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1.待ち伏せ

 寝て起きるとそこは荒野だった。なんか詩的な表現だが実際にそうなのだから仕方ない。前と違って何もない荒野というとわけもなく、すぐ近くには丘陵と言っていいような山がある、と言っても高さはそれほどでもなく、歩いて越えれるレベルの丘陵だが。

 周りに人目がないのを確認し、青龍や桜たちを呼び寄せる。程なくして全員揃うと軽く周りを探索し始める。


「また、荒野? ていうか、今回はどんな世界か分からないの?」


「あぁ、桜には言ってなかったな。今回は超能力ありのSF世界らしいぞ」


「SFかー。じゃあ、まずは宇宙船手に入れるところから?」


「そもそもこの惑星だけで完結するかも知れないぞ。そこら辺は出たとこ勝負だな」


「ていうか、SF世界って考えると、こうやって呼吸できてるのは奇跡みたいなもんよね……。宇宙服が必要な場所ってこともありえるし」


「さ、流石にアドミンもいきなり死ぬような場所には転移させないだろ……。多分」


「多分ってのが不安なんだけど」


「勇人様、軽く偵察してきましたが、どうやらあの丘陵の向こう側に複数人の人の気配があります」


 桜と話してると、青龍が偵察から戻ってきた。丘陵の向こう側に人が複数人か。


「それって例の如く争ってるような状態とか?」


「いえ、そのような感じではありませんね。建物のようでもないのに、一箇所から動かないので、おそらくは誰かを待ち伏せしているのかと思われますが」


「待ち伏せねぇ……、いきなり厄介ごとの予感しかしないんだが」


「反対側も軽く見てきたけど、すぐの距離には何もないね。動きが欲しかったら丘陵を越えて、待ち伏せしてる奴らと接触するところだけど」


 白虎も偵察から戻ってきて、そんな提案をしてくる。


「うーむ。虎穴にいらずんばと言うし、その待ち伏せしてる連中と接触してみるか」


「大丈夫なの?」


「なぁに、こっちに敵対意思はないんだ。ただ声を掛けるだけなら問題ないだろ」


 桜が心配そうにするが、俺はどこまでも楽観的だった。実際、待ち伏せをしてるとしたらその待ち伏せの対象は確実に俺らではないというのもある。

 何より、この世界の情報が欲しいので、一番手軽に情報が得られそうな相手から情報を得ようと考えるのは間違っていないだろう。


「じゃ、行くぞー」


 俺が号令をかけると、青龍、白虎、桜、俺で連れ立って歩く。丘陵のてっぺんにたどり着くと、あたりをぐるりと見渡す。まず目につくのが、広がる荒野に点在する、大きな岩だ。人が簡単に隠れられそうな岩があちこちにある。

 うん、これこの岩に人が隠れて待ち伏せてるな。気配などわからない俺だが、事前情報があるので容易に看破できる。とりあえず、何も知らないていで近づいてみるか。


「そこに誰かいるのか? ちょっと尋ねたいことがあるんだが……」


「撃て」


 俺が質問をしようとしたら、向こうから返ってきたのは明確な敵意だった。

 そして、岩の影から人が出てくると、銃のようなものを構えて撃ってきた。


「勇人様! 『マジックシールド』!」


 相手が銃を構えたのを見るや否や、俺と銃の射線上に青龍が割り込み、魔法の盾を展開する。構えた銃からは、レーザーのようなものが出てきて、青龍が展開した魔法の盾に防がれ消失する。


「ちょ、ちょっと待ってくれ! 俺たちは怪しいものじゃない、ただ聞きたいことがあるだけで……」


「くっ! サイコシールドか! ここまで高出力のシールドを展開するとは、やはり情報は正しかったか! おい、ESPジャマーを展開しろ!」


 俺はただここを通りかがっただけの人間を装うが、向こうは全く聞く耳持たず、次の行動にでる。く、くそっ、やるしかないのか!


「勇人、戸惑ってる場合じゃないわよ! 向こうからやってきたんだから、お返しよ」


「し、しかしだな!」


 桜はやる気満々で前に出て剣を抜き放つ。片手だけで剣をもち、片手で魔法をいつでも唱えれる状態だ。

 俺が戸惑ってる間にも、俺以外は戦闘体制が完了し、いつでも戦いを始めれる状態になっていた。

 そして、向こうさんは岩の向こう側から、何か怪しい機械を出してきた。なんというか、台車にパラボラアンテナをつけただけという感じの簡素な機械だ。あれで何をする気なのだろうか。


「ESPジャマー展開しろ!」


「了解! ESPジャマー展開!」


 パラボラアンテナを引いてきた人間が、そこにあるであろうスイッチらしきものを押す。ブーン、と低い音が辺りにする。

 俺ら全員でそれに対して警戒をするが、ただ音が鳴っているだけである。しばらく様子を見るが、音が鳴ってる以外の特に変わった様子はない。

 いや、とぼけるのはやめよう。向こうがESPジャマーと言った以上、あれは超能力を抑制する機械か何かなのだろう。だが、こちらは超能力を使えるようなやつは誰もいない。ただの、無駄行動になるわけだが──、


「ふっ!」


 青龍は一息吐くと、一足飛びに敵との間を詰める。そして、命令を下していた指揮官らしき相手に槍の石突で鳩尾に一撃を加える。


「グボっ!」


「ば、馬鹿な! テレポートだと!? ESPジャマーは作動しているはずだ! 不良品か、くそっ!」


 いや、確かに肉眼で見えない速度だけど、それ一応超高速で動いてるだけだから。テレポートなんて使ってないから。


「く、くそっ!」


 青龍にESPジャマーが効かないと理解したのか、岩の向こう側から次々と人が出てきて、一斉に青龍に対して銃らしきものを向けてくる。また、レーザーを撃つ気か。だが、青龍がそんなもので止められるはずもない。さっきは、俺が狙われてたから防御壁を展開しただけで、青龍個人だけなら、銃口の先を見るだけで簡単に避けることができる。


「ぎゃっ!」


 あ、避けられて同士討ちが発生してる。囲んで撃つからそうなる。そして、俺がまごまごしている間に、あっという間に青龍が敵集団を全員昏倒させてしまっていた。


「あーあ、やっちゃってからに」


「お叱りは如何様にも。しかし、勇人様に銃口を向けられた以上黙ってはいられませんでした」


「うわー、相変わらず青龍さん鬼のように強いわね。しかも、全員殺してないんでしょ。あたしにゃできないわ」


 桜は手持ち無沙汰になった剣をぷらぷらさせるとそのまま納刀する。


「で、どうする? こっちに敵対してきた以上遠慮はいらないとは思うが」


「それを決めるのはご主人でしょ。どうしたいの?」


 俺がみんなに尋ねると、白虎に投げ返された。うーん、そう言われるとどうするか。


「メモリーリードはあんまり万能な魔法じゃないからなぁー。できれば普通に尋問したい。センスライぐらいはかけておくけど。でも、どんな尋問するよ? 尋問に必要な基礎知識すらない状態だぞ?」


「まずはなぜ襲ったかぐらいは聞いていいんじゃない?」


「まずはそこからか、青龍ふん縛ってから、適当に誰か起こしてくれ」


「わかりました。『ライトニング・バインド』。ふんっ!」


 青龍は電撃の檻で適当なやつを拘束すると、喝を入れて起こす。


「ぐっ……。な、なんだこれ──、ギャアアア!!」


 起きて早々腕を動かそうとして、そいつを囲ってる電撃の檻に触れて絶叫をあげる男。この拘束って、物理的に拘束するわけじゃなくて、拘束から逃れようとするとダメージを与える系統だから、自主的に拘束状態にさせる魔法なんだよな。

 電撃によって、皮膚が焼ける嫌な匂いが辺りに広がる。桜も顔を顰めているが、とりあえず尋問を開始することにする。


「その檻は、お前が動こうとしなければ無害な物だ。もう一度先ほどの電撃をくらいたいというならいくらでも抵抗するといいがな。まずは、『センスライ』。さて、なぜ俺たちを襲った? 俺たちはお前らのことなど知らないし、襲われる心当たりもない。理由を聞こうか」


「ふん。聞きたければ、接触テレパスでも何でもすればいいだろう。お前たちエスパーの得意技だろう」


「えい」


「ぎゃあああ!!」


 反抗的な態度をとられたので、思わず軽く蹴りで小突いた俺は悪くないだろう。単純にその場にこけるだけの勢いだし。その結果電撃の檻に触れて、こいつが悲鳴をあげることになったとしても俺は悪くない。


「もう一度聞くぞ。なぜ、俺たちを襲った」


「き、貴様らが宇宙連邦に歯向かうテロリストだからだ! 貴様らがここを通るという情報を得て、ここで待ち伏せしていただけだ!」


「テロリストねぇ……」


 センスライが反応してない以上、嘘ではないようだ。ただ、この魔法は嘘を判別することはできるが、真贋を判別することはできない。この男が、心の底からそう思い込んでるだけで、真実は違うという場合もあるのだ。そういう意味ではこの魔法に頼り切るのは危険なのだが。


「じゃ、次の質問。宇宙連邦とはなんだ?」


「? 何を言っている? 宇宙連邦は宇宙連邦だろう」


 うん、聞き方が悪かったな。こういう聞き方したらこう帰ってくるのは当然だったわ。


「聞き方が悪かったな。宇宙連邦とはどういう組織だ」


「宇宙を支配する組織だ……。それ以上何を答えろというのだ」


 いくらなんでも答えがザックリしすぎじゃね? こいつ下っ端すぎて自分の所属する組織について知らないとか? いや、いくらなんでもそれはないと思いたいのだが。

 しかし、ここからさらにいろんな質問をしてみるが、俺の質問の仕方が悪いのか、相手に知識がないのか、要領を得ない回答ばかりだった。


「うーむ」


 満足な回答が得られないことに俺が悩んでいると、青龍がこっそりとこちらに耳打ちしてくる。


「勇人様、こちらに近づいてくる人の気配があります。近くに1、離れたところに10ほどの気配があります」


「何かの集団が来てて、その中の誰かが、偵察にきてるって感じか?」


「おそらくは。どうされます?」


「とりあえず、最後の質問をしておくわ」


 俺はそうって拘束してる男に振り返ると、質問をする。


「最後の質問だ。お前たちが襲おうとした相手の名前はなんだ?」


「なんだ、さっきからなんの質問だ。お前たちの名は──」


「明けの明星さ。あたいたちの名前はね」


 そう言って丘陵のてっぺんに一人の女が現れる。そこにいたのは、銃らしきものを下げて、ラフな格好をした野性的な雰囲気のある女性であった。

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