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2.新たなる四神

 いつものように覚醒し、いつもの天井を見る俺。例のポストアポカリプス世界から帰ってきたことを確認すると、枕元の置き時計を見る。

 日付は、8月31日。夏休み最後の日だ。俺はサッと目を覚ますと、ポストアポカリプス世界に置き去りにしてきた桜を迎えに行き、家まで送り届け、青龍たちを召喚すると、朝食の支度に入る。

 最近は、青龍たちも手伝ってくれるので早くに終わり朝食に入る。


「「「いただきます」」」


 3人揃って朝食を開始する。しかし、こいつらって食事は娯楽でしかないんだよな。生命維持に必要ないのなら、遠慮して欲しいところなのだが、朝食の金は俺が出してるわけじゃなく、姉ちゃんの稼ぎから出てる。その姉ちゃんが文句言ってない以上俺から何か言えるわけもなく、一緒に食事を取ることにしている。


「うーん、ご主人の作る食事は美味しいねぇー」


「別に普通だろ?」


「分かってないなぁ。他人に作ってもらう食事ほど美味しいものはないよ。私ずっと一人暮らしだったからさぁ。あと食事って基本的に必要ないから食わず飲まずで過ごしてたことも多かったからさ、こうやって文化的な食事を取れるってのはいいもんだよ」


「まぁ、俺としては生命維持に必要ないなら食事は遠慮してもらいたいところなのだが……」


「そんな無体なこと言わないでよ。ご主人だって自分の趣味禁止されたら精神的に辛いでしょ? 私らは精神生命体だから、精神的に充足することは力の維持に大切なことなんだよ」


「そんなもんなのか」


「そんなもんだよ」


 白虎とそんな話をしながら朝食を終える俺たち。片付けが終わると白虎はダラダラモードに入り、俺は青龍と連れ立って特訓に入るのだが、今日はいつもと違い白虎が俺に話しかけてくる。


「あ、そういえば思い出したんだけどさ。今回はどんなチート能力もらったのさ」


「チート能力か? スキル鑑定ってやつをもらったな。なんか、通常の鑑定能力はダメらしい」


「鑑定能力かー、それも異世界転移の定番能力だよねー。でも、スキル鑑定とはまた限定的な。ちょっと私にやって見せてよ」


「あ、すまん。アドミンから従者たちにスキル鑑定すると脳が焼き切れるから慣れないうちはするなって言われてるんだ」


「脳が焼き切れるって何それ怖い」


「アドミン曰く、スキルが多すぎるとそうなるらしい」


「ふーん。まぁ、それなら仕方ないか。私が客観的にどれくらいのスキル持ってるのか知りたかったんだけど」


prrrrrrrr


 不意に、スマホの着信音が辺りに鳴り出す。なんだ、この着信音。俺のじゃないぞ?

 視線を青龍と白虎に向けると、白虎がポケットからスマホを取り出す。


「お前のかよ」


「あ、もしもし私ー。急にどうしたの? え? 今空港? ていうか、行動早くない、会社の方は大丈夫なの? そっか、それじゃ迎えにいくね。ちょっと時間かかるだろうけど、適当に暇つぶしててよ。うん、それじゃーねー」


 会話内容からすると、白虎の友達か何かが飛行機に乗ってこの近辺に来たと言う感じだろうか。まぁ、こいつ同人サークル運営してるから、顔も広いんだろう。とりあえず、俺はいつものように青龍と特訓でもしておくか。そう思ったのだが、その前に白虎に話しかけられる。


「あ、ご主人。今から玄武の奴を迎えに行くから今日は出かけずに家にいてね」


「は? 今何つった?」


 思わず聞き返してしまった俺は悪くないだろう。玄武ってアレだろ? 四神の一柱で亀の霊獣の。


「だから、玄武の奴を迎えに行くって。前々から打診してたんだけど、あいつ人間社会で結構地位があるからね。仕事放り出すわけにもいかなくて、今日になったんだよ」


「いや、そもそもの話としてなんで打診したんだよ。俺これ以上戦力が必要とか言った覚えないんだが?」


 玄武がくれば、あと朱雀さえ来れば四神コンプリートだが、そもそも四神をコンプリートするつもりなどさらさらなく、戦力的な面でも白虎と青龍だけで十分だったのだが。


「いや、私としては世間話のつもりで、今人間の従者になってるって言ったら、向こうが興味持っちゃってさ。だったら、玄武も来たらどう? って提案したら向こうもすごい乗り気でさ、向こうさんご主人と契約する気まんまんなのさ」


「次からはそう言うのはちゃんと相談してくれよ……。ただでさえ、他の召喚獣たちの扱いに困ってるんだから、これ以上考えなく増やしてくれるな」


「ごめんごめん、次からは気をつけるよ」


「一応聞いておくが、まさか朱雀にも打診してたりしないだろうな」


「それは絶対にない」


 俺が朱雀について聞くと、急に真顔になり強く否定する白虎。


「あいつは百害あって一利なしだよ。あいつに対してこっちから打診するなんてありえないしあってはならないよ。ま、そもそもの話としてあいつの連絡先知らないけどね」


「そこまで強く否定されると、朱雀のことが気になるな。どんな奴なんだ? 俺が汚れるだとか、得難い経験を喜ぶような奴だとは聞いているが」


「その通りの奴だよ。属性で表現するとするなら、あいつは間違いなくイビル・カオスって感じの属性の持ち主さ。悪・混沌って言い換えてもいいね」


「四聖獣なのにか?」


「別に聖獣だからって、みんながグッド・ロウな訳ではありませんよ。私だって、属性で表現するなら、イビル・ニュートラルになりますし」


 青龍が横合いからそう告げる。青龍がイビル? 俺への態度とか見るにとてもそうは思えないが。でも、よく考えたら俺以外には徹底的に冷たいし、俺への忠義っていう利己でもって行動してるから、そういうことになるのか。


「まぁ、だからこそグッド・ニュートラルなご主人と噛み合ってるのが不思議なんだけどね。私自身はグッド・カオスになるかな。自分で言うのもなんだけど基本は善人だよ」


「ほんと自分で言うことじゃないよな」


「話がそれたね。今は朱雀の話だ。朱雀のやつの基本的な行動理念は『未体験のイベントを経験したい』だ。『戦争に参加して英雄になりたい』なんて善側の経験をしたがったかと思えば、『圧政によって民衆を搾取したい』なんて経験をやりがったりもする。はたまた『いじめられる側を経験したい』なんてことも言ったりもする。その時々によって善だったり悪だったりコロコロ立ち位置が変わるやつだから、とにかく信用が置けない奴だ」


「何それ怖い」


「今やってることが善側の行為だったらいいんだが、いつそれが悪側に傾くかわからない。大人しく誰かの下につく性格でもないし──、いや『誰かの従者になりたい』って経験ができるからしてくれるかもしれないが、それもしばらく経験したらすぐに離れるだろう。ともかく、あいつはとんでもなく危険な存在なんだ。戦闘を与えてたら言うことを聞く、トウコツの方がまだ御し易いよ」


「『異世界を旅する』ってのは絶対に得られない経験だから、それ与えたら仲間になってくれそうだけどな。ずっと与え続けれる案件だし」


 俺がそう言うと、青龍と白虎が揃ってめちゃくちゃ嫌そうな顔をする。そんなに嫌いかお前ら。


「え、まじで仲間にするつもりなん? ご主人。私は絶対反対だよ」


「右に同じです。朱雀など仲間にしても百害あって一利なし。いくら勇人様の望みであったとしても、それだけは断固反対させてもらいます」


 いやまぁ俺としてもそこまで仲間にしたいってわけじゃないからな。青龍と白虎だけでも戦力は十分足りてるし。この上玄武まで加わるんだから戦力はオーバー気味だ。


「分かった分かった。二人がここまで反対するなら仲間にするのはやめておくよ」


「うん、それがいいよ。じゃ、私は玄武を迎えに行ってくるから家にいといてね」


 そう言って、白虎は出かける準備を始めるが、俺はそこで気になったことがあったので白虎に聞くことにする。


「ていうか、お前ら地球だったら、『そこにいる』ことが出来るんだろ? わざわざ交通機関使ってえっちらおっちらいかなくても、『そこにいる』ようにすればいいんじゃないのか?」


「いや、出来るけどさ。それ使ったら空港まで一瞬だけどさ。いきなり虚空から人が出てきてそれを目撃されちゃったらどうするのさ」


「あ、そうか」


 言われてみればその通りだ。『そこにいる』ようにしても転移先に人がいたら、目撃された時それを誤魔化せない。便利なようで不便なんだな。


「ま、緊急事態ってなるとそんなこと考えてられないから使うけど、そうじゃないなら私らだって普通に公共交通機関使うよ。んじゃ、行ってくるねー」


「では、勇人様。いつものように特訓を始めましょうか」


「あ、ああ……」


 白虎が出ていくと、逃がさんとばかりに俺の前に立ち塞がる青龍。

 特訓という名のリンチが始まる。


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