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7.冒険者ギルド

「ここが冒険者ギルドか」


 街の人に聞き込みをしながら、目的の場所に辿り着く。盾の上に交差する剣が描かれた、パッと見は武器屋か? って思ってしまうエンブレムが特徴的だ。


「これ、入ったらやっぱり周りの冒険者に絡まれる定番のイベントがあるのかしら? 女子供のやる仕事じゃねぇぜ、みたいな。

あ、でもこの場合絡まれるのは真宮寺さんの方か。女侍らせてんじゃねぇよ、みたいな」


「そんな定番はいらん。まぁ、俺も絡まれるんじゃないかとは思うが」


「でしたら、私は姿を消しておきましょうか、勇人様?」


「いや、本当に絡まれた時にお前がいないと対処できそうにない。いてくれ」


「そんな事言ってて男として情けなくない?」


 前島さんが嘆息しながら俺に文句を言う。


「しゃあないだろ。近接戦闘はまだ未熟だし、魔法だと加減がきかないんだよ。ていうか、そっちだって絡まれたらどうしようも出来ないだろ。こう言うのは大人しく出来る奴に任せておけばいいんだよ」


「それはそうかもしれないけど」


「ほら、とっと行くぞ」


 問答を切り上げて、さっさと冒険者ギルドの中に入ることにする。冒険者ギルドに入ると一斉にこちらに向く視線。

 そして、すぐにそらされる視線とじっとこっちを見たままの視線。すぐにそらしたのは興味をなくした枠か。じっとこっちを見たままの方を警戒した方がいいか。

 とりあえず視線のことは気にせずにそのままカウンターに向かう。


 冒険者ギルドそれ自体の内装は、いかにもファンタジーの居酒屋でございと言った感じの内装だった。見た目通り酒場も内包しているのか、いくつかあるテーブルに、受付っぽいカウンター。その側にある依頼用と思しき掲示板。想像していたのとそう大差ない内装だった。


「ようこそ冒険者ギルドへ。クエストのご依頼でしょうか? それとも冒険者の登録でしょうか?」


 ギルドの受付嬢と思しき女性が俺を見ると対応してくる。明らかに武装してるのにクエストの依頼はないんじゃない? まぁ、防具してないからそう判断したのかも知れないけど。悪いな、武器で金使っちまったんだよ。


「冒険者の登録の方だ。この三人で頼む」


「了解したしました。では、こちらの方に必要事項をご記入ください」


 そう言って羊皮紙が差し出されるが、俺はチラとここに入ってから向けられた視線の方に目をやる。

 そうすると、何人かはすでに視線を外していたが、何人かはニヤニヤとした目をこちらに向けていた。……あいつらは要注意だな。今の時点で手を出してこない事は登録終わってからイチャモン付けてくるパターンか。


 とりあえず、用紙に目をやるが記入事項はほどんとなく、氏名、年齢、得意武器、出身など簡単な事しか書かれてない。

 氏名はハヤトで、年齢も17、得意武器は魔法ってことにしておくか。出身は空欄で。二人の方も見るが、同じように書いていた。

 が、おい青龍。名前が偽名のアオイなのは良いとして、年齢が20はちょっと鯖読みすぎじゃねーかなって。どこぞの永遠の17歳よりはマシだけど、お前年齢うん千歳だろうが。まぁ、冷静に考えるとまともに年齢書くとエルフと誤認されるってのはあるかもしれないが、それにしたって。

 て言うか、青龍の得意武器すげぇな。武器扱い全般って。槍推してたから槍がメインウェポンと思ってたのに。

 前島さんは、サクラで、年齢は16、得意武器は剣だった。て言うか、俺より一つ下だったのか。て事は学年はタメか一個下かのどっちかか。

 全員書き終わり、受付嬢に提出をする。


「はい、では次はこちらの水晶に手を当ててください。魔力パターンを計測し、ギルドカードに刻みます」


 ステータスが表示される水晶とかじゃないのか、俺のステータスとかどうなってるのか一度見てみたかったんだが。と言うか、前島さんが言ってたみたいにスキルがある世界なんだよな? とするとステータスもあると思うんだが。今度ステータスオープンとでも言ってみようかな。


 三人とも水晶に手を当てたが、魔力パターンを計測というだけあって、こういうときにありがちな「な、なんて言う魔力!!」って言いながら水晶が割れる展開はなかった。まぁ、ここで悪目立ちするのも困るから、普通で大変結構なのだが。


「はい、計測完了です。ギルドカードの完成までしばらく時間がかかりますので、冒険者ギルドの規則に付いて説明致しますね」


 そう言って説明を始める受付嬢さん。聞いている限りでは一般的な異世界小説に出てくるような冒険者ギルドと変わりがなさそうだった。

・ランクはFからSまであるが、Sは名誉称号のようなもので現在Sランクの冒険者はいない事。

・依頼はギルドに貼ってある依頼ボードを通して受ける事。依頼の達成やギルドへの貢献などでランクアップがある事。受けれる依頼は自分より一つ上のランクまで。

・基本的に自己責任であるが、ギルド非所属の人たちに迷惑をかけてはいけない。その場合事情聴取などあるが、それに寄って降格などのペナルティあり。

 など、他にも注意事項はあったが大体こんなところか。


 これ、最後のやつあれだよな。ギルド非所属の人に迷惑をかけたらペナルティって、逆に言えばギルド所属同士の争いは関知しないって事だよな。

 なるほどな、登録する前に手出ししてこないのはこのためか。俺らが登録完了すれば晴れてギルド所属の人間になるからそこからちょっかいをかけるってわけか。

 基本的に自己責任、ね。非常に素晴らしい規則だな。


「なるほどね……、自己責任とは実に素晴らしい規則だな」


「ええ、全くもって」


「???」


 俺と青龍はそれを聞いて察するが、前島さんは俺たちが何を言ってるのか分からなかったようだ。クエスチョンマークを浮かべてる。

 俺と青龍の言葉を聞いて、受付嬢さんは申し訳なさそうに小声でこちらに話しかける。


「自己責任と言いいましても、あまりにも目に余る場合はギルドから処罰があります。それも含めての自己責任です」


 一応ギルドも自治してるって事で良いのかね? それでも、今なお注がれる視線を見るだに全く安心出来る要素はないが。


「では、こちらが皆様のギルドカードになります。紛失した場合再発行に銀貨5枚がかかりますので注意してください。

皆様のランクはFからスタートになります。ところで、ここでパーティーを結成なさいますか?」


 ギルドカードを渡されるが、普通に木片に紋様が書いているだけだった。糸を通せるように穴が空いてるから首から下げろって事なのかな? なんとなくだが、ランクが上がればカードも豪華になりそうだ。

 で、パーティーの話か。


「パーティーを結成するとどんなメリットが?」


「依頼を受ける時や、ダンジョンに潜るときに手続きが一回で済みますし、何よりソロで受けるより依頼の安定感が違います」


 なんか、あんまりメリットっぽいメリットじゃないな。それって全部ギルド側の都合では?

 手続きもそうだし、ソロより安定するって事は、依頼達成率が上がってその分ギルドの信頼が獲得できるとか。

 まぁでも、今後この三人で活動するわけで、パーティー組まない理由もないわけだが。


「まぁ、一応この三人で活動する予定だしな。パーティーを結成するよ」


 なんか前島さんからの視線が刺さってる気がするが、あえて無視する。まぁ、前島さんとしてはずっと俺と行動するのは嫌なのだろう。でも、面と向かって主張もできないって感じか。

 しっかし、この好感度マイナス状態はどうにかならんもんか。それもこれも、いきなり隷属の首輪なんてつけようとした王様連中のせいだな。完全に人間不信になっておられる。


「分かりました。パーティーにもランクがございまして、パーティーのランクは基本的にそのパーティーで一番高いランクの人に合わせられます。パーティーが一人になると自動的にパーティーは解散となります。それで、パーティー名はどうされますか?」


「パーティー名か、それって今決めなきゃダメか?」


 いきなりパーティー名とか言われても何も思いつかんな。それにこう言うのは勝手に決めるんじゃなくて互いに相談してから決めたい。


「後で正式に決めていただいても構いませんが、手続き上とりあえず仮でも良いので何かしらパーティー名を決めていただきたいのですが」


「じゃあ、ワンダラーズ(仮)って事で」


 後で決めれるんだったらなんでも良いだろう、と言う事でとっさに思いついた言葉でパーティー名っぽいのを上げる。特に両名からも不満は出てないようなのでこれで良いだろう。

 まぁ、青龍が俺の言葉に不満を唱える事はないだろうけど。時にはお諫し、とか言ってたけど基本的にはイエスマンだよなコイツ。


「では、ワンダラーズで登録しておきますね。Fランクパーティーとして登録完了です。では、よき冒険者ライフを」


 そう言って受付嬢が一礼。

 俺たちはカウンターを離れ、依頼ボードの方へ歩こうとすると、そこへ立ち塞がる人影があった。


「おうおう、綺麗なねーちゃん達連れてるじゃねーか、ガキンチョ」


「そこのねーちゃん。こんなガキ放っておいて俺と遊ばねーか?」


 見るからに私チンピラですって感じの二人組に絡まれる。

 まぁ、こうなると思ったよ。


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