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10.総督府襲撃

 夜が明けようとしている払暁の頃合い、俺たちはローゼンさんの案内のもとこの惑星を管理する都督の執務施設、総督府を見渡せる崖の上に明けの明星の連中と共に陣取っていた。

 どうでもいいがこの惑星、岩場というか砂漠がかなり多く、あまり農業には適してないような惑星である。総督府の周りも、道路以外はほぼ一面の岩石砂漠である。食料品は惑星外からの輸入にでも頼っているのかね? 閑話休題──、


「午前5時。作戦開始だ」


 ローゼンさんが腕時計を見ながら、そう低く告げる。


「よっしゃ、じゃ露払いは任せてもらおうか。行ってくるぜー」


 そう言って、俺たちは4人揃って崖を駆け出す。さて、突入は派手に行くか。


「「「『ファイヤーボール』!」」」


 俺と青龍、白虎の3人で示し合わせてファイヤーボールを総督府の外観に放つ。

 火球が爆発し、あたり一面が急激に明るくなる。それと同時にあたりに激しく鳴り響くサイレン。

 建物自体は防火性なのか、壁に焦げ目が付いた程度で延焼はしなかったが、にわかに総督府が慌ただしくなる。


「なんだ!?」「敵襲か!?」「今のはパイロキネシスか!?」


 建物内から声が響くが、遅い──!


「『ストレングス』! オラァ!」


 攻撃力強化魔法をかけ、ヤクザキックで総督府の正面玄関を破壊する。すると中には、玄関に集まっていたと思しき、ボディーアーマーを付け、ブラスターを持った職員らしき人影が数人──、


「ふっ」


 青龍が一息入れると、すぐさま職員全員が沈黙しその場に崩れ落ちる。相変わらず全然見えないでやんの。しかもこれで殺してないんだぜ。


「おっと、忘れるとことだった」


 俺はアイテムボックスから陽剣と陰剣を取り出し、腰に装着する。陰剣は出番はないかと思うが、出さないで拗ねられても困るので出しておく。


(今しがた蹴り飛ばした門扉には私を使うべきじゃないかしら。ねぇ、(陰剣)


(全くだわ。この調子では私たち(陰陽剣)の存在を忘れてたわねお前。ねぇ、(陽剣)


(うっセーな、ESPジャマー壊す時に存分に使ってやるから安心しろ)


 と言っても、俺はESPジャマー班ではないので、その任務はどっちかというとついでなのだが、口には出さないことにする。


(聞こえているわよ、勇人。あなたと私たち(陰陽剣)は精神で繋がっているのだから、お前の心の中などダダ漏れよ。ねぇ、(陰剣)


(もっと精神修養なさい。もう一度あの精神世界で鍛えてやるのも手かしら。ねぇ、(陽剣)


 あぁ、もうこいつらがいると話が進まん。とりあえず無視して先に進もう。


「行くぞ」


 職員の屍(死んでないが)を踏み越えて総督府の中に侵入する。総督府の内部構造は頭に入ってるので迷うことなく寝室の前までは行けるだろう。

 それまで妨害がなければ、だが。


「そこまでだ。これ以上の狼藉は許さんぞ、テロリストめ」


 俺たちの前に立ち塞がったのは、資料で見たエスパー。ジャンマリア・ロッコ、通称ワイヤード・ジャンだった。


「白虎、桜」


「おう、任された」

「分かったわ」


 俺が名前を呼ぶだけで二人は即座に動き出し、ジャンマリアの横を駆け抜けようとする。


「そうはさせ──」


 ギィン!


 ジャンマリアが言い終わるより前に、青龍がジャンマリアに肉薄する。ジャンマリアは咄嗟に右腕の籠手の様なもので青龍の一撃を防ぐ。一瞬できたスキ。だが二人にはその一瞬の隙だけで十分だった。即座にジャンマリアの脇を駆け抜けると奥へと消えていった。


「くっ! しまった!」


「この私を前によそ見などできるとは思わないことです」


「チッ」


 ジャンマリアは舌打ちすると少し距離をとって青龍と対峙する。さて、こいつの戦い方は不可視のワイヤーを念動力で操って戦う、だっけか。

 戦い方がそれだけなら青龍の敵ではないが……、


「ふっ」


 青龍が一足にて間合いを詰め槍を一閃。あ、終わった。と思った俺はまだ早かったようだ。青龍が放った槍はジャンマリアに届く少し前あたりで空中で静止していた。もちろん、青龍が寸止めなんていう舐めプをしたわけでもなく──、


「なるほど、これがワイヤード・ジャンですか」


 青龍の槍はやつの不可視のワイヤーに絡め取られ身動きが取れない状態になっていた。


「槍なんて古臭い武器を使うやつなど初めて見たが、なかなか面白い余興だったぞ。さて、どうする? せっかくの槍を手放すか?」


 なんか、勝ちを確信した感じのジャンマリアさんだが、甘い、甘すぎる。青龍の攻撃手段は槍だけではない。


「『ライトニング』」


 青龍はまずは小手調べなのか、威力の低い雷撃系魔法を選択した。槍をつたい、その先のワイヤーを伝い、電流がジャンマリアを直撃する。


「ぐわあああ!!」


 身体中を駆け巡る電流を食らって、悲鳴を上げるジャンマリア。腐っても第4位階魔法だ。五体満足で済むはずはない。しかし、一撃でケリをつけなかったのはどういうつもりなのだろうか? チェイン・ライトニングあたり使えば一発だろうに。


「くそっ、貴様エスパーか! 指向性ESPジャマー起動! フハハ! これで貴様はもうESPを使え──、」


「『ライトニング』」


「があああああ!! な、なぜだ!?」


 もしかしてこのシチュエーションがやりたかったとか? いや、ないか。白虎と違って青龍はそういうシチュエーションにロマンとか感じないタイプだし。


「さて、なぜでしょうね? それはともかく、貴方が起動してくれたおかげでどれがESPジャマーか分かりました。破壊させていただきます」


 あ、わざと弱い魔法使ったのはESPジャマーを起動させるためだったのか。それでESPジャマーの場所を探ると。

 で、俺がそんな悠長に考えてると、青龍は急に力を込めると槍を縦横無尽にぶん回し始める。槍はまだジャンマリアとワイヤーで繋がっている状態だ。それを無理やり振り回すとどうなるか。


「ぐわっ! なんて怪りっ、アガっ! や、やめてくれ!」


 まるでけん玉の玉みたいに通路中を振り回されるジャンマリア。そしてその肉体でもってESPジャマーを破壊していく。これが本当の漢解除ってか。

 そして、あらかた潰し終えたのか、振り回していたジャンマリアを地面に下ろし、ふぅ、と一息入れる青龍。ジャンマリアはピクピクしてるからとりあえず死んではいないようだ。


「とりあえず、一帯のESPジャマーは破壊いたしました。前の二人に追いつきましょう」


「お前、割とえげつないことするな……」


「これぐらいどうということはありませんよ。行きましょう、勇人様」


 青龍は力の弱まったワイヤーを無理やり振り解くと、通路を駆け出す。

 要注意サイキッカーがあっさり退場か。やっぱ青龍に敵うやつなんていないんだな。

 この時の俺はそう思っていた。


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