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4.相場荒らし

「はいはーい、意見具申をしたいと思いまーす」


 俺たちだけになるや否や、白虎が元気よく挙手する。


「はい、白虎さん早かった」


「取り敢えずまずは軍資金集めをしたいと考えます!」


「軍資金?」


「そう、さっきのフードカートリッジやら、料理は上流階級の趣味やらの言動で気づいたのです! やはりこのSF世界は天然食材にかなりの価値があると言うことに! つまり、天然食材をこの世界のネットショッピングやら、ネットオークションなりで売り払って元手を作ってしまおう、と」


「でも、売ったとして肝心の発送はどうするんだ? 商品売っても送れないと意味ないだろ」


 実際商品を送れないと詐欺になってしまう。


「SF世界なめちゃいけないよ、ご主人。今さらっとリファレンス確認したけど、この端末にも小規模ワープ装置がついてるみたいでね。商品を売り買いしたら即座に商品が届くようになってるみたいだよ」


「マジか。SF世界進んでるな」


「マジマジ。で、天然食材売り払って元手を作ったらさ、今度は玄武の出番だよ」


「玄武? 玄武のやつなんか金に対する特殊能力でも持ってるのか?」


 そう言うのは金行を司るお前の役目じゃねーの?


「違うよ、ご主人。玄武の前職はなんだった? 押しも押されぬ金融系大企業のCEOだよ。相場の操作はお手の物、だよ」


 そこまで言うと、俺も白虎の言いたいことが段々とわかってきた。


「つまり、この世界で相場荒らしをして金を稼ぐってことか?」


「その通り! これで、金稼ぎまくって宇宙船を買おう!」


「それが狙いか、お前」


 なんか、いきなり金を稼ぐとか、らしくないこと言うかと思ったら、宇宙船が欲しかったのか白虎の奴。

 まぁ、俺も正直なところ自分の宇宙船は欲しいと思ってたところだし否やはないのだが。


「だってー、せーっかくSF世界にいるのに宇宙船に乗らないとか機会の損失だよ。このままの流れでいくとこの惑星内だけで完結してしまいそうでさぁ。宇宙船とか一生縁がなさそうじゃん」


「まぁ、その気持ちは分かるが」


「でしょ! でしょ!? と言うわけで、レッツ金稼ぎ開始ー!」


 言うが早いが、白虎は端末を素早い速度で操作し出し、あっという間にショッピングサイトを作り、次々と商品情報をアップし始めた。


「まずは、小手調べに調味料関係がいいかな。塩……は流石に科学的にイオン交換膜で生産できるし、砂糖も人工甘味料がある、とすると植物由来の胡椒とかから始めるのがいいかな。あ、いやコーヒーなんてのも嗜好品の最たるものだよね、茶と合わせてこいつも出品しておくか」


 何やら呟きながら、次々と商品をリスト化していく。そこらへんの細かいことは俺では提案すらできないので、俺がやるべきことは白虎が提案した商品を次から次へとネットショピングから購入することだけである。


「よーしよし、どんどんクレジットが増えていくぞー」


 アップした商品にはすぐに反応があったのか、白虎が開設した口座にはどんどんとクレジットが溜まっていく。あ、この宇宙の通貨はクレジットと言うらしい。これもSFではお馴染みの通貨単位だよな。


 そして、次から次へ、調味料から始まり、嗜好品、肉や魚などの動物由来のなま物などを出品しては売っていく。しかし、これ元手完全ゼロで売り上げを増やしていってるのだが良いのだろうか? 自分の能力ながらちょっとチート過ぎでは? まぁ、そもそもこの能力を提案したのはアドミンの方なので俺が気にすることはないのかもしれないが。


「よーし、1000万クレジットでオーバー! 選手交代だ、玄武ー、出番だよー!」


 白虎がそういうと、霊体化して側にいた玄武が実体化する。


「1000万ですか。少々少ないですがレバレッジなど活用すればやってやれないことはないですな」


 ちなみに、取引の内容から推測するに、1クレジット=1円ぐらいの価値と思われる。つまり、元手は1000万円と言うことだ。俺からすれば1000万円の取引とかかなり大口と思うのだが、玄武的には少ないらしい。


 取り敢えず金を増やすのは玄武に任せるしかないだろう。俺は相場に関しては完全にど素人だし口を出してもロクなことにならない。


「しまった」


 しかし、そうやって玄武が端末を操作して気づいたことがある。


「ど、どうしたのさ、ご主人? 何がしまったの?」


 俺がそんな声をあげたので不安になったのか白虎が尋ねてくる。


「玄武が端末使ってたら俺が使えないじゃないか!」


「……使いたかったの?」


 ジト目で睨んでくる白虎。


「だって、S F世界の進んだタブレットだぜ? 一度ぐらいは使ってみたいと思うじゃないか」


「あーはいはい、それはまた後でね。いきなり叫ぶから何事かと不安になったじゃないか」


 白虎は「全く──」と呆れながら嘆息しだす始末。しょうがないだろ、せっかくの超未来の世界なんだ。その技術の一端に触れたいと思うのは不思議じゃないだろう。


「では、どうぞご主君」


 俺がそんなふうに思っていると不意にタブレットを操作してるはずの玄武から、タブレットが差し出される。


「あれ? 金稼ぎは?」


「ネットショッピングから新しいタブレットを買っただけですよ。その程度の資金の消費程度なら誤差ですので。と言うわけでどうぞ」


「やりぃ」


「玄武。あんまりご主人を甘やかさないで欲しいな」


 俺がタブレットを受け取ると、白虎が半眼で玄武を睨む。別にいいだろこれぐらい。


「そうは言ってもお前も興味あるんじゃないのか?」


「そ、それは否定しないけど……」


 白虎自身オタクなので、こういう端末に興味があるのは当然だろう。さっきまで散々いじってたくせにとは思うが、仕事でいじるのと、趣味でいじるのは違うということだろう。

 俺と白虎はしばらくタブレットをいじっていたが、そうなると暇を潰せるのが俺と白虎だけになってしまう。青龍はともかく桜を放っておくのはまずかろう。


 そう言うわけで、しばらくは青龍、白虎、桜の4人でトランプでもして暇潰しをすることにする。ゲーム内容はローカルルールが死ぬほど多いことで有名な大富豪だ。場所によっては大貧民とも言うらしいがまぁそんなゲームだ。


「玄武ー? 調子はどうー?」


 何ゲーム目か覚えてないか、何回か大富豪を楽しんだあと、おもむろに白虎が玄武に話しかける。


「今、10億を超えたところですな。宇宙船を買うだけなら十分な資金ですが、まだまだ増やせますので、時間ギリギリまで粘らせていただきますよ」


 何ゲーム目かは忘れたとは言ったが、30分ぐらいしか経ってないと思うんだが、その短い時間で100倍にまで増やせる物なのか? 相場師とは恐ろしいな。


 最終的に、ローゼンが俺らを呼びにくるまでの間、玄武は100億クレジットまで荒稼ぎし、桜や俺を驚愕させた。

 なお、ローゼンが入る直前に玄武は霊体化して姿を消したので、ローゼンに玄武の存在はバレてない。

 まぁ、いきなり人が増えたら説明が面倒なことこの上ないからな。俺らのパーティーは4人であると思わせておいた方がいい。


「待たせたね。こっちは尋問が終わったよ」


 ローゼンは部屋に入るなり、そう言って椅子に腰掛ける。尋問の内容は少し気になるが、俺たちに教えてくれるような内容でもないだろう。

 それに──、


「さて、それじゃ次はあんたらの番だね。協力関係にある以上あまり詮索するつもりはないが、それでも最低限は知っておきたいことはある」


 次は俺たちへの尋問の番だろうからな。


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