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22.9人目の仲間

 アーミンの部屋に戻り、他の4人も交えてアーミンとの契約を詰める。差し当たっては俺たちが何者か、何を目的として戦っているかなどを説明していく。


「なるほど……、救世主御一行とはそう言う意味だったのか」


「そうそう。とは言っても、俺にあんまりそう言う自覚はないんだけどな。これから滅ぶ世界だとは言われているが、すでに滅んだとおぼしき世界にも行ったことあるし、どうにもピンと来ないのよな。ま、それが依頼ってんだから受けてるんだけどな」


「とすると、この世界も滅びの運命を迎えていると言うことなのか? そうは見えないが……。あと主人公とやらを助ければ滅びの運命を変えることができるというが、そんな一人の運命を変えるだけで滅びの運命とやらは変わるものなのか?」


「そこらへんの質問はあんまりしてくれるな、俺もよく分かってない。俺としては俺の赴くままに行動するだけで色んなチートをもらえるからそれだけで十分元は取れてるけどな」


 実際アドミンがそう言ってるってだけで、根拠は何もないんだよな。現代地球では、トウコツの撃破。和風ファンタジー世界では土蜘蛛の討伐。勇者召喚世界では桜の救出、ひいてはアンジェの即位。ポストアポカリプス世界では、ボルトの生活物資の発見。どれもこれも直接世界の滅びとは関係なさそうな事案ばかりである。

 それで今回はアーミンの移住、と言うことになるのかな? 今まではまだ少しは関連があるように思えるが、これに関しては全く関連がないよな。なんだろう、何もしなかったらアーミンが魔王にでもなって世界を滅ぼすのかな?

 宇宙全土を一人で滅ぼすってかなり難易度高いと思うけど。


「チート、それに魔法か……お前たちはエスパーではなかったのだな。しかし、魔法とは非科学的な」


「俺から見れば超能力の方が非科学的だけどな」


「お互い様というやつか」


 お互いフッと笑顔を漏らす。


「で、どうだ? 今まで話したのが、俺たちの事情だ。俺たちの仲間になってくれるか?」


 取り敢えず俺たちが説明するべき内容は話した。あとはこれにアーミンが乗ってくれるかどうか、だが。


「しかし興味深い」


「なにが?」


 アーミンは微笑を浮かべながら、なぜか俺の腕に触れてくる。あーお客さま、ボディタッチは困ります。桜が変な顔になっております。


「仲間になって欲しいと、心の底からそう提案されたのは初めてだ。どいつもこいつも私を利用しようと思うやつらばかりで心底辟易していた。まぁ、私の方もそういう連中を利用してきたから、お互い様ではあるのだが、お前のように純粋に、かつ対等に求められたのは初めてだ。なんというか……、正直悪くないな。うん」


 そう言って、初めて満面の笑みを見せるアーミン。最強のサイキッカーなんて呼ばれてる存在だもんな。やはり最強なりの孤高と言うのがあるのだろう。


「勇人様、接触テレパスされてますよ」


「え?」


 俺がアーミンに対して思いを巡らせてると青龍が横から嘆息する。接触テレパスって単語だけは聞いてたが、文字通り相手に触れて考えを読み取るESPってことなのか? ていうか、青龍はなんで気づいたのか。


「なんだ? 気づいてて敢えて触れさせてくれたのかと思ったが、素だったのか。くく、ますます面白い。私はお前が気に入ったぞ、真宮寺勇人クン」


 やめてよね、気に入ったとかそう言うセンシティブな言葉を使うのは。またしても桜がジェラシー発動してしまうじゃないか。

 桜が横で変顔してる中、アーミンはこほんと咳払いをして言葉を続ける。


「で、仲間についてだが、少し条件を追加したい」


「条件とは?」


「お前たちのいる世界というのを見せてもらいたい。さっき見せてもらった世界はお前たちのいる異世界ではないのだろう? それに、あそこに住むにしても住む場所の確保など色々時間が必要だ。家とかが出来るまでは、お前たちのところに居候ということになるだろう。提案としては一石二鳥だと思うが、どうだ?」


 アーミンの出した条件は意外と簡単な内容だったのでホッとした。まぁ、別に地球を案内するだけなら問題はないだろう。正直なんで俺らの世界を見たがるのか理由が分からないが、藪を突いて蛇を出すことはない。この条件で引き受けることにしよう。


「分かった、じゃあその条件で頼む。これからよろしく頼むぞアーミン」


「そこは、アーちゃんって呼んでくれないかしら? 勇人クン」


「急によそ行きの態度になるな、混乱するわ」


 最初出会った時と同じ口調で言われても困る。というか、これ演技って知ってるから俺には何も響かないんだが。


「ごめんなさいね、これからはこうなるだろうけど、よろしくね」


 そう言って、握手をする俺たち。しばらくはうちで面倒を見ることになるが、これでいいんだよな?


「じゃ、早速あなたたちの世界を案内してもらいましょうか」


「あー、それなんだけどちょっと待ってくれるか。一応この世界をクリアしたしてないに関わらず、帰還するには一度俺が寝るか、向こう側に強制送還させてもらう必要がある。強制召喚に関しては例外処理だったはずだから、寝るのが今の帰還手段になるな」


「自由に異世界に行き来ができるとか言ってなかった? いえ、上位存在との契約でここに来てると言ってたわね。とすると、契約外で勝手に帰還してはまずいということかしら」


「まぁ、そんな感じ。だから、取り敢えず寝て送還を待つことにするわ。送還してもらったあとにまたここに来て、そこから俺らの世界に招待するから」


「分かったわ。待ってるから早く来なさいよ」


 アーミンとそう言葉を交わして、一度俺が寝るために部屋に戻る。

 さて、これでクリア出来てたらいいんだが、判定はいかに。


   ※ ※ ※ ※ ※


 白い部屋、白い机、白い椅子。いつものアドミン空間である。ここに来たってことはクリア如何に関わらず、この世界での用事は終わったという証左だ。


「何か……おかしい……」


 で、肝心の幼女管理者アドミンは椅子に座りながら頭を抱え、悩んでいる様子だった。


「何がおかしいんだ?」


「いや、今回スタート地点からしておかしかったんだ。そもそもあのレジスタンスとは敵対するのが今回の道筋だったはずだ。それが協力してアーミンを追い詰めるなんて、こちらの予定になかったことだ」


「やっぱり、主人公はアーミンだったのか」


「あぁ、そうだ。アーミンは最強のサイキッカーと呼ばれ、それに疲れていた。いずれ世界に害なす存在へとなる。それを止め、アーミンの心を救うのが今回の目標だったはずだ」


 途中からそんな気はしていたが、やっぱりそうだったのか。とすると、アーミン魔王ルートはあながち外れていたというわけではなさそうだ。


「じゃあ、今回は目的達成失敗ってことか?」


 取り敢えず、今回もらえる予定のチートでアーミンの住処を作ってやるつもりだから、失敗だとちょっと困るんだが。


「いや、やや変則的な仕上がりではあったが、アーミンの心を救うという目的は達成されている。過程は違ったが成功と言っていいだろう」


「じゃあ、なんでそんなに悩んでるんだ?」


「行っただろう予定にない、と。そもそもスタート地点からしておかしかった。まるで何者かに妨害を受けてスタート地点が狂ったかのようだ」


「妨害?」


「思えば、勇者召喚の世界で刺客に襲撃されたのも妙だった。お前の使い魔、青龍だったか? あれの力を持ってすれば簡単に撃退できた敵だ。だが、青龍の気配察知は働かず、予定にない魔術師の存在によってこちらの予定は狂わされた。これは何かあるかもな……」


 そう言って、ぶつぶつと考え出すアドミン。その内容自体は気になるが、俺がどうこうできる問題ではなさそうなので、力にはなれなさそうだ。


「まぁ、終わったことを言っても仕方ない。妨害に関してはこちらでも調べておく。ともかく次お前に与えるチートだな。今回は何がいい?」


「じゃあ、街建設、というか家建設というか、ともかく建築関係のチートが欲しいな。アーミンの家を作ってやらないと」


 いわゆる内政系のチートだが、こういうのは初めてだな。


「建築関係のチートか。大丈夫だ問題なく与えれるぞ。家だけでなく塀やら城やら建築できるものであるならばなんでも作れるぞ。ただ、明確な建造物の構造に対するイメージが必要になるがな。慣れないうちは設計図を書いてそれを見ながら建設をするといいだろう。というわけでいつものアレだ」


 そう言って、アドミンは俺に手を伸ばして、しばらく触れた後に手を離す。


「これで完了だ。では次の異世界行きはまた1ヶ月後だ。それまで英気を養っておくといい。では、おはよう。真宮寺勇人君」


 いつものアドミンの定型句で俺の意識は急速に覚醒していく。


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