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11.霊獣形態

 とりあえず次の日、いつものように学校を終え帰路につくが今日は門の前での待ち伏せは青葉以外はいなかった。ちなみに、青葉のいつもの一撃は一昨日に比べたらさらに鋭さを増していた、とだけ言っておこう。徐々に実力を上げてるのだろうが、コイツ実際の剣術レベルはいくらぐらいなんだろうか。青葉の襲撃が終わった後にそう思ったので、今度スキル鑑定でもしてみよう。

 そういや、このスキル鑑定も貰ったはいいが、全然使ってないな。まぁ、下手にESPをラーニングするわけにもいかなかったので仕方ない部分もあるのだが。


「ただいまー」


「あ、お帰りー。この前のお客さんが来てるわよ、勇人クン」


 客間でなく、応接間の方で寛いでるアーミンがおかえりと言ってくれる。家に帰っても姉ちゃんがいる方が珍しいぐらいなので、こうやってお帰りと言ってくれるのはなんかいいものだな。

 と、そんなことを言ってる場合ではない。来るだろうとは思っていたが本当に家に突撃しに来たんだなコイツ。


「お邪魔しております真宮寺勇人さん。さぁ、今日こそ教えてもらいますよ」


 と言うわけで、俺が帰るより早く家に突撃しにきた、変わり者研究者、レン・クロムウェルである。


「教えますはいいが、そっちは対価は何かないのか? こっちも今回の情報を得るのに少なくない対価を払ってる。何もなしに教えることはできないぞ」


 実際、昨日は白虎に付き合って原稿の手伝いをしていた。ベタ塗りもトーン貼りも初めての経験だったが、やってみると意外と面白かった。まぁ、面白いと言えるのはたまの手伝いだからであって、仕事にするとなるとまた違うのだろうが。

 ともかく、こっちは目の前の女のために白虎に対価を払った。今までは俺は特に損はしない取引だったから無料で教えていたが、今回はそうはいかない。


「ええ、構いませんよ。何が望みですか? お金ですか、情報ですか? それとも私の身体がお目当てですか? 正確なエビデンスのある情報であるなら、どんな対価でも払うつもりですよ」


「逆に聞くが、お前さんは俺がもたらす情報にどれだけの対価を払う?」


「そうきましたか……。もし本当に第七の壁を越える方法を教えていただけるなら、私の身体を差し上げましょう。ちなみに処女ですので、初めては優しくしていただけると嬉しいです」


「…………」


 なんとなくそうなるんじゃないかな、と思いつつもいきなりの発言に無言になる俺。そして、その発言に振り向きはしないが、耳がダンボ状態のアーミン。目線こそテレビの方を向いてるが、意識が完全にこっちに向いてる。多感なお年頃だからね、気になるよね。

 などと言ってる場合ではなく。


「つまり、体で返してくれると言うことか。いいだろう。文字通り体で返してもらおうか。じゃ、情報だが差し当たって俺の発言の根拠が欲しいとのことだったな」


 俺がそういうと、少し顔を赤くしながらうなずくレンさん。実際の行為を想像してのことだろうが、そうは問屋が下さんぞ。体で返してもらうとは言ったが、実際は裏の依頼を手伝ってもらう、という体の肉体労働をしてもらう予定だ。

 据え膳ではあるが、それをいただくことで得るであろう不利益を考えると抱くことはできない。抱くつもりなら、それこそハーレムの一員に加えるぐらいの覚悟が必要だろう。


「じゃ、今から証拠の方を呼んでくるから。白虎ー! 出番だぞー!」


「あいよー!」


 白虎からすぐに返事が返ってきて、応接間に白虎が姿を表す。


「えっと、白金よつばさん、でしたっけ? 白虎と言うのは? あだ名か何かでしょうか?」


「あだ名じゃないぞ。コイツの正体は四神が一柱、白虎だ。そして、コイツ自身が証拠だ」


 俺がそういうとドヤ顔でVサインをする白虎。その様子にレンさんは戸惑うばかりだった。


「四神、確か聞くところによると中国の霊獣でしたっけ? それがなんで日本に? それに彼女が証拠とはどう言うことでしょうか?」


「そうだよ、中国の霊獣だよ。日本にいるのは俺と契約してるから。コイツが証拠ってのはコイツが数千年は生きてる文字通りの生き地引だからだよ。こいつ自身が文献そのものでもあり、出典でもある」


「???? あの仰ってることがよくわからないのですが」


 俺が分かりやすく答えてやったのに、ひたすら疑問符を浮かべるレンさん。まぁ、業界人であるからこそ信じられない思いが強いのかもしれない。


「じゃ、手っ取り早く証拠見せようか。ここじゃ狭いから庭行くよ庭」


 白虎は疑問符を浮かべてるレンさんを尻目に庭へと移動する。俺もレンさんを連れて庭へとでる。「狭いってなんですか……」とか言いつつ、ちゃんとついてくるレンさん。


「じゃ、いっくよー!」


 白虎は言葉と共に体を大きく広げる。すると、一瞬閃光が煌めき、光が収まった後にはダンプカーほどの巨大な体躯の白い虎が鎮座していた。


「ひっ!」


 いきなり出現した、巨大獣を目の前にして腰が抜けてその場に尻餅をつくレンさん。正直俺もかなり驚いた、が事前に白い虎になるとは知っていたのでレンさんよりも驚き具合は低いだろう。ていうか、


「デカくね?」


『こんなもんだよー。まぁ、デカくなろうと思ったらもっとデカくなれるけどね。さて、そこの人。私が知覚できてるかな?』


「は、はい……、まるで魔力の塊かのような強烈な魔力を感じます。それにその姿。伝え聞く白虎の姿そのままで……。ほ、本物の白虎……なのですか?」


『そうだよー。じゃ、証拠も提示したところで──』


 霊獣形態になった時と同じように閃光が走ると、そこには元通りのトランジスタグラマー幼女になった白虎が立っていた。


「元に戻るとしようかな。ご主人どうだった。私の霊獣形態?」


「どうって言われてもなー。思ったよりでかいなってぐらいだな」


「えぇー、感想それだけ? もっと他に何かないの? カッコよかったとかさ!」


「女としてその感想はいいのか……?」


 って言ってから思い出したが、こいつ無性だったわ。まぁ、今の外見は女で通してるから俺の発言も間違ってるわけではないが。


「もっと感想が欲しいという乙女心がわからんかなー。で、そこの人。放心してる場合じゃないよ、聞くことがあるんでしょ?」


 白虎の霊獣形態を見て呆然としていたレンさんであるが、白虎のその言葉に正気を取り戻したのか、ハッと意識を回復する。


「そ、そうでした。私は古代魔法における第七の壁を越える手段を知りにきたのです」


「んー、ご主人がそれは教えたって言ってたけどそれじゃ不満? ちなみに、それを教えたのは私だから、私に聞いても同じ内容しか返ってこないよ?」


「詠唱と同時にオドの放出を行う、ということでしたか。本当にそれで第七位階の魔法が発動するのでしょうか?」


「嘘だと思うなら試してみればいいじゃん。なんで、聞いた後自分で試そうと思わなかったの?」


「……試しましたが、第七位階の魔法は行使できませんでした。何かやり方があるのでしょうか?」


「別に特殊なやり方なんてないよ。できないのはオドの放出が上手く出来てないだけだ。どれ、一度私の目の前でやってみるといい」


「は、はい。それでは……、『万物の根源よ。我が内に眠りし四肢の力を目覚めさせよ。闘士の力今ここに開放せん!』フル・ポテンシャル!──やはりダメですね」


 白虎に促され、レンさんがフル・ポテンシャルの詠唱をする。ていうか、古代魔法の詠唱初めて聞いたわ。古代語とやらで詠唱しているらしいので、俺には詠唱の内容がさっぱりわからんのだが。

 だがフル・ポテンシャル、だけ日本語なのはどういう理屈なのか。

 フル・ポテンシャルはフィジカル・エンチャントと違って全体的に全てを強化するって感じの魔法なので俺はあまり使うことのない魔法だ。

 局所的に強化した方が魔力の節約になるし、今の所それで困ったことはない。


「やはり、オドの放出が上手くいってないね。具体的に言えばオドの量が足りない。放出自体はちゃんと出来てるからあとは量の問題だ。もう一度やってみな」


「はい、では……。『万物の根源よ。我が内に眠りし四肢の力を目覚めさせよ。闘士の力今ここに開放せん!』フル・ポテンシャル!」


 もう一度詠唱をするレンさん。すると、今度は俺にもその様子がはっきりとわかった。レンさんの体から魔力が解放され、指輪の発動体を通じて大気に放出される。その瞬間、レンさんの体に魔力が満ち満ちるのがわかる。


「こ、これは……!?」


「お、成功したね。第七の壁突破、おめでとう」


「で、できた……、私にもできた……! っしゃあああ!!!」


 レンさんはしばらく呆然としていたが、雄叫びと共にガッツポーズをする。

 清楚っぽいイメージがあったから、いきなりの雄叫びに俺が驚く。


「あー、おめでとうさん。これでエビデンスとやらの提示はオッケーってことでいいのか?」


「はい! ありがとうございます! この恩は決して忘れません! ……あっ、あの、対価の方は今お支払いした方がよろしいでしょうか?」


 そう言って顔を赤くしてモジモジし出すレンさん。生憎だがそっち方面の礼は受け取るつもりはないぞ。


「いや、その時が来たら連絡をする。それまでは日本に居てほしいが、それ以外は自由にしていい」


「そ、そうですか。私としてはすぐにでも済ませてしまいたいのですが」


「対価って何? なんか取引きしたの?」


 レンさんが顔が赤いのを見て、白虎が横から言葉を挟む。


「対価として身体で払ってもらうって取引をしただけだよ」


「あっ……。あー、はいはい。そういうことね。あんたも大変だねぇ」


 俺の言葉だけで全てを察したのか、憐憫の視線をレンさんに向ける白虎。まぁ、俺のことよく知ってる白虎なら、俺がエロい意味でそういうことを言ったのではないということはすぐにわかるだろうしな。


「じゃ、今日のところはお暇してくれるか。俺も暇じゃないんでな」


 実際は暇だが、それを馬鹿正直にいうわけはない。


「は、はい。それでは失礼致します。私としても論文をまとめておかなければなりませんので。……連絡の方お待ちしております」


 そう言って、連絡先を交換してレンさんとは別れた。

 さて、それじゃ喫緊の問題は解決したわけだし、久しぶりに宗玄さんの依頼でも受けるとするかな。金は稼げる時に稼いでおかないとな。レンさんとの取引も一緒に成就できる。一石二鳥だ。


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