そのように」


 ちょっと怒りながら言ったのだが、青龍はその怒りをスルーし、何も言わずに先導を開始する。


「え? なに? 何事?」


 悲鳴が聞こえてなく、事態を把握できてない前島さんがクエスチョンマークを浮かべる。


「悲鳴が聞こえたんで、助けに行くんだよ! ほら、行くぞ!」


 青龍がなにも説明しないので仕方なく俺が説明して、前島さんの返事を待たずに青龍の後を追う。


「あ、待ってよ」


 前島さんも追いかけてくる気配があるが、正直それを気にかける余裕がないほど青龍が早い。いや、青龍が本気で走ったら俺が追いつけるはずもないので、アレでも手加減してるのだろうが。


「だ、誰か! 誰かぁぁぁ!!」


 しばらく森の中を駆けると今度ははっきりと助けを求める声が聞こえてくる。


「!」


 後方で前島さんが息をのむ音が聞こえる。ていうか、ちゃんと付いてこれてるのか。前島さん体力はないけど、身体能力はすごいのか? 勇者補正かもしれん。


「い、今の声って!?」


「舌噛むぞ。黙って走る!」


 相変わらず青龍が見失いそうで見失わないギリギリの距離を保って先導する。すると、先導していた青龍が槍を抜き放ち──、


 ザシュ!


 その先にいた何者かに槍を振るう。まだ遠くてよく見えないが多分一撃だろう。

 ていうか青龍、ゴブリン退治の時もそうだったが、徹底的に槍しか使ってないな。俺に魔法を教えたんだから魔法も使えるはずなのに一切使わない。なんかこだわりがあるのか、魔法を使うまでもないのか、槍に自信があるのか。

 取りあえず、青龍が先制したのでその間に俺も駆けて現場にたどり着く。


 そこに広がっていたのは惨憺たる現場だった。めちゃめちゃに壊れた豪華だったろう馬車と馬の死体。さらにその周りに鎧を着た人間が五人ほど鎧を破壊され出血した状態で倒れ伏していた。他に見るからにメイドっぽい人も一人。

 まだ健在な人が二人だけ残っていたが、そのうちの一人も鎧はすでにボロボロで、立っているのがやっとと言った感じだ。

 その一人に庇われる形で後ろにいた少女。この人が例の悲鳴の主だろう。見るからに仕立ての良さそうな服を着ていて、高貴な感じがする少女だ。

 で、それに対峙しているモンスターが二十数体ぐらいか? いや、もっといるか? 取りあえずそれぐらいいる。

 ゴブリンはゴブリンシャーマンも混じっているが、その中にいた特徴的なモンスター。鬼の形相に一本角、灰色の体躯に成人男性よりも3周りほどでかい身長、と明らかにゴブリンとは異なっているモンスター。

 鬼の顔してるし、オーガかこいつ?


「青龍!」


「勇人様。デカブツはお任せを!」


 青龍に追いつき名前を呼ぶと青龍はそれだけで伝わったのか、推定オーガに向かって突貫する。


「大丈夫か、あんたたち。助けにきた」


 青龍がオーガを相手にしている間に俺は残ってた二人に声をかける。


「あ、ありがとうございます」


「な、なにが助けにだ! 防具もつけてないじゃないか! 初心者がいい格好するな、早く逃げろ!」


 護衛と思しき人はこっちを心配しているのか、逃げろと言ってくれた。言葉は悪いが悪い人ではないのだろう。

 まぁ、こっちとしてもわざわざ助けに来て逃げるなんて真似はできないので無視するが。


「追いついた……。ってうえっ、ま、また気持ち悪く」


 前島さんは現場にたどり着くなり青い顔をしていた。まぁ、すごい光景だもんね。これは仕方ない。


「前島さん、俺たち(・・)が周りの雑魚を片付ける! そこの二人の護衛を頼んだ!」


「えっ!? ちょ、ちょっと!」


 前島さんの返答を待ってる時間はないので、二人を前島さんに押し付けると、俺も周りにいるモンスターに向かって駆け出す。


「『召喚 トウコツ』!」


 これだけ数が多すぎると俺では手が回らない。なので、戦闘ということもあり、やつを召喚してことにあたらせることにした。


「ハッハァー! ようやく出番か。待ちくたびれたぜ!」


「トウコツ! モンスターだけを倒せ!」


「ッチ。分かったよ、モンスターだけをやればいいんだな」


 なんとなく嫌な予感がして命令をしたが、舌打ちしたところから考えて、俺の判断は間違っていなかっただろう。やっぱこいつ危険だわ。放って置いたら護衛対象まで殺しかねない。


 取りあえず雑魚散らしはトウコツに任せるとして、俺は大物──とは言ってもゴブリンシャーマンが精々だが──を片付けることにする。


「『サイレンス』」


 その名の通り沈黙魔法である、これでゴブリンシャーマンは魔法が使えない。五体もいたので5回もかけるハメになったが。

 そして、ゴブリンシャーマンがまごまごしている間にトウコツと一緒にゴブリンを片付け──、って早ぇ! もう半分ぐらい減ってる! 素手と爪で戦ってるだけなのに何このペース。こいつ本当に強いんだな。よく勝てたな俺。


「『マジックミサイル』『マジックミサイル』『マジックミサイル』」


 その場から動かずに、マジックミサイルでゴブリンを一体ずつ仕留めていく。追尾式で絶対に外すことはないって特性がすごい便利だ。よそ見しながらでも打てる。第一位階でも最優の魔法なんじゃなかろうか。

 他の戦場はどうなってるのかと、魔法を打ちながら横目で見る。


「GAAAAA!」


「よっ、と」


 青龍の方を見ると、なぜか青龍が苦戦していた。こちらから攻撃せずにオーガの攻撃をひたすら避け続けていた。

 青龍のことだから一瞬でケリがつくかと思ったのだが、オーガはまだ健在だ。そして、よく見ると今青龍はなにも持っていない。


「おっと、勇人様。そちらも余裕が出てきたようですね。なんでも良いので槍を取り出してはくれないでしょうか? こいつとの戦いで折れてしまいまして」


 そう言われて周りをよく見ると、柄が真ん中からぽっきりと折れている槍が見つかった。オーガの攻撃をガードでもしたのか、振るう力が強すぎて折れたのかは分からないが、使い物にならなくなったことだけはわかる。


「あぁ、わかった。ほらっ」


 詠唱が出来ずに戸惑っているゴブリンシャーマンからは目を離さず、アイテムボックスから槍を取り出すと青龍の方に放り投げる。


「感謝します。『タフン』『シャープエッジ』」


 そう言って、青龍はこのクエストで初めて魔法を使う。頑丈にする魔法と切れ味を増す魔法か。

 ていうか、青龍が魔法使わないといけないほど強敵なのか。まぁ、青龍の方は心配する必要はないだろう。それより心配なのは前島さんだ。


 前島さんは、剣を構えながら向かいくるゴブリンたちに相対していた。


「く、来るなっ! えいっ!」


 相変わらず剣を持っているというより剣に持たれているという感じだが。剣筋そのものは悪くなかった。

 ていうか、ちゃんとゴブリン切れてるじゃないか。未だに近接で攻撃するの嫌がっている俺とは大違いだ。

 取りあえず、マジックミサイルを打ちながら前島さんの挙動を気にかける。この中で一番実力足りてないというか、戦闘が不安なのが前島さんだからな。しっかりと動向を見てないと不安で仕方ない。

 マジックミサイルを打ちながら、しばらく前島さんの戦いぶりを眺めていたが、その時ふと頭の中で「カチリ」と何かがハマる感触がした。


「?」


 その感触が何か分からなかったが、取りあえず気にしないことにしてマジックミサイルを打つことに専念する。割としっちゃかめっちゃかに打っていたのでだいぶ数が減ってきている。トウコツが倒したのも含めるとそろそろ全滅しそうだ。

 ていうか、マジックミサイルって死体には追尾しないんだな。これは死体確認にうまく使えそうだ。

 あ、気づいたらシャーマンも死んでる。ちょっとよそ見しすぎたか。


 青龍の方をもう一度見てみると、すでにオーガは倒した後だった。いつも通りオーガを首ちょんぱで仕留めた青龍は血のりを拭きながらこちらにゆっくり歩いてきてる。

 前島さんの方も顔を青くしながらも、何体かゴブリンを切り捨てていた。というか、加勢した方がいいなこれは。


「『マジックミサイル』」


 最後の一匹にマジックミサイルを当て、戦闘は終了した。


「はーっ。はーっ。はーっ!」


 荒く息をつく前島さん。一通り息を整えるとその場にへたり込んだ。

 戦闘は終了したと見て良いと思われるので、トウコツも送還する。


「トウコツご苦労だった」


「戦闘になったらまた呼べよな」


 それだけ言ってトウコツは姿を消す。正直確かに戦闘の役には立つが、命令してないことなら平気で色んなことしでかしかねないので、呼ぶのは躊躇われるやつだ。


「お疲れ様でした、勇人様」


「あぁ、ていうか前島さんにも言ってやれよ。前島さん頑張ったんだから」


「それは勇人様の役目ですので」


 そう言って、青龍は取り合わない。まぁ、後で俺から言っておくか。

 さて、問題はモンスターに襲われていたこの人たちだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ