0.謎の予知
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『…………私の、負けだ』
『自己紹介と行こうか。俺は真宮寺勇人だ』
まただ。またこの予知を見る。最近はずっとこればかり見る。
エスパーとして予知をみることはそれなりにあるが、このように同じ予知ばかり見続けるのは今まで例がない。
しかも、その見てる予知というのが私が負けるという予知だ。二つ目の予知で自己紹介をしてくる、真宮寺勇人というモンゴロイドの男にだ。
そもそも、負けた相手に自己紹介をされるというのはどういう状況なのか全くもって意味不明だが、予知とはえてしてそういうものなので、そこを気にしてはいけない。
あと自慢ではないが、私は最強のサイキッカーと呼ばれるほどの凄腕のサイキッカーだ。その私が負ける? それこそ想像ができない。予知で見える、真宮寺勇人という男がそんなに強そうに見えないことも、その予知にさらに疑問を抱かせる一助となっている。
「取り敢えず、調べるか……」
取り敢えず、疑問を氷解させるために端末に向かい色々と調べ始める。まずは真宮寺勇人という男についてだが、まずは銀河ネットワークで凄腕のエスパー達を調べるが、該当者はいなかった。確かに、非エスパーであっても実力者はいるが、私が非エスパー程度に負けるとはどうしても思えない。謎は深まるばかりだ。
次に調べたのは、予知にいた真宮寺勇人の取り巻き達だ、名前は分からなかったが顔はわかるので、画像検索で調べることにする。女3人に老人が一人。かなり目立つ容姿をしているので、調べればすぐにわかるだろう。だがこちらもハズレ。該当者は一人としていなかった。
「本人は凄腕のエスパーではない……、取り巻きも同じく。取り巻きが強いパターンかと思ったがそうでもない。一体誰なんだコイツらは?」
次に調べたのは予知で見た光景だ。例の二つの予知以外にも細々と予知を見ていたので、私がどういう状況で奴らと相対するのかはすぐに分かった。
「ここは……、惑星ズールの総督府か。これはまた随分と辺境だな」
まぁ、私のホームの惑星もどちらかというと辺境なのであまり人のことは言えないのだが。
そして、惑星ズールについて調べていると最近宇宙連邦に編入された植民星であり、レジスタンス活動が活発であるという情報が手に入る。
他の予知や、惑星ズールの状況を考えると、これはレジスタンス側か、総督側かのどちらかに立って戦うことで、この真宮寺勇人とやらと戦えるということなのだろう。
「なら、総督側だな」
ほぼノータイムでその考えに至る。レジスタンス側に接触するのは難易度が高いというのもあるが、そもそもレジスタンス側では、ろくに報酬がもらえそうにないというのがある。総督側ならば、宇宙連邦内での活動となるので、報酬も期待できるだろうという考えだ。同じ戦闘になるなら、報酬が高い方に行くのは当然の帰結だ。
すぐさま、銀河ネットワークを介し、惑星ズール総督府に連絡を取る。どうやら向こうも、凄腕のエスパーを欲していたらしく、二つ返事で総督の護衛の依頼を取ることができた。こういう時私の名声は便利だ。
「さて、行くとするか、惑星ズールへ。真宮寺勇人……、本当に私を負かしてくれる男なのか。お手並み拝見といこうじゃないか」
そう言って私は暗い笑顔を浮かべる。期待半分恐怖半分。本当に私を負かしてくれるなら、私の運命、やつに委ねてもいいかもしれない。