13.封念のサイキッカー
先手を取ったのはアーミンの方だった。左手から炎を出し、こちらに放射する。俺は慌てず騒がず、その炎に向かって陰陽剣を一閃する。
「なっ!?」
その瞬間、アーミンから放射されてた炎は一瞬で消え去り後には熱も何も残ってはいなかった。
うん、封念なんて二字でちょっと不安だったが、ちゃんと機能しているようで何より。封はともかく念の字は色々と解釈ができそうな字だからな。
だが、こうして相手のPKを封じれるなら狙い通りと言ったところだ。
「今、何をした!? ESPジャマーではない。反ESPを当てたのでもない。どうやって消えたのかまるで見当がつかんぞ! お前たちは、一体なんなんだ!?」
「ただの救世主御一行だよ」
「何を訳のわからないことを!」
本当なんだがなぁ。世界に破滅が迫っているのを知らぬはその世界の住人だけであるか。
「ならば、これはどうだ! はあぁぁぁぁぁぁっ!」
アーミンが両手を頭上に掲げ気合を入れ始める。それと同時に、アーミンの周囲に薄い防御膜のようなものが展開される。なるほどこれが資料にあった破られたことのないサイコシールドという奴か。多分陰陽剣なら一発で割れるが、それをするのもなんだかなぁという気分だ。
だが、どうやらやつの狙いは防御ではなかったようで。しばらく裂帛の気合を込めて叫んでいたアーミンだが、頭上に掲げた両手にバチバチと光る棒状の何かが出来ていた。あれ、なんか見覚えがあるんだが。うーん、なんだったか。
「あ、思い出した。マジックミサイルと同じ感じなんだ」
そう言ってポンと手を打つ。とすると、あれは念能力で作り出した純エネルギー体と言ったところか。
「ご主人ーー! 見てる場合じゃないでしょ! 早く! 早く攻撃を!」
おっと、そうだった。見惚れてる場合じゃ無かった。溜めが必要な攻撃をわざわざ待つ敵はいないってね。
「もう遅い! くらえ、我が渾身のサイコスピアを!!」
そう言って、両手の間にあるサイコスピアとやらをこちらにぶん投げてくるアーミン。
これ避ければ終わりだよな、と思いつつも避けたら避けたで追尾しそうな感触があるので、きっちり迎撃することにする。それにここで避けるより迎撃した方が相手に精神的打撃を与えることが出来るだろう。
「ほいっ、と」
軽い感じで──実際軽いのだが──、陰陽剣を振るうと先ほどの炎と同じようにサイコスピアが打ち消される。
「そ、そんな。私の渾身のサイコスピアが……」
驚愕の表情と共に、アーミンはその場にガックリと膝をつく。よく見ると顔中汗だらけで、先ほどのサイコスピアは文字通り渾身の一撃だったのだろう。
「さて、それで打ち止めか?」
陰陽剣をすっと首筋に当てる。陰陽剣のせいで魔力垂れ流し状態なのでここらで手っ取り早く降参してくれるとありがたいのだが。
「情けは受けん! まだやれるぞ、私は!」
陰陽剣を手の甲で打ち払うと後方に向かってジャンプし、距離を取るアーミン。
「私にこれを使わせたのはお前が初めてだ。誇れ真宮寺勇人! 喰らえ、私の最強の必殺技を。はあああああ!」
そう言うと、アーミンは右手で手刀の形を作り胸の前に掲げる。そして、その空の手刀から伸びるエネルギー状の剣。さっきのサイコスピアと似ているが、違うのはこれが近接攻撃手段ということだろう。
しかし悲しいかな、それが全て念から発するPKである以上『封念』の二字で陰陽剣が完全に封じてしまうのだ。正直見てるのが居たたまれなくなる。
「これが私の全力の『光の剣』だ! 真宮寺勇人、覚悟!」
あれ食らったら流石に俺も蒸発するな。そんな印象を抱かせる、それはもう立派な光の剣だった。流石に超能力相手では青龍や白虎も負が悪い。俺がなんとかするしかないのだが、陰陽剣で打ち合ったら一瞬なんだよなぁ。
「来い!」
でも、ここは乗ってあげるのも優しさだろう。俺は陰陽剣を両手で正眼に構えアーミンを待つ。
「とった! くたばれ真宮寺勇人ぉぉぉぉぉぉぉ!」
「いや、残念」
俺は慌てず騒がず、陰陽剣で光の剣を防御する。すると、陰陽剣に触れたはしからまるで陰陽剣に吸い込まれるかのように、光の剣が消失していった。
「ば、馬鹿な! ESPジャマーすら貫通する威力を込めたのだぞ!? よしんばその剣が新型の高性能ESPジャマーであったとしても、許容量をオーバーして必ず破壊されるはずだ! わ、私が……負ける……?」
「おっと、こっちも時間切れのようだ」
俺の魔力が底を尽きかけたからか、陰陽剣が分離し陰剣と陽剣に戻る。俺は茫然自失になっているアーミンに陰剣を突きつける。
「さて、チェックだ。まだ抵抗するか?」
「…………私の、負けだ」
がっくりと項垂れそのばにうずくまるアーミン。
アーミンの敗北宣言を受け、最強のサイキッカーはここに敗れた。