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12.時空魔法

 玄武の召喚に成功すると、俺を覆っていた重力場が急に消えたが、消えたのはそれだけではなかった。青龍を拘束していた重力場も消えたし、白虎も中空から解放されて、ゲホゲホとえずいていた。


「た、助かったよ玄武。ご主人も召喚ナイス」


「いえいえ、私ではこれぐらいしか出来ませんからな。何せ戦闘は苦手ですので」


「よくいう」


 青龍も気力が戻ったのか、槍を拾い直しゆっくりと立ち上がる。

 桜以外の全員が立ち上がり、アーミンと対峙する。悪いな桜、後で治療してやっから。


「『メジャーヒーリング』」


 とりあえず、自分だけでも回復させておく。

 俺たちが立ち上がった様子を見て不思議そうな表情を浮かべるアーミン。


「私はPKを解除していない。何をやったの、ご老人。というかどこから出てきた?」


「さて、何をやったのでしょうなぁ。見ての通り老骨ゆえあまり取り柄と言えるようなものを持っていなくてですな」


 のらりくらりとかわす玄武。アーミンも玄武を問いただすのは無駄だと悟ったのか、すぐさま次の攻撃にうつる。


「まぁいい、重力のPKが使えなくても私には他のPKがある、今度こそ地獄に落ちなさい、勇人クン御一行」


 そう言うと、アーミンは右手に雷、左手に炎を出しこちらを威嚇する。髪の色が赤いから、パイロキネシスが専門かと思ったが、雷のPKも使えるのか。そこは氷のPKだったら、アレが再現できたのに。いや、再現されると俺たちに待ってるのはもれなく死なのだが。


「ほっほっほ」


 そんな中、好々爺な態度を崩さない玄武。持っていた紳士ステッキでコンと地面を突くと、突如としてアーミンがうずくまる。そして、アーミンを中心に広がるクレーター。この現象は!


「どうですかな、自分が同じことをされる気分は?」


「うっ……ぐっ! この、程度っ!」


 自分のPKで重力場を打ち消しでもしたのか、重力で抑えつけられてるとは思えない速度で立ち上がり、


 コンッ


「がっ!」


 玄武がもう一度ステッキを地面につくと、アーミンはもう一度地にひれ伏す。玄武のこれは、魔法……なのか? しかし、俺が使うグラビトロンとは性質が違うように思う。俺らが使うグラビトロンは例えるならば精々が重力二倍程度だ。玄武が使ってるのは重力十倍ぐらいに思える。単純に強化された魔法なのかとも思ったが、それにしては玄武は一度も魔法名を発音していない。


(おい、玄武がやってることってなんなんだ、解説プリーズ)


 俺はお手上げ状態で白虎に念話を送る。こういう時は知ってそうなやつに聞くに限る。


(玄武の固有魔法だよ。音を媒介に時と空間を操る時空魔法が玄武の固有魔法だ。今やってるのは空間を操って重力場を発生させてる。古代魔法なんかよりももっと直接的で強力な力を操る魔法だよ。正直これ使われたら私じゃ勝てる気がしないね)


(音を媒介に、ということは玄武がステッキで地面をついてるのは伊達ではないということか。というか、時空魔法って凄まじく厨二心をくすぐられる魔法なんですが。 あれ? でも、お前らガイアの化身って時空間に関する影響は受けないって言ってなかったか?)


(あぁ、そうだよ。だが何事にも例外はある。玄武はガイアの化身でありながら、時空間を操ることができる唯一の例外だ。それもあってこいつは非常に厄介な存在なんだが──、ほんと味方でよかったよ)


 そう念話で嘆息する白虎。念話なのに息を吐く音が聞こえるとか無駄にリアル追求してんじゃねぇよ。

 ともかく、玄武が重力場を無効にしてくれるなら勝ち筋はある。


「玄武、もういい。あとは俺がやる。玄武は重力のPKを使われた時の解除だけ頼む」


「それだけでいいのですかな? ならば私は楽ができそうですな」


 玄武はそういうとアーミンにかけていた重力場を解除し、後ろへと下がる。


「どういうつもり……?」


「あの状態でとどめ刺したら、お前さん負けを認めるのか? もっと気持ちよく負けたいんじゃないのか? だったら正面から行った方がいいだろ?」


「その慢心、後悔させてやる!」


 言うなりアーミンは右手を電撃でバチバチ言わせながら、立ち上がりざまにこちらにストレートをぶちかます。

 そんなのを大人しく食らってやるわけにもいかないので、俺は大きく後退し陰剣と陽剣を両方抜き放つ。


(久しぶりに使うのね、勇人。ねぇ、(陰剣)


(今度はどんな印を書くのかしら? 楽しみね。ねぇ、(陽剣)


「合身。陰陽剣。『封念』」


 陰剣と陽剣を合体させ、陰陽剣を作り出す。同時に印を『封念』と刻む。

 エスパー封じの印のつもりで刻んだが、当然こんな二字熟語は存在しない。とはいえ、漢字の力である程度は意味を持たせられるので意味はあるだろう。

 霊力という名の魔力を吸い出されてるのでこの状態では短期決戦でいかなければならない。


「さぁ、行くぜアーミン。覚悟はいいか?」


「やってみろ、真宮寺勇人! そう簡単に私に勝てると思うな!」


 もはや、勇人クンという舐めた呼び方をする余裕もなくなったのか、語気も荒くなるアーミン。その言葉によって、俺たちの戦いの火蓋は切られた。


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