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17.宇宙船ワンダーサイト号

誤字があったので修正しました(5/12 8:35)

 アーミンの先導で歩き始めた俺たちだが、総督府を後にしてしばらく歩いているとふとピタッとアーミンが歩みを止める。


「ん? どうした?」


「帰り道が分からん……」


「は? 何だって?」


 聞き間違いかと思いアーミンに聞き直す。


「ここにはテレポートで来たからな。ここまでの道など正直覚えていない」


「これだからエスパーは……」


 まぁ、魔法とはいえテレポートを使える身としてはその気持ちは分からないでもない。実際、道中が面倒だとテレポートしたくなるよな、分かるよ。

 まあ俺の場合、道は青龍や白虎が覚えてくれるという安心感があるから道を覚えてないので、こいつのことを笑えないのだが。


「どうしよう?」


「いや、俺に聞かれてもな……」


「勇人様、ここは宇宙港に向かうのがよろしいかと」


「宇宙港? なんで?」


 青龍が珍しく自主的に発言したかと思ったら、宇宙港に向かえと言われた。こいつのセーフハウスがあるわけじゃないし、宿泊施設も少ないだろう。なぜ急に。


「あ、そっか。そろそろ引き渡しの時間か。中に住居スペースもあるし、この惑星にいる限り追手は来るだろうから、惑星脱出は中々良い手かもね」


 横で白虎がポンと手を打つ。そう言われて俺も思い出した。そうだった、俺ら宇宙船注文してたんだった。この惑星で全部イベント完結するもんだと思ってたから惑星の外に出るという発想がなかった。


「発言から察するに、この星で船を買ったのか。乗せてくれるなら丁度いい、私の母星に連れて行ってくれないか。この惑星には惑星間テレポートで来たから船は持っていないのだ」


「じゃ、宇宙港に行くか。えーと、トリノ宇宙港の3番ドックだっけか」


「お、よく覚えてたねご主人。そそ、じゃいざ宇宙港へ」


 行くと決まったはいいが、誰も宇宙港への道は知らなかったので、聞き込みをしながらの道中になった。だが、聞き込みで判明したのはトリノ宇宙港がかなり遠くにあると言うことだった。まぁ、闇商人だったし足がつかないために遠くの場所を指定したのかもしれない。

 仕方がないので、ワープステーションを利用し、トリノ宇宙港まで飛ぶことにした。ワープ代にいくらかクレジットを要求されたが、白虎と玄武が荒稼ぎしたクレジットがあるので移動費用は余裕で捻出できた。

 ちなみに、例によって青龍たちは飛べないので、後で呼晶で呼び直した。一緒に飛ばなかったことをアーミンは不思議そうに見ていたが、特に追求してくることはなかった。

 

「えーと、3番ドッグってどこだろう?」


 宇宙港に付くなり、桜がキョロキョロと辺りを見回す。

 宇宙港という名前こそしてるが今いる場所は、受付があって軽く休憩するようなソファがあって、と普通にオフィスの入り口みたいな感じだ。一応外壁は一方向だけ完全ガラス張りになっており、そこから宇宙船の止まっているドッグが見える感じになっている以外は、特に取り立ててみるところはない。


「そう言うのは、受付で聞いた方が早いだろ。と言うわけで、すいませーん」


「はい、なんでございましょう」


「今日3番ドッグに新造の船が入ってるはずなんだけど、ここで手続きすればいいのかな?」


「はい、フリゲートが1隻、先ほど入港されました。つきましては船籍登録のためいくつか手続きをしたいと思います。まず、真宮寺勇人様でお間違いではないでしょうか?」


「あぁ、俺が勇人だ」


「声紋、顔写真、網膜パターン一致。はい、ありがとうございます。つきましては、船籍登録のために船名をつけてください」


 なんか、いつの間にか声紋とか色々採取されてたらしい。まぁ、身分証明とか何も持ってないから、生体パターンで認識してくれるならありがたいことこの上ないが。


「船名……、船名か。ちょっと仲間と相談していい?」


「はい、ゆっくりとお考えください。その間にこちらでできる手続きを進めておきますので」


 受付の人は嫌そうな顔一つせず、手元のタブレットのようなものに情報を入力していく。


「で、船名どうする?」


 俺は振り返り皆に尋ねる。


「勇人様のお好きなように」

「よほど変じゃなければあたしは何でもいいよ」

「ご主君のご随意に」

「うーん、船名かー、どうせならカッコいいのがいいよね!」


 とこんな調子でまともに船名を考えてくれるのは白虎のみだった。まぁ、船買う時も白虎以外興味なさげだったから当然の帰結といえばそうだが。


「宇宙船だから、なんとか丸とか、何ちゃら号とかの名前がいいよね」


「なんとか丸はちょっと古風じゃね? あれどっちかって言うと海洋をでる船につけるような名前だし」


「じゃぁ、やっぱりここはエンタープライズ号で!」


「お、初手からなんか良さげなのが出たな。響きも悪くないしそれで行くか」


 俺はそれでいいかと思って同意するのだが、白虎は気まずそうに視線を逸らす。


「い、いや今のナシで……。ていうかネタが通じないんだね、やっぱ古いか」


 白虎の言い方から察するに何かのアニメか漫画かに出てくる宇宙船の名前なのだろう。ツッコミを期待していたが、ツッコミがなくて自分で引っ込めたようだ。


「一応俺らのパーティー名はワンダラーズって決まってるんだから、それにちなんだ名前とかが望ましそうだな」


「ワンダラーズって複数形だからそのままつけるのはないとして、ワンダーを冠名にして……ワンダーサイト号ってのはどう!?」


「それも何か元ネタがあるのか?」


「いんや、ただの思いつきだよ。と言うか2回も同じことしないってば。とりあえず冠名の後につけて不自然じゃない感じの単語を引っ張ってきただけさ」


「とりあえず、俺はいいと思うぞ。みんなは?」


「異議はありません」

「異議なーし」

「異議はありませんな」


 まぁ、変な名前じゃないし、割としっくりくる名前だから誰も反対しないだろうとは思ったが。


「じゃ、船名はワンダーサイト号ってことで」


「承りました、ワンダーサイト号で登録しておきました。…………はい船籍登録の手続きは完了いたしました。こちらがワンダーサイト号のスタートキーになります。ドッグからでる際は、オペレーターの指示に従ってください。では、良い航海を」


 やっぱ、車とかと同じでキーがあるんだな。まぁ、出来てからでないと渡せないと言うのは分かるのだが、受付に預けるってここらではこれが一般的なのか? まぁ、ローゼンと決別した以上、紹介されたあの闇商人と会うのも難しいのでこのシステムでこちらとしてはありがたいのだが。

 とりあえずキーはアイテムボックスに仕舞っておこう。


「よし、登録完了だ。搭乗と行こうぜ!」


「よっしゃ、初宇宙船だ!」


 テンション高いのは俺と白虎だけだな。みんなロマンのわからんやっちゃなー。



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