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3.フードカートリッジ

「さぁ、ついたよ。ここがあたいらのアジトだ」


 そう言って案内されたのは、街らしき場所の中の路地裏の一角だった。

ここに来るまで、やたらめったら曲がったり直進したり迷路みたいな道筋だったので、道順ははっきり言って覚えてない。アジトへの道を分かりにくくするためにわざと遠回りしている可能性もある。

 だが、多分青龍か白虎が覚えてくれてると思うので、道が分からなくても俺自身は問題ないだろうと思ってる。


 しかし、それより問題なのは道中でローゼンの部下たちから無言の威圧を喰らってる点だろう。一応互いに自己紹介はしたのだが、頭であるローゼンと違って、こっちをバリバリに警戒しているため居心地が悪いったらありゃしない。まぁ、これぐらいの警戒はむしろ当然と言えば当然なのだが。頭であるローゼンの方が異端まである。


「随分分かりにくい所にあるんだな」


「そりゃ、秘密のアジトだしね。しかも、ここも本部ってわけじゃない。流石にさっきの今で本部に連れて行くほど、あたいらも平和ボケしてないよ」


「そりゃその通りで」


「で、話し合いと行きたいけど、まずは腹ごしらえと行こうか。腹が減っては戦ができぬと言うしね、そもそも衣食住を提供すると言うのがあたいらがだした条件だ。まずはそれを果たさせてもらうとしよう」


 ローゼンがそういうと、周りの部下が食事を用意し出す。


 ……が、これはなんだ? 棒状の、プラスチック? 見た目的にはポストアポカリプス世界で見かけたヘルスバーみたいな奴だが。あ、違うか、プラスチックは外装で中身に何か入ってるのか。


「食事……? これが?」


 横で桜が愕然と呟く。うん、俺も同じ意見だ。味までヘルスバーと同じとか言わないだろうな? いや、俺はヘルスバー食べてないからそのまずさを知らんのだが。


「冗談、ではないんだよな。これが本当にお前らが食べてるのと同じ食事なんだよな」


「なんだい、フードカートリッジを見たことないのかい? 一体どこの星系の出身だって言うんだ。こんなのどこでも使ってるだろうに」


 ローゼンはそういうと、フードカートリッジの一つを手に取ると、そのまま中身を押し出して食べ始める。

 なるほど、SF世界ここに極まれりだな。食事も完全に効率重視になってるわけか。こりゃ、白虎が言ってた通り天然食材に価値が出てきそうだ。


「ま、まぁ取り敢えず食べてみるか。何事もやってみないとな」


「勇人様、その前にまず私が毒見を」


 青龍がそう言って俺からフードカートリッジを奪い取ると、中身を食べ始める。お前、毒入っててもそれ分かるのか? 全部分解されそうな気がするんだが。


「おいおい、毒なんて入っちゃいないよ。信用されてないねぇ」


「気に障ったのならば謝罪を。しかし、主人が危険に会う可能性を極限までゼロにするのが私の仕事ですので。……毒は入ってないようですね。勇人様、どうぞ」


 そう言って、食べかけのフードカートリッジを俺に差し出す青龍。食べかけ、食べかけかぁ。間接キスとか言う気はないが、ちょっと遠慮したいなぁ。とはいえ、俺のためを思ってやってくれてることなので、拒否するのも難しい。


「それ、間接……」


 桜が文句を言いたそうだが、無視してフードカートリッジを口にする。

 味は……、うんなんだこれ。美味くもなく不味くもなく、平均的な味と言うのがあればまさしくそれに相応しい味だろう。100点満点中50点。ABCDE評価でCランク。そんな感じの味だ。ありていに言って微妙と言わざるを得ない。


 俺が食い始めたのを見て、桜もフードカートリッジを口にする。


「微妙……」


 どうやら桜も同じ感想らしく、周りに聞こえないようにボソッと呟く。


「うん、恐ろしく普通! これだったら、私らで料理した方が確実に美味いわ」


 そして、白虎は空気を読まず大声でいってのける。おいおい、こっちは食事を提供されてる側なんだから、あんまり相手に対して失礼なことを言うんじゃないよ。


「料理なんて、上流階級の趣味じゃないか。あんたら本当に一体何者なんだ?」


 料理まで廃れてるのかSF世界。上流階級の趣味って、そりゃお前。

ここで、俺らが料理を披露したらどうなるんだろうか? まぁ、向こうとの契約内容が衣食住を提供すること、だから、こっちからご馳走してやる義理も義務もないのだが、少し興味はある。


「どこにでもいる庶民だよ。で、食事と住環境は提供してくれたようだが、これからどうするんだ? 早速総督府にカチコミに行くのか? こっちの準備はいつでもできてるぞ?」


「まぁ、慌てなさんな。まずは、取っ捕まえた奴らの尋問からだ。あそこに陣取ってたってことは、あたいらがあそこを通るって情報が漏れてた可能性が高い。そこをちゃんと解決しとかないと、総督府に攻め入る前に情報が漏れて計画がご破産だ」


「なるほどな」


「と言うわけで、こっちの尋問が終わるまで自由にしてていいよ。このアジトから出ない限りは好きにしていい。端末も欲しければ貸し出すから、本を読むなりムービーを鑑賞するなり好きにすればいい」


「なるほど、じゃあ端末とやらを貸してもらおうかな」


「あいよ、後でカレンから受け取ってくれ。じゃ、あたいはこれから尋問に入るから。尋問が終わったら知らせるよ」


 そう言って、ローゼンは部屋を後にする。端末はすぐに届き、他の隊員も部屋を後にし、残ったのは俺たちだけになった。


「さて、何をするかな」


 俺は目の前にある端末を眺めながらそう呟いた。

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