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4.四神玄武

「お初にお目にかかります、真宮寺勇人殿。北方を守護し、黒・水行の属性をもち、冬を司りし霊獣、玄武と申します」


 被っていた帽子を取りながら、そう挨拶する玄武は見た目は品の良さそうな普通のお爺ちゃんだった。髭を蓄えた、白髪のどこにでもいそうなお爺ちゃんだ。街中ですれ違っても特に意識にも留めない──いやそれは言い過ぎか、おそらく白人と思われる容姿をしてるので外国人珍しさに振り返るぐらいはするだろう。だが、その程度の特徴しかない。白人文化圏にいた場合、全く気にも留められない容姿だろう。


「ていうか、中国の霊獣なのに見た目白人なんだな……」


「はっはっは。アメリカで活動する場合白人だと何かと有利ですからな。人種差別を言う気は毛頭ありませぬが、容姿を自由に変えられるのなら少しでも有利な容姿で行きたいというのが道理ですので」


 アメリカ。アメリカと申したかこの霊獣。白虎も青龍もそうだが、なんで外国でばっかり活動しているのか。白虎はオタクだから、クールジャパンに触れたいというのは分かるが、青龍とこの玄武はなぜ中国にいないのか。中国人が泣くぞ。


「正直なこと言うと、現状俺の戦力は足りてる。貴方の力を無理して借りようとは思っていない。そこは理解しているか?」


「えぇ、えぇ。そこは白虎から聞きましたので十分理解していますとも。むしろ、今回のことは私からお願いしたいことなのです。ご主君には迷惑はかけませぬ。適当な時に呼んでもらって適当な時に私を頼ってくれれば良いのです」


「なんでまた、そうまでして俺の従者になりたいんだ?」


「いやいや、やはり異世界転生というのはある種憧れですからな。地球ではない、地裏でもない全く新たなフロンティア。これに心躍るようでなければ、企業の主とは言えませぬ」


 こいつもか。こいつも白虎の同類か。いや、異世界転移に憧れを持つ気持ちは分からんでもないが、見た目お爺さんの玄武がそれ言うと違和感がすごい。というか、今さらっと情報出てきたな。企業の主ってことは、玄武実は社長業してるってことか?


「企業の主ってことは、社長さんなのか? 社長が会社ほっぽって異世界に旅立って大丈夫なのか?」


「いやいや、社長はすでに引退して、今は会長職を勤めてるだけのしがないジジイですよ。大した会社でもないので忘れてくだされ」


「いやいや、嘘つくなよ玄武。お前の会社が大した会社じゃなかったら、世界の9割の企業が大したことない会社になっちゃうよ」


 玄武が謙遜していると、白虎が横からツッコミを入れる。白虎の言い分からすると割とでかい企業っぽいが。


「ご主人、代わりに教えといてやるよ。こいつの持ってた会社はシルバーマン・サックス。押しも押されぬ金融系大企業だ」


「ぶっ! 俺でも知ってるアメリカの大企業じゃねーか!」


 いきなり出てきたビックネームに、お茶も飲んでないのに吹き出してしまう俺。それの会長職とか、ビッグネームとかそんなレベルじゃない。世界の金融を支配してる金融王と言っても過言ではない。ていうか、そんな大企業の会長が人外ってそれいいのか、と思わなくもないが。


「あれは私の趣味で経営しているだけですのでな。引き継ぎも済んでおりますし、私がいなくても会社は回るようにすでに調整済みです。ご主君が心配することは何もありませぬよ」


 趣味で経営される大企業とか、それどうなん、と思うが。まぁ、俺には一生関わり合いのない世界の話だ、忘れるのがいいだろう。うん、それがいい。


「ていうか、さっきからご主君って俺のこと呼んでるけど。そう言うことでいいんだよな? 従属契約でいいんだよな? いや、従属以外の契約ってやったことないから知らないんだけどさ」


「えぇ、構いませんとも。こう言っては失礼かもしれませんが、ご主君の寿命は精々80年。それぐらいの短い期間ならば従属しても問題はありませぬよ。白虎から貴方様の人となりは聞いておりますからな。そうひどい命令もされないと言うのも分かっております。一時の従属契約で異世界に行けるなら、十分すぎる等価交換になります」


 精々80年ってすごい時間感覚だな。まぁ、おそらくは紀元前から生きてきたんだろうから、それに比べたら80年なんてあっという間なのかもしれんが。


「あぁ、あと私は青龍や白虎と違い常に連れ歩く必要はございませぬ。と言うよりも、私のようなジジイが一緒に旅をしてるとなると不自然になりましょう。先ほども言ったように、適当な時に召喚して適当な時に使っていただければそれだけで構いませぬ」


 玄武は常時召喚は希望しないようだ。まぁ、確かに青龍と白虎はまだ旅仲間として許容できる容姿をしているが、玄武は完全に見た目がお爺ちゃんだからな。そんなお爺ちゃんを徒歩で連れ歩くとなると不自然極まりない。

 俺としては渡りに船の提案なのだが、


「それでいいのか? 異世界を存分に楽しむんなら、付いてきた方がいいと思うんだが」


「この姿は割と気にいってますのでな。この姿を辞めるか、と言うことになるとやはりこの姿を取りたいが勝ちますので。まぁ、ご心配せずとも霊体化して後をついていきますので、それだけで十分ですよ。見るだけでも楽しいものです」


 そんなものなのか。まぁ、俺としても見た目お爺ちゃんの玄武を連れ回すのは老人虐待な感じがして気は進まない。


「分かった。それじゃ契約をしようか」


 俺がそう言うと、青龍はすぐに動き、俺の指先をちょこっと切ると血を玄武に与える。すまんな、まだ自分で指切るの出来ないんだわ。


「うむ、これにて契約完了にございます。では、ご主君これよりお願い申し上げる」


 そう言って、玄武は深々と礼をする。うーん、礼儀正しい。白虎がそうでもないのがあったから余計にそう感じる。

 しかし、これでまた召喚獣が一体増えたな。また、召喚配分に苦労しそうだ。これ以上増えないことを願う。


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