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3.異世界行きへの準備 1

 パチリと目が覚める。寝る前と同じ俺の部屋だ。今回もはっきりと夢を見た記憶がある。

 二度目ではあるが、まずは夢が現実であることは検証する必要がある。


「アイテムボックス」


 そう唱えると、目の前にウィンドウが開く。その中には二つのアイテムがあった。


「やはり、夢はマジか。いや、今更疑うわけじゃないけどな」


 そう言いながら、その二つのアイテムをタッチする。まずは水晶の方から。


「呼晶? こしょうって読めばいいのか? 名前ないとか言ってたけどちゃんとあるじゃないか。音だとイマイチわかりづらい名前だけどな。

で、もう一つの方は……」


 もう一つの笛の方をタッチする。すると、「異世界転移の笛」とこれまたダイレクトな名前が表示される。


「名称がダイレクトすぎんだろ……、て言うか、アドミンのやつの話を信じるなら、これはただのメッセージ伝えるだけのアイテムでこの笛自体に異世界転移の効果ないだろ」


 これは名称詐欺ではなかろうか。JAR○に訴えるべきか。


「勇人様」


 そして、スッと音もなく青龍が現れると、俺の方を悲しそうに見る。


「行かれるのですね?」


 どこに、とは聞かない。すでに俺が異世界転移をすることは話してあるからだ。俺が起き抜けに異世界転移どうこう言ったから、青龍がそれだけで察したのだろう。


「あぁ、そうだな。だが安心しろ。お前も一緒に来てもらうからな。いや、この場合安心するのは俺の方か。お前に来てもらうと安心するしな」


 安心させるようにそう言うが、青龍の表情は暗いままだった。


「勇人様、お気遣いありがとうございます。ですが、無理なのです。私は次元の壁を越えることができません。勇人様についていくことは無理なのです」


「あぁ、そういえばアドミンのやつ、青龍は次元跳躍出来る様にできてないって言ってたな」


「そうなのです。ですので私はついていくことは──」


「それを解決するアイテムなら貰ったぞ。こいつがあれば青龍を次元跳躍とやらをさせることが出来るらしい」


 そう言って、アイテムボックスから呼晶を取り出して青龍に見せる。


「なんですか、これは?」


 青龍が不思議そうに呼晶をかざしたり下から見たりしている。見た目は本当にただの占いにでも使いそうな水晶だな。


「さっき言ったろ。青龍を次元跳躍させるアイテムだって」


 もう一度同じことを言うが、青龍からの視線は冷たいままだった。


「勇人様、気休めは結構です。そんなことは不可能なのです。私は次元跳躍ができないように定義されているのです。どうやっても無理なのです」


「うーんこの」


 うーむ、ラチがあかん。どうやったら青龍を納得させられることが出来るのか。こう言う時鑑定技能があったら楽なのに。次のチートスキルは鑑定技能でももらうか?


「そうだ、鑑定魔法とかないのか? それ使って鑑定してみたらどうだ?」


「鑑定魔法ですか? 第九位階にそう言う魔法がありますが」


「無駄に高っ! じゃあ、それ使ってみろって。俺の言ってることが真実だって証明されるはずだから」


 第九位階ってそれ人間が使用不可能な魔法じゃないか。鑑定ってもっと気軽に出来ないもんなん?


「はぁ、そう言われるのでしたら……。『アプレイザル』」


 そう言って、呼晶に鑑定魔法をかける青龍。なるほど、鑑定魔法はアプレイザルって名前なのか。よし覚えだぞ。今後は俺も使えるはずだ。


「えっ……」


 鑑定結果が出たのか、驚きで固まる青龍。て言うか、鑑定結果は俺に見えないから何に驚いたのか分からないんだが。


「どう言う鑑定結果だったんだ?」


「えっと、その……。使用者の使い魔を、全ての条件、概念を無視してその場に呼び寄せる────概念兵器、と出ました」


「うん、聞いてた通りの内容だな。これで青龍も異世界に連れていくことができるな」


 概念兵器とかなんか不穏な単語が聞こえた気がするが、それはあえてスルーする。重要なのは青龍を異世界に連れていくことが出来ると言うことと、青龍を納得させることだ。


「い、いえ。しかしこれは一体!? 概念兵器など私は初めて見ましたし、いえ、確かにこれが本当に概念兵器なら確かに勇人様に呼んでいただければ私も次元跳躍はできるでしょう。ですが、勇人様これを一体何処で!?」


「夢の中で、だよ」


 と言うかそれ以上は俺も説明のしようがない。


「アドミンとかいうものから、ということですか。世界の管理者とは一体何者なのですか……?」


「それは俺にもわからん。分かるのは俺が乞われて異世界行きをするってことだけだ」


「そうですか。いえ、分かりました。私も異世界に行ける。そう決めることにいたしましょう。ですが、いつなのでしょうか?」


「タイミングに関してはこっちで決めていいみたいだ。ただ、長くても1ヶ月以内に準備してくれってことだったが。準備ができたら笛を吹いて寝ればいいらしい」


「笛を吹くだけで……? いえ、でも、準備期間があるというのは喜ぶべきことですね。正直今の状態で異世界行きは危険ですので。魔法以外の武器扱いも習得していただけなければ」


「うっ、それがあったか。まぁ、あと他に色々買い揃えたい物もあるしな。この前の妖退治のバイトで金だけはあるからな。アウトドアグッズに向こうで金に換えれそうな物とかも買わないと」


「しかし、それらの物を異世界に持っていけるのでしょうか? 寝て移動するのでしょう?」


「あぁ、アドミンからアイテムボックスってギフトを貰ったからな。容量は無限って言ってたしどんなものでも持っていくことができるぞ」


「なんか、ますますアドミンとやらの謎が深まっていくのですが」


「気にすんな。俺も気にしないことにした。さ、買い出しに行くぞー」


「お供いたします」


 そう言って、俺は青龍と連れ立って買い物に出掛けた。さしあたってはまずホームセンターかな。


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