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8.第七の壁

 取り敢えず、レンさんを追い返した後白虎の部屋を訪ねることにした。コンコンとノックをすると、「どうぞー」と軽い返事が返ってきたので、お邪魔させてもらう。


「ご主人がわざわざ私を訪ねるなんて珍しいね。なんの用かな?」


「いや、お前にまた解説を頼もうと思ってな。古代魔法における第七の壁ってのをさっき初めて聞いたんだが、どういう意味なんだ?」


「ご主人には無意味なものだよ。とはいえ、理論を勉強するのも大事だ。一つ解説と行こうか」


 そう言って、白虎はまた伊達メガネを取り出す。お前そのコス好きだね。女教師気取りなんだろうか。


「第七の壁ってのは、まぁ一言で言ってしまえば修行不足。その一語に尽きるね」


「解説が一瞬で終わったぞ、おい」


「まぁ、もうちょっと突っ込もうか。そもそも古代魔法とはどういったものかって話になるんだけど。以前言ったように、古代魔法とは大気中のマナを燃料に、体内のオドを着火剤として詠唱、魔法陣などを利用して発動する技術体系のことだ。このうち大気中のマナに関しては特に解説することはないね、読んで字の如くだ。ちなみにこのマナだけど、私も初めて知った事実だが、異世界にも普通に存在しているみたいだね。今まで魔法がない世界に行ってもちゃんと古代魔法は使えてたし。それから考えるに、科学的な大気の一成分として存在してるって感じなのかもね」


 今明かされる驚愕の事実。


「おい待て。だとするとこれから行く異世界によっては魔法使えなくなるってことか?」


 それは困る。一応剣術レベルは8あるから、剣術一本で行くこともできなくはないが、汎用性が失われるのは非常に困る。古代魔法は攻撃よりむしろ補助魔法の方が出番多いからな。特に最重要なトランスレイトとか。


「可能性としてはあると思う。とはいえ、心配することはなさそうだけどね」


「なんでだ?」


「世界の管理者、アドミンとか言ったっけ? そいつがご主人が力を発揮できない場所にご主人を送るとは考えづらいからさ。そうだとしても多分事前に予告はするだろう。話を聞く限りそんな存在だ」


「あんまり、アドミンを信用しすぎるのもどうかと思うがな」


 俺的にはアドミンには色々便宜を図ってもらったから、信用度は半々と言ったところだ。


「とはいえ、現状信用するしか道はない。そうでしょ?」


「まぁな」


 実際、俺にとってはアドミンは信用するしか道がない。俺の生殺与奪を握られてるのと同等だからな。疑いを持つことは忘れないが、基本は信用するしかない状態だ。


「話がそれたね。で、第七の壁に関してはマナは関係ない。確かに場所によってマナの濃い薄いはあるけど、魔法の発動に寄与することはない。あるのは威力の増減だけだ。問題なのは体内のオドの方だ、こいつを体内から絞り出してマナに火をつけ魔法を起動するわけだが。オドを放出する、この過程に今回の話題の肝がある」


 そこで白虎は一度言葉を区切り、クイっと眼鏡を直す。でも、別に眼鏡ズレてなかったよな? 雰囲気だけで眼鏡いじってない?


「古代魔法においてはオドの放出というのは基本的に詠唱によってオートで行われる。古代魔法それぞれに設定された詠唱を古代語で詠唱することで発動体を通じて体内からオドが放出され、大気中のマナに着火し魔法は発動する。だが、それは低位の魔法までの話だ。魔法の位階が上がれば上がるほど、その詠唱に付随するオドの放出の力が弱くなっていく。それが第七位階以降になれば完全に詠唱の補助はゼロになる。ゆえに、詠唱者は詠唱と同時にそれぞれの魔法に応じた量のオドを手動で放出をしてやらなければならない。これが第七の壁の正体さ」


「つまり、修行不足ってのはいわゆる?」


「そ、現代の古代魔法使いは自力でのオドの放出が出来てないんだよ。前に言ったよね、古代魔法は詠唱を丸ママ覚えれば発動できるって。あれは正解でもあり間違いでもある。昔はオドの放出ってのは割と当たり前の技術だったからね。昔は人も強かったし、詠唱とオドの放出が同期してるようなもんでみんなほぼ無意識でオドの放出をやっていた。どこで断絶したのかわからないけど、現代の古代魔法使いはオドの放出の訓練をしてないんだ。だから、人によって最大で使える位階が違ってたりするし、高位の位階の魔法ほど発動が安定しなかったりする」


「人によって最大で使える位階が違うってのはどういう理屈だ?」


「人によって魔力放出量が違うから、だよ。解説すると、詠唱で一緒に放出されるオドは術者の魔力放出量から割合で計算されるんだけど、例えば第一位階のエナジーボルトなら詠唱によるオドの放出割合は100%だ。術者の魔力放出量が100、エナジーボルトに必要な魔力放出量が5とすると100×100%で100の魔力放出が使えるので問題なく5のオドを捻出できる。で、例えば第六位階のトランスレイト。こいつに必要な魔力放出量が50、第六位階の詠唱によるオドの放出割合が10%。とすると、魔力放出量100の術者は100×10%で10しか放出できないので発動出来ないというわけだ。つまり、第六位階を使うには最低でも魔力放出量が500は必要というわけだよ。と言っても、これはあくまで無理やり数値化しただけで、実際は数値が違うし、実態はもっとファジーだ。だから、同じ術者でも発動したり発動しなかったりと安定しないということに繋がるんだ」


「なるほど、非常によく分かった。つまり人類に第七の壁を越えさせるにはオドの放出方法を教える必要があるということか?」


「そういうこと。私はそこらへんも憂慮して魔術っていうオドの放出の練習も兼ねた新技術を生み出してやったのに、だーれもそこらへんに気づかないんだから。人間って愚かだよねー」


 なんか、今すごい爆弾発言を聞いた気がするんだが。


「魔術って確かお前がメインで使ってる魔法体系だよな? 生み出してやったってどういうことだ?」


「どういうこともそのままだよ。魔術っていう技法は私が開発して、魔導協会に匿名で提供したんだ。手前味噌ながらかなり普及している、というか現代の主流にまでなってるけど、魔術をちゃんと使える人でも古代魔法にそれに生かそうって動きが全然ないんだよね。魔術も古代魔法も根は同じなのに。まぁ、わざわざそこまで教えてやる義理はないから無視してるけど」


 こいつさらっと、新技術開発してるんですが。ていうか、確か白石の奴も魔術を使ってるんだよな。の割にはあいつ確か古代魔法は第三位階までしか使えないとか言ってたな。

 なるほど、古代魔法に生かそうとする動きがないというのは本当のようだ。

 とすると、レンさんには魔術を極めるように教えてやればいいのか? でもなぁ、正直俺がそこまでしてやる義理はないというか、そもそも俺は魔術を習得してないので教えれないというか。

 とりあえず、次来た時の対策でも考えておくか。確実に来るだろうしな。



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