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19.惑星フラクタル

「ワープアウト、惑星フラクタル近郊に着きましたな」


 そろそろワープが終了すると言うことで、アーミン含め全員ブリッジに集合しワープアウトを待っていた。艦長席に座ってそう発言する玄武はその見た目の年齢も相まって艦長の貫禄バッチリだった。


「…………」


 アーミンはブリッジについてからずっと不機嫌な表情のままだ。やはり、何も言わずに日本製のホラー映画を薦めたことを怒っているのだろうか。


「なぁ、機嫌直せって。いきなり初手でホラー映画見せたことは謝るから」


「別にそのことで怒っているわけではない。確かに怖かったが、同時にすごく面白かったのも事実だ。おすすめというのは嘘ではなかったようだし、それはもう終わったことだ。そんなことでいちいち怒りを継続するほど私は狭量ではない」


 ホラー映画見てすぐはめちゃくちゃ怒ってたけどな、という言葉は飲み込む。ビンタされた頬がまだ痛い気がする。


「じゃあ、何で不機嫌なので?」


 俺の代わりに白虎がアーミンに聞く。まぁ、怒ってないと言いつつ根には持ってるようなので、俺が聞くよりはいいだろう。


「惑星の周りの巡視船の数が多すぎる……。ここは何の変哲もない辺境のはず、ここまで宇宙連邦の巡視船が多いのは今までみた事がない」


「レーダー写すにはどうすれば……、こうか」


 手近なコンソールの前に座りガイダンスに従い操作すると艦長席からよく見える位置にでかくレーダー映像が投影される。

 それを全員で睨むが、言われてみれば確かにここらの宙域に巡視船と思しき光点がかなりの数見受けられる。ただ、多いか少ないかと聞かれると、普段の数を知らないのでわからないと答えるしかないのだが。


「まぁ、多くはあるが普段の数を知らないからな」


「確実に多い。これは厄介事の予感がするな。おい、お前たちのこの船は大丈夫だろうな。後ろ暗いところはないだろうな」


「武器のライセンスが闇ライセンスなだけの健全な闇船だよ」


 アーミンの心配にそう答えてやると、アーミンは見るからに狼狽だす。


「お、おい、大丈夫か!? 臨検されたら終わるぞ!」


「別に海賊行為やってるわけじゃないし、見るからに新品の船だし、臨検なんてされないだろ。だいじょーぶだいじょーぶ」


「安心できる要素が何もないんだが!」


 アーミンはそう慌てるが、アーミンの心配をよそに惑星フラクタルの周りに漂っている巡視船はこちらを完全無視で、俺たちは何事もなく宇宙港に入港することができた。


「さて、これで惑星フラクタルに無事送り届けたわけだが──」


「何を言ってる、これで終わりのような言い方をするな。私の力が完全回復するまで付き合ってもらうぞ」


「まぁ、そうなるよな」


 惑星フラクタルに送り届けたら終わりかと思ったがどうやらそうは問屋がおろさないというわけだ。


「まずはワープステーションに向かうぞ。近郊にワープしてからそこからは歩きだ」


「アーミン殿の仰せのままに」


 俺がちょっとおどけてそう言うと、アーミンはチラッとコチラを見ただけで何かをいうことはなく歩き始める。

 その後ワープステーションで、アーミンの言う近郊にワープし、そこからアーミンの家まで何事もなく到着した。

 惑星の周りに漂っている巡視船といい、力を失ってESPを行使できないアーミンといい、襲撃フラグがこれでもかというぐらいに立っていたのに、何も起きなかったのである!


「これが現実って奴なのかねぇ」


「何か言ったご主人?」


「いや何でも」


 ある意味現実の不条理さにため息をつきながら、アーミンの家の中にお邪魔する。家自体はそれはもう立派なコンシェルジュがついてるような高級マンションだった。入る時に俺たちも身体検査され、青龍の持っていた槍と桜が下げてる剣が没収された。俺の陰陽剣はアイテムボックスに入れていたので無事だった。白虎は元から無手だし、玄武はステッキを持ってるだけなので、没取されることはなかった。というか、玄武の場合はそのステッキが凶悪な武器なんだが、知らないって怖いな。

 身体検査を終えて、アーミンの部屋に着いたのだが、そこは控えめに言って地獄だった。あたり一面にゴミが散乱し、服も脱ぎ散らかし、足の踏み場もない有様だ。せっかくの高級な部屋なのにその汚れっぷりで全てを台無しにしている。


「正直襲撃の一つや二つあるかと思っていたが存外何もなかったな。ともあれ護衛ご苦労だった。部屋はいくつかあるから、誰か最低でも一人ここに護衛として残してくれれば後は自由にしていいぞ」


「いや、そんなことよりこれは掃除したほうがいいのでは……? 俺も掃除はあんまり好きじゃないたちだが、それでもこれはひどい」


「めんどい」


 アーミンは面倒臭そうにそれだけいうと顔を背ける。めんどいってお前……。


「じゃ、残るのは桜ちゃん以外かな。流石に剣ないと戦えないでしょ? 他は無手でも十分すぎるぐらい戦えるメンツだけど」


 白虎はこの状況を突いてもいいことないと思ったのか、俺らのやりとりを無視して護衛計画を立て始める。まぁ、ここは乗ってやるか。

 で、肝心の戦力分析だが、俺は剣も使うが今のところメインは魔法だから武器がなくてもいける。青龍は武器戦闘がメインだが魔法も問題なく使える。白虎と玄武は魔法メイン。桜は一応両方使うが本人の実力がまだそんなに高くないので両方使える状態じゃないと戦力半減と言ったところか。。こう考えるとうちのパーティー魔法使い多いな。バランス悪くね?


「別に絶対一人だけしか残れないってわけじゃないんだから、誰かと一緒ならいいんじゃないの? それでローテ組みましょう」


 ハブられそうになった桜がそう提案して、全員でディスカッションして順番と組み合わせを決めた。

 結果、俺&桜→青龍→白虎&玄武 という組み合わせと順番とあいなった。青龍は他人の護衛などしたくない、自分は勇人様の護衛だ、とかなりの間ブーたれてたが、俺が土下座する勢いで頼み込んだら渋々ということを聞いてくれた。

 実際、青龍のシフトの時は青龍以外4人が全員揃っているので俺の護衛という点では問題がなさすぎる布陣になっているからだ。

 正直、玄武は一人での護衛シフトに回しても良かったのだが、やはり玄武一人では刺客が来た時の見た目のインパクトが悪い。見た目が爺さんってことでどう見ても護衛される側である。

 まぁ、白虎も白虎で胸以外かなりロリロリしいので、二人揃うと孫とジジイにしか見えないという問題があるのだが、実力はピカイチな二人なのでそこは心配することはないだろう。

 ちなみにだがトウコツは護衛という仕事に致命的に向いてないので呼ぶことはしない。あいつは鉄砲玉として使うのが一番いい。


「決まったか? じゃ、しばらくは頼むぞ」


 そう言うとアーミンはソファに寝そべり寝息を立て始める。さて、最初は俺と桜のターンだな。何事もなければいいが。


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