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12.次の異世界へ

 ザシュッ、グサッ。


 最後の妖を陰剣で切り裂くと、辺りにもう何も居ないかどうかを確認する。うん、何も居ないようだな。これで今回の依頼は達成か。やはり頭数が増えるとだいぶ楽になるな。


「よし、これで依頼達成だ。あ、一応言っておくが報酬はそっちには分けないからな。体で払ってもらう、そういう取引だったからな。そっちも、第七位階魔法の実地試験が出来て一石二鳥、だろ?」


 そう言って、俺は今回の同行者レンさんの方に向き直る。レンさんの方はというと、ホッとしたようなむかっとしたような複雑な表情を浮かべていた。


「……確かにそういう取引でしたよ。えぇ、体で払うと言いましたし、私もそのつもりでした。でもですね、夜半過ぎに呼ばれて、これで私も処女卒業か、と残念半分、期待半分で身綺麗にして下着も上下揃えた可愛いのを着て来たら、いきなりモンスター退治に連れてこられた私の気持ちが分かりますか?」


 そう言うレンさんはちょっと、いやかなりお怒りのようだ。怒気がこっちまで飛んできてるのが伝わってくる。


「そうは言っても、俺も軽々しく女性を抱くわけにもいかんのでな。別に心の通った相手じゃないと嫌だとか、童貞みたいなことをいう訳じゃないぞ? 今の時点で俺に心を向けてくる相手が既に複数いるからな。そいつらの相手をする前に他の女性を相手にするのは不誠実だからだ」


「……随分とおモテになるんですね。それだと私みたいな醜女はお呼びでないってことですか? そう言ってくれた方がむしろすっきりするんですけど」


「お前さん、それ他の女に言ったら刺されるぞ。あんたほどの美人はそうはみないぞ」


「そ、それはどうも……」


 どうも褒められ慣れてないのか、照れたような表情を浮かべるレンさん。


「ま、ともかく。これであんたとの取引は終了だ。あんたとの関係もこれまでってわけだ。あとは国に帰るなり好きにしていいぞ」


「えぇ、国に帰らせていただきますよ。協会に論文も提出しないといけませんし、これ以上日本にいても得るものはなさそうですしね。では失礼しますね、ヘタレ童貞さん」


 最後に特大の侮蔑の言葉を投げかけて、レンさんは姿を消した。ていうか、なぜ童貞ってバレたし。


   ※ ※ ※ ※ ※


 時間は少し巻き戻り、アーミンの家に運び込む家具が自宅に届いた頃だ。

 かなりの大荷物であるため、家具屋がサービスで組み立てと搬入を手伝ってくれると申し出たのだが丁重にお断りしておいた。家具を設置するのはここじゃないし、どうせアイテムボックスに入れて運ぶんで、運搬の手間はかからないからだ。玄関に積み上がる家具の段ボールを見ながら、「本当に大丈夫なのか?」と言った表情のまま帰る家具屋。


「さて、運ぶか」


「確かに運ぶ場所が場所だから、家具屋には頼れないけどさ。あなたの使い魔たちに手伝ってもらわなくてもいいの?」


 アーミンが心配そうに声をかけてくるが、心配ご無用。俺はそれを実証するためにアイテムボックスに家具を放りこむ。


「!? 消えた!? 今何をやったの!?」


「アイテムボックスの中に入れたんだよ。こうすりゃ運搬の手間はなくてすむ」


「はー、随分便利な能力ね。私も欲しいぐらいだわ」


 そうか、一応アイテムボックスは俺のがあるから俺のアイテムボックスに入れればいいのだが、それはそれで色々不便だよな。今度アドミンにチートをお願いするときに、アイテムボックスを使えるようになるアイテムでもお願いしてみようかね。桜も喜びそうだし。


「じゃ、さっさと運ぶぞー」


 俺は次々と家具をアイテムボックスに入れると、マリンミラーでアーミンの家へと移動する。


「じゃ、そっちの好きな場所に家具を設置するから、その都度指示をくれ」


「わかったわ」


 そうやって、アーミンの指示に従って次々に家具を設置していく。組み立ての必要もある家具もあったので、スムーズにとはいかなかったが、日が落ちる前までには全ての家具の設置は完了した。


「よし、こんなもんか」


「ありがとう、勇人クン。これでようやく文化的に過ごせそうだわ」


「まぁ、まだ足りないものとかあると思うからその都度請求してくれ。これ自体が俺がお前に払う報酬になるわけだからな」


「わかったわ。気づいたらまたその都度請求させてもらうから」


 そう言いながら、アーミンは窓から空を見上げ不思議そうにつぶやく。


「それにしても、世界の裏側にも夜があるのね。観念的な場所って聞いたから不思議な感じだわ」


「それは私の能力のおかげですねぇ。世界の裏側に昼夜があるわけではないんですよ」


「うおっ!? お前いつの間に!?」

「だ、誰!? いつの間に家の中に!?」


 アーミンの独り言に反応したのか、マリン(人型形態)がいきなり家の中に姿を表す。


「あ、どうも。こうやって会話するのは久しぶりですね勇人さん。今回は移住者を招待してくれてどうもありがとうございます。今回は一人ですが、是非是非もっと大量の移住者をお願いしますね」


 そう言って、揉み手でにこやかな表情を浮かべるマリン。ていうか、こいつは召喚したところで役に立たないから、今まで呼晶で呼ぶだけ呼んであとは放置ってことが多いんだよな。こうやって会話するのは確かに久しぶりかも。


「あ、そちらの方は初めまして。ワタクシ、この家が立つ大地すなわち霊亀である、名をマリンと言います。今後ともよろしくお願いいたします」


「え? この大地が貴方? でも、あなたどうみても人間だし、あなたが今ここにいるってことは私が立ってるこの大地はなんなの?」


 アーミンはこんらんしている!


「こいつは霊亀の端末だよ。霊亀本体はこの大地で間違いないし、意識もそっちにある。でも、それだと不便だからこうやって端末だけ飛ばして会話なりなんなりしてるんだよ」


「えーっと……」


「アーミン様にわかりやすく解説するなら、私はリモートデスクトップとサーバーの関係なのです。サーバーがこの大地、私本体。それにアクセスしに行っているリモートデスクトップが今のこの私なのです」


「なるほど、よく分かったわ」

「なるほど全くわからん」


 マリンの解説にアーミンと俺とで全く正反対の答えを返す。ええい、パソコンは専門外だ。白虎だったら、もっとわかりやすく解説してくれたのだろうか。


「今後はこの姿で貴方様と相対することになりますので、よしなにお願いいたします。差し当たっては話し相手などお勤めすることが出来ますよ」


「そうね、こんなところに一人じゃ寂しいものね。話し相手がいるだけでもだいぶ違うわ。あ、そうだ。ムービーでもコミックでもいいんだけど、何かしらの暇つぶしグッズは欲しいわね。用意してくれる?」


「オッケー、今度買いに行こうか」


 とりあえず、次の買い物を約束すると俺とアーミンで一旦地球へと帰還する。家具を運んだのに、なぜアーミンも一緒に帰還したのかだが、食料とかそう言うのがまだ運び込めてないからだ。まぁ、食事が終わったら今度こそ自宅に帰ってもらうことにするが。


 以上がアーミンの家具搬入時の出来事だ。まだまだ買うものは多くて正直面倒だが、これがあいつとの契約だからな。これぐらいは許容しなくちゃな。



  ※ ※ ※ ※ ※


 そろそろ前回の異世界行きから1ヶ月が経とうとしている12月。そろそろ冬休みだが、今回の長期休みは是非ともゆっくりしたいところだな、とか考えてたら、いつものアドミンの白空間へと呼び出されていた。


「やぁ、真宮寺勇人君お久しぶり、というほどでもないかな」


 今回のアドミンは最初の時のように優雅にカップをとソーサーを持ち、余裕の態度でこちらを見ていた。ただ、その外見は完膚なきまでに幼女なので、あまり優雅さは感じないのが悲しいところである。


「ここにくるってことは、次の異世界行きってことか。今度はどんな世界なんだ?」


「今度は、君の使い魔が大好きないわゆる中世ファンタジーな世界だよ。どういう世界かは……、いやこれは現地で調べる方がいいだろう」


「妙に勿体ぶるんだな」


「教えてもいいが、それによって君のやりたいことが狭まってもよくないからね。とりあえず、今回はきちんとスタート地点を設定しておいた。前みたいにイレギュラーなことはないと断言しよう」


「本当だろうな?」


「じゃ、あらかじめ伝えておこう。と言っても、座標なんか伝えても分からないだろうから、どう言う場所かだけだけどね。今回は四方とも遠くまで見渡せる平原に出る。逆に言えば、それ以外の場所に出た場合は何かしらの妨害があったってことだ」


「その妨害ってやつ、まだ判明してないのか?」


「すまない、それに関しては現在調査中だ。少なくとも、君に迷惑がかかることないように努める、としか今は言えないね」


 アドミンは残念そうに言いながら、カップの中身を一口喉に流し込む。前々から思ってるがそれ中身はなんなんだろうか。紅茶っぽいとは思うのだが、よくわからない。


「それじゃ、次の異世界も頼んだよ、真宮寺勇人君」


 アドミンがそういうと俺の意識は急速に覚醒していった。


書き貯めが尽きたので、7章を全部書き終わるまで更新を休止します。

今度はできるだけ早く書き上げる予定ですので、お待ちいただければ幸いです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 約1年経ったけど待ってますよー 好きな作品なので何度も読み返してますが続きが読みたくて仕方ないのです。
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