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4.世界の裏側

「では、家を作ろうと思います」


「お前は何を言っているんだ」


 桜を自宅に帰した後、晩飯が出来るまでの間アーミンの自宅作りを行おうとそう提案したのだが、素がでたアーミンにツッコミを食らった。


「いや、だからアーミンの自宅作りだよ。俺の家はちょっとこれ以上人を住まわせるのは厳しいから、マリンの背中に家を作ってそこで生活してもらおうと思ってな。もちろん、生活が安定するまでは生活物資等はこちらで持つ」


「背中? ちょっと意味がわからないんだけど……」


「前、俺が手鏡からゲートを出して行った場所があるだろ? あそこだあそこ。普通の惑星に見えたかもしれないが、あれは世界の裏側に位置するマリンという俺の使い魔たる霊獣、霊亀の背中だ」


「ちょ、ちょっと言ってることが分からないんだけど。使い魔? 霊獣? いやその言葉の意味は古典作品とかにも出てくるからわかるけど、背中って何? 何かの隠語?」


「いや読んで字の如くだ。霊亀という種族はとにかく超巨大なんだ、デカすぎて背中に一つの世界を作ることができるレベルでな。広さで言うなら北海道……って言ってもわからんか、まぁともかくとてつもなく広い背中なんだ」


 俺の言葉にポカーンと口を半開きにし驚愕するアーミン。まぁ、俺も全部伝聞で実際に本当にあそこがマリンの背中だと確認したわけじゃないからな。信じられないと言うのも無理もない。


「そ、その。単純な疑問なのだけれど……、そこまでに巨大な生物がいると言うなら大騒ぎになっていると思うのだけれど。それともこの異世界ではそれが普通なの?」


「いや、それに関しては言っただろ、世界の裏側に本体を置いてるから、表側にいる俺たちには認識できてないってだけさ」


「世界の裏側って?」


「む……」


 そう言われると、言葉に詰まる。そこは俺も実は知らないところだ。世界の裏側ってなんとなくで認識してたけど、実際にどんな世界なんだ? って言われると知らない。ここは一つ。


「白虎ー! ヘルプー!!」


「はいよー。ちょっと待ってねー」


 声を大きく張り上げて白虎を呼ぶと、白虎も大声で返事を返す。しばらくして白虎が俺の部屋へとやってくる。


「ほいほい、何用かなご主人」


「マリンが位置してる世界の裏側って具体的にどういう場所なんだ? 俺にも教えてくれないか?」


「オッケー、解説タイムだね。むぁっかせてよ!」


 なぜか若干巻き舌でノリノリで返事をする白虎。どこから取り出しのかメガネまで掛けだす。それ伊達だよな?


「じゃ、アーミンにもわかりやすいように解説するね。世界の裏側ってのは一言で説明すると、観念の置き場って感じかな。よくあるでしょ、地球では幻想の存在である、ドラゴンやペガサス、ユニコーンとか。地球では存在しないとされている彼らだけど、例えば召喚術で召喚すればあっさりと現世に召喚できたりする。じゃあ、彼らはどこにいるのか? それの答えは世界の裏側にいる、だよ。一つ言うなら、世界の裏側というのは表側みたいに大陸があって、海があって、って感じの物質的な世界があるわけじゃない。物質的な距離や面積、空間が存在しないから、原理上そこの空間──というのは変だけど──は無限なのさ。ちなみに、さっき言ったように世界の裏側は物質的な世界じゃないからそこを歩いて渡る、そこに行くなんてのは基本的には不可能だ。表側から召喚術なりなんかで門を開く感じで干渉して裏側の存在を引っ張ってくるのが正当なやり方だよ。マリンの場合はその逆をやってると思えばいいよ。向こう側からこちらに干渉してゲートを開き、自分の背中に招待してるんだ」


「でも、それだとマリンの背中に乗れるのはおかしくないか? 世界の裏側に行くのは不可能って言ってる上に、世界の裏側には距離も面積も何もないんだろ?」


「おかしくないさ。基本的には、と言っただろう。世界の裏側は観念的な場所とは言ったが、そこにいる存在が距離も面積もなくペチャンコにされてる訳じゃない。そこには確かにマリンという霊獣が肉体をもって存在しているんだ。さっき例に挙げたドラゴンやペガサス、ユニコーンもね。だから、マリンの背中に乗るというのは少々裏技臭い方法でもある。世界の裏側に確かに肉体を持って存在しているという法則を利用して、自分の背中に住人を載せることに成功している。マリンの背中に行く際のゲートもご主人は、こちらが主で向こうがそれに答えるという方式でゲートを作ってると思ってると思うが、逆なんだよ。ご主人の持ってる手鏡はあくまで合図だけで、ご主人の側がゲートを開いてるわけじゃない。あれはあくまでマリンの側がゲートを開き、自分の背中に繋げている。こうすることで本来できない裏側への招待を可能にしている。こちら側から裏側に移動するのは不可能だが、裏側からこちら側への干渉だと可能という仕様をついた裏技だね。一旦ゲートを作ってしまえば、後は行き来自由と言うわけだ」


「理屈はわからんが一応納得はした」


「じゃあ、わかりやすく○×で。表から裏への干渉→○。裏から表への干渉→○。表から裏への移動→×。裏から表への移動→○。ってことだね。マリンは裏から表への干渉が可能と言うことを利用して基本的に不可能だった裏への移動を可能にしてるって思えばいいよ」


「うん、やっぱり理屈はわからん! ともかく、世界の裏側がそう言う場所だってわかればいいわ。アーミンはわかったか?」


「一応、言ってることは理解できたわ。裏に行ける理屈に関してはチンプンカンプンだけど」


 どうやら、アーミンも理屈に関しては全く理解できなかったらしい。よかった俺だけじゃないんだな。


「うーん、これ以上なくわかりやすい解説のつもりだったんだけどなー。ま、いいや。じゃ解説は以上! 私は部屋に戻って原稿の続きやってくるね!」


 そう言って、バビューンと効果音がしてそうな走りで自室へと戻る白虎。そういや、あいつの漫画ってどんなのか読んだことないな。例のごとく18禁だったりするのだろうか? でも、あいつがエロ同人描いてるって想像できないのだが。


「で、話が途中でどっか行ったが、その世界の裏側にあるマリンの背中にお前の家を建てるって話だ。何か間取りに関してリクエストはあるか?」


「別に住むだけなら大層なのはいらないわ。ベッドがあって風呂があればなんでも。あ、一つ有ったわ。ユニットバスは無しにして。あれだけはイヤ」


 ユニットバスはイヤか。まぁ、賃貸探すわけじゃなくて注文住宅だからそこら辺は自由自在なのだが。


「別に業者に頼むわけじゃないんだから、いくらでも複雑にしてもいいんだぞ? あと予算に関しても心配する必要はない。人件費も含めて元手はゼロだからな」


「元手ゼロ? まさか、自分で建てるとか言うつもり? 素人の作った家に住むとか不安でしかないんだけど」


「自分で建てるのはその通りだが別に斧を振って木を切って家を立てるわけじゃないぞ? そういうチート能力が俺にはあるんだよ」


 正確にはついこの間手に入れたばかりの能力だが。


「チート? 前も言ってたけど、ズルってなんか嫌な感じね。あなたがそれを使う分には別に構わないけど、なんかそんなのに頼るのは不安ね」


 アーミンは俺がチートというと明らかに嫌そうな顔をする。そういやチートって本来はズルとか騙すとかそう言う意味だっけ。完全に日本語として別の意味になってる言葉だよなー。


「あぁ、原義で捉えちゃったのか。じゃあ言い換えよう。俺が持ってる特殊能力だよ。以前ちょっろっとだけ説明しただろ、俺らが世界救済の為に戦ってるって。その世界を救った報酬としてアドミンっていう世界の管理者から望んだ特殊能力を俺は得られるんだよ」


「……あなたのその強さもズルして手に入れたものなの?」


 望んだ特殊能力を得られるという所で、その点に気づいたのか俺にジト目を向けてくるアーミン。前言ったときは気づかれなかっただけで、この点はついてくるだろうとは思っていた。これは答えをミスるとまずいことになるか。


「うーん、そのあたりは微妙な所だな。少なくともアドミンにもらったチート能力で強くなったわけではない。他の人間よりも楽してる自覚はあるが、一応は鍛錬して身につけた力だ。青龍の扱きが酷くてな……それはもう苦労したよ」


「そ。それならよかったわ」


 俺の扱きを思い出した際の悲痛な表情を見て、アーミンに俺の思いが伝わったようだ。一応、オールラーニングで習得した剣術だが、苦労してないわけじゃないからな。嘘は言ってないぞ、うん。

 それになんの苦労もなくラーニング出来るなら、俺はあっという間に剣術レベル10になってるはずだ。ならないと言うことは、まだ何かが足りないのだろう。苦労とか経験値とかそれに類する何かが。


「ま、それはともかく。家の建設に関しては、『建設』ってチートを貰ったからそれで建てることができる。希望の間取りを考えてくれ。俺はその間に買い物と料理の準備するよ」


「料理! 勇人の料理が出るのね! 楽しみにさせてもらうわ!」


「料理を期待するのはいいが、家の間取り考えるのも忘れずにな。じゃ、買い物行ってくるわ」


「外に出かけないといけないとか不便ねー。いってらっしゃい」


 さすが、転送装置付きタブレットのあるSF世界出身者の言うことは違うな。そんな怠惰な生活してるとあっという間に腑抜けそうだと思うんだが、SF世界の住人はどうやって体力やらモチベーションを維持してるんだろう。

 それはさておき、今夜の食事は何にしようかな。


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