20.アーミン復活
アーミンの護衛を引き受け、俺らのローテも一周したが今のところ襲撃者やらそう言った存在が来る事はなかった。個人的に面倒だったのが、護衛よりそれ以外のアーミンの身の回りの世話だった。買い物は俺たちが持ってるタブレットでどうにでもなったのだが、洗濯やら掃除は人力でやらざるを得ないのでそちらに人手を取られることになる。
特に掃除! ゴミが散らかってるだけでなく下着まで散らかっている状態なので、そちらは俺では手が出せない状態だ。「ま、これも花嫁修行ってね」といいつつ桜が率先して掃除してくれたのは正直助かる。こいつ料理はできないのに掃除はできるのか。ま、掃除って別にスキルがいるわけじゃないからな。
そんなわけで、護衛する時はアーミンの部屋に詰めて、それ以外の時は家事を担当するといった感じで、ローテを回していくが、前述した通り襲撃もなんもなかったのである。
まぁ、正門には警備員のいる高級マンションだし、そもそもここがアーミンのアジトというのが知られてるとは思えないので、襲撃がないのはある意味当たり前っちゃあ当たり前なのだが。
「ふぅ、とりあえず掃除完了っと。次はこの脱ぎ散らかした服の洗濯かぁ」
今は玄武と白虎のローテなので、俺と桜、青龍でようやく部屋の掃除を完了させる。基本的にこのローテは寝ずの番での護衛をしているので、ローテ外の時は寝るべきなのだが、ぶっちゃけこの汚さでは寝ることもできないので睡眠時間を削ってでも掃除せざるを得ないのだ。
「流石に女性の服の洗濯を俺がするわけにはいかないからな、そっちは桜、任せた」
「しかし、宇宙時代になっても洗濯機って基本的に現代とあんま変わらないのよねぇ。タッチパネルになってるぐらい? しかもこれほとんど使われた形跡がないんだけど……」
「どうにも生活破綻者っぽいよなアーミンの奴。部屋もゴミ屋敷一歩手前だったし」
「ところで一つ気にかかることがあるんだけど聞いてもらっていい?」
「ん? なんだ?」
「アーミンを仲間に入れる気ある?」
「は? なんでだ?」
いきなり桜からそんな提案をされて戸惑う俺。お前ハーレム増えるの嫌がってなかったか? いや、そういう話ではないか。
「いやーなんというか、戦力的には申し分ないじゃん? なんせ、あの青龍さんに一時とはいえ勝ってたらしいし。それに勇人に全く靡いてないってのも高ポイントというか、主人公を不遇な境遇から連れ出すってのもまた主人公の手助けをすることになるんじゃないかなって思ったわけ。あたしみたいにさ」
まぁ、確かに戦力的には申し分なさすぎる。あの戦闘においては無敗を誇っていた青龍に唯一地面を舐めさせた強力なPKを使うサイキッカーだ。しかし、奴を仲間にねぇ……、
「不遇な境遇か? あれが? 青龍はどう思う?」
「勇人様のお好きなように、と言いたいところですが、誘ってみるのも一興なのではないでしょうか。護衛中に少々雑談したところ懸賞金がかかってる今の状況をあまり好ましく思っていない、もっと言えば辟易しているようでしたので、誘えば来る可能性はあるかと」
意外や意外、俺がいない状態でもアーミンと話をしていたらしい。普段俺が水を向けないとあんまり俺とも会話しない青龍が他人と自主的に話すとかちょっと驚きだ。それとも、情報収集して俺の判断材料を増やそうとしてくれたのかもしれない。アーミンを気遣ってとかよりも、そっちの方が可能性ありそうだな。青龍だし。
「じゃあ、誘ってみるだけ誘ってみるか。確かに戦力的には申し分なさすぎるわけだしな。あー、でもそうしたらどうしようか。一々この世界に来て、アーミンをマリンの背中に載せて、呼び出してって結構手間だよな。桜も同じように呼び出さないといけないし」
「いっそのこと、マリンの背中に家でも建てたら? アーミンの事情が懸賞金の掛けられてることに辟易してるっていうんだったら、いっそのことこの世界からおさらばしたほうがアーミンにとっては後腐れないかもよ?」
「家か……、とするとあいつはマリンの背中の住人第1号になるわけか」
マリンの背中に誘致か。そういえば、次もらう予定のチート何も考えてなかったな。家建設……、いやいっそのこと街建設とそれに関連するチートでも貰ってみるかな。
家を作ってくれる住人を引き入れて、その人らに作ってもらうのが経済活動としては健全なのだが、最初の一人に関してはどうしてもそうならざるを得ない。
「ま、アーミンに来る気がなけりゃただの皮算用だ。とりあえず次のシフトの時に聞いてみよう。そろそろ時間だろ?」
「よね。それじゃ行きましょうか」
交代の時間になったので桜と連れ立って、アーミンの部屋へと行く。
コンコン
「空いてるよー」
部屋のドアをノックすると、アーミンでなく白虎が返事を返す。返事を待ってからドアを開けるとアーミン、白虎、玄武が思い思いに寛いでいた。
「まぁ、来てもらってなんだけど。もう私らはお役御免らしいよ?」
白虎がいきなりそんなことを言い出す。ということはつまり──、
「あぁ、私はもう完全に回復した。これで万全になったというわけだ。今までご苦労だったなお前たち」
そこには気力に満ち溢れ、元気溌剌になったアーミンがいた。