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15.誰が為に

「おいおい、あんたらはあたい達に協力してくれるんじゃないのか? 話が違わやしないかい?」


 ローゼンは心底信じられないと言った顔で、こちらを睨んでくる。

 うっせー、信じられないってのはこっちのセリフだ馬鹿野郎。もう抵抗の意思のない相手を虐殺するのが良いことなものか。

 一方渦中のアーミンも信じられないと言った瞳でこちらを見ている。おい、お前も同じメンタルか。これがこのSF世界での当たり前とでも言うつもりか。


「違わないさ。俺が請け負ったのは総督府への襲撃と陽動、ESPジャマーの破壊とエスパーたちの相手だ。相手をすると言ったが殺すとは一度も言った覚えはないね。実際、ジャンマリアは死んでいなかっただろう?」


 俺がそういうと何がおかしいのか、ローゼンはくっくっくと忍び笑いを漏らす。


「なるほど、あれはESPジャマーの破壊を優先して気絶だけで止めてたのかと思ったが、ただの甘ちゃんだったってわけか」


「甘ちゃんで結構! 外道には成り下がりたくはないんでね」


 正直、アーミンを庇うのはやってしまった感が強いのだが、世界を救うに一番大事なことは自分の心に正直に行動することだ。俺はアーミンを死なせたくないと思った。ならこの行動は正しいはずだ。そう思い、ローゼンと訣別する。


「そっちこそ下がる気はないか? 一度世話になった以上剣を向けるのは忍びない」


 無駄だとは思うが一応提案してみる。


「冗談! こんな舐めた真似してくれた以上、大人しく下がっちゃ、こっちもメンツが保てないからね。お前たち!」


 ローゼンが号令をかけると周りにいたエスパーたちが陣形を組み始める。

 数は、ローゼンを入れて12人ほどか。ちょっと多いな。アーミンを守りながらだと少々辛い。なら、こっちも頭数を増やすか。今の会話の間でも多少の魔力は回復している、と言うよりもとよりあいつはすでに霊体化してこの場にいる、呼ぶだけなら魔力は必要ない。


「召喚、トウコツ」


「よっしゃ、久々の出番だな!」


「できるだけ殺すなよ、できるだけ、な」


「へっ、てことは出来なければ殺してもいいってことだよな?」


 そう言って獰猛な笑みを浮かべるトウコツ。すぐに主人の意を汲んでくれる召喚獣は嫌いじゃないぞ。


「ひ、人が増えた!?」


「狼狽えるな! それでもあっちは7人。こっちは12人だ。数の有利は変わらない」


 7人? あぁ、アーミンが頭数に入ってるのか。でも、こいつもすっからかんで何もできないと思うんだが。とりあえず、他のみんなに目配せして、アーミンを中心に円陣を組む。


「こんなことになってすまんな」


「勇人様の成したいように。我らはそれを補佐するだけにございます」


「そーそー。私も正直無抵抗の女の子殺すとか我慢ならんし!」


「流石に紳士的ではありませんな」


「久しぶりに暴れさせてもらうぜぇ」


「これって、主人公がローゼンじゃなかったってことなのかなぁ。ま、とりあえずさっき活躍できなかった分活躍させてもらおうかしら」


 皆思い思いの言葉を述べるが気持ちは一つのようで安心した。トウコツはまぁうん。そういうやつだし。


「全く、想定外の戦闘だよ。お前たちぬかるんじゃないよ! 相手は最強のサイキッカーを倒した相手だ。死ぬ気でかかるんだよ!」


 ローゼンのその号令が開戦の合図となった。

 ほぼ一斉に、さまざまなPKが戦場に飛び交う。もう陰陽剣は使えないので避けるか防御するしかないのだが、避けるとアーミンに当たってしまう。

 なのでここは、


「「「「『マジックシールド』」」」」


 俺、青龍、白虎、玄武で4方向に魔法の障壁を貼る。第一位階魔法なのが幸いして、MPカラッケツ寸前の俺でも唱えることができた。PKは全てその障壁に阻まれ威力を失いそのまま消滅する。


「サイコシールドか!」


「慌てるな! 当て続ければそのうち効果は切れる! 火力を集中しろ!」


 いや、マジックシールドって言ってるじゃん。聞き間違いにも程があるぞあんたら。

 まぁ当て続ければそのうち障壁が消えると言うのはその通りなのでこれ以上攻撃をさせないのが肝要なのだが──、


「がっ!」

「ぐっ!」

「ぐほっ!」


 俺たちが障壁を貼っている間、PKの絨毯爆撃などものともせず、ダメージを受けながら突っ込む一つの影があった。その名をトウコツ。

 瞬きの間に3人を始末していた。ご丁寧に殺してなくて意外や意外、ちゃんと命令は守ってるんだな。


「一気に3人も!? がふっ!」

「は、早すぎる! ぐおっ!」


 「5人目ぇ!」


 トウコツが雄叫びを上げながらどんどんとエスパーたちに突っ込み戦果を上げていく。よく考えたらトウコツは今まで出してなかったから一人だけコンディションが万全なんだよな。そりゃ無双するわ、と。


 と、トウコツの方ばかり見ていたが反対の方でも動きがあった。


「すべての力の源よ! 光り輝く神の力よ! 我が手に集いて槍衾となれ! ホーリーファランクス!」


 なんか、桜が新魔法を披露してるのである。頭上からホーリーランスを雨あられと降らせて反対側のエスパーたちをドントンと倒していく。


「ば、馬鹿な!? サイコスピアを乱射だと!? 何というエスパ……、ぐふっ!」


「だ、だめだ! こんなの勝てるわけ……ぎゃっ!」


 と言うか、俺が何もせんでもどんどん戦場が静かになっていく。まぁ、俺は魔力すっからかんで動きにくいと言うのもあるのだが。


「ちぃっ、さすがは最強のエスパーを倒した奴らってことかい! なら──」


「あっ、逃げるな!」


 ローゼンの方を見ると、他のエスパー達を囮に逃げ出そうとしているようだ。白虎が追いかけようとするが、


「無理に追いかけなくていい。敵対したから始末したってなったらあいつと同じ穴のムジナだ」


「えーでもー」


 白虎は不満そうだが、最終的には受け入れたようで、アーミンの護衛に戻る。

 そんなやりとりをしている間にトウコツと桜によって全て終わったようで、五体満足で立っているのは俺たちだけとなった。


「終わったか」


「あー、久々にスカッとしたぜ。戦闘になったらまた呼べよな」


 トウコツはそれだけいうと霊体化し、姿を消す。こいつはほんま変わらんな。逆に安心するわ。

 さて、それで俺は結局アーミンを助けてしまったわけだが──、


「なぜ、助けた」


 心底不思議そうな顔でこちらを睨んでいるのである。


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