17.フィールド発生装置
「んー、この部屋にはないっと……。もっと走査してー……。うん、地下に空間があるね。地下室好きだなーこの浮島」
白虎が床に手をついてから1分ほどの短時間で走査を完了し、地下室の存在を探り当てた。
「地下室? でも、1階にそれらしい場所はなかった気がするが」
「ま、調べてみればわかるさ。じゃ、お先ー」
言うが早いが、白虎は部屋から出ると塔の吹き抜けをそのまま自由落下する。魔法で落下速度軽減できるからって、思い切ったことするなぁ。
「こっちは、地道に階段下るか……」
同じようなことはできるが、この人数だとかけるのが間に合わないかもしれないので、地道に階段を下ることにする。
階段を降りきって、1階にたどり着くと、白虎は地面に耳をつけてコンコンとあちこちを叩いていた。
「うん、ここだ。ここに空洞がある。よく見ると床板が外れそうな線も見える。多分どっかに仕掛けがあるんだろう。だが、ここは『アンロック』!」
ダンジョン探索のセオリーをぶっちぎって、いきなり開錠魔法で仕掛けをとこうとする白虎。いや、確かにそれが早いかもしれんが、風情がないぞ……。
俺がそんなことを思っていると、ガコッと音がして、床板がずれで地下への階段が出現する。
「よしよし、こっちは物理的な仕掛けだからアンロックが有効だね。じゃ、早速地下へとGO!」
言うが早いが、先頭に立って階段の先へと消えていく白虎。慌ててそれを追う俺たち。おい、ちゃんと陣形組んでくれよ。隠し部屋だから何もないかと思ってるのかもしれんが、それでも備えはちゃんとしておくべきだ。
まぁ、白虎の実力なら多少の障害があっても強引に突破はできるのだが。
っと、そんなことを思ってる場合じゃないな、早くあとを追わないと。
地下への階段は礼拝堂の時と同じようにかなり狭く、人一人がようやく通れるぐらいの広さしかなく、降りるのに難儀するような階段だった。
狭い階段を降りきった先にあるのは、使い道がわからない巨大な装置だった。エコボックスよりもデカく、クローン発生装置よりもデカく、地下室一杯一杯に占有してるどデカイ装置だった。
「で、これが障壁発生装置かい?」
白虎が何かいいたそうな目で俺の方を見ながらそう言う。
「取り敢えず調べてみよう」
そう言うと皆で手分けして、この部屋を調べる。とは言っても、地下室にはこの装置ぐらいしか置いてないので、実質装置の調査ではあるが。
「んー。ポチッとな」
横では、白虎がいろんなボタンを次から次へと押して、
「って、不用意に押すなよ!」
「大丈夫だよ、ほら」
そう言って白虎は装置に設置されてるディスプレイのようなものを指して答える。言われて、白虎の指す先を見ると、
『奇跡の力が不足しています。奇跡の力を補充してください』
「クローン発生装置のところと同じメッセージだな」
違うのは向こうは音声で、こっちは文字と言うところだろうか。
「だからって大丈夫とは言えないだろ……。で、結局これはなんなんだ?」
「うーん、よく分かんないね。ご主人の行動が世界の救いにつながるなら、これが欲しかった障壁発生装置なんじゃないかなとは思うけど……」
「実際に奇跡の力とやらを補充しないと、か」
「だーね。どうする、持って帰る?」
「まぁ、マザーをここまで連れてくるわけにもいかないからな。持って帰るしかないだろ。ちょっと巨大すぎて置き場所に困るところではあるが」
「それにしても、この浮島が滅んだ理由がますます持って謎よね。水の浄化装置に、クローン発生装置に、おそらく障壁発生装置。これだけ揃ってなんで滅んだんだか」
桜が疑問を浮かべるが俺もそう思う。やっぱ、ゴーストが言ってた以上内乱なのだろうか? いや、内乱だとしても避難した奴らも、避難してなかった連中も悉く滅んでるのは何故なのか? まぁ、そこは考えても詮ないことか。今は、これらの装置が無事に使えるかどうかだ。
「一応、クローン発生装置も持って帰るとするか。浄化装置にクローン発生装置、障壁発生装置(仮)があれば、ボルトを救うピースは完全に揃ったと言える」
「そして、俺がそれらをコピーすればいいんすね」
「うむ。その際は頼むぞ千春」
やっぱ、千春の存在はこの世界を救うのに必須だったな。やはり、こいつがこの世界の主人公で確定かな? やること終わったらこいつも地球に帰りたいか聞いとかないとな。まぁ、十中八九帰りたいって言うだろうけどな。こんなポストアポカリプス世界に残るとか死んでもごめんだし。
「しかし、ボスは今回出ないんだね」
ゆっくりと、クローン発生装置を回収していると白虎が不意にそんなことを言い出した。
「別にボス倒すだけが、世界を救う手段じゃないだろ。というか、今までボスらしいボスが出てきたのって、現代地球と戦国時代っぽいところだけだし」
「しかし、ボスが出ないでは私の実力の発揮しがいがありませんね」
久しぶりに青龍が喋ったと思ったらそんなことを言い出す。
「別に発揮しなくていいだろ。ボスがでないなら出ないなりで。というか、今の時点でもご都合主義ここに極まれりなんだし。これ以上ご都合主義重ねるのも問題だろ」
「まぁ、ボスがいてそれを倒しさえすれば全て解決ってのはご都合主義と言えるかもねー。スコップ折れるよ」
スコップ? 白虎のセリフはたまに分からないことがある。
「取り敢えず、これで回収するものは回収し終えたかな。ご主人、どうする? まだ探す?」
「いや、もういいかな。この3つがあればボルトの救済はどうにでもなりそうだし」
「最後の装置は謎だけどね。まぁ、あそこまでいって障壁発生装置じゃなかったらなんだったんだって話だけどね」
「浮島を浮かしてる装置かとも思ったんですけど、アイテムボックスに入れても変わらず浮いたままだったから、多分違うっすね」
ふと、千春がそんな爆弾発言をかます。
「お前、そう思ったならアイテムボックスに入れる前に言えよな……」
そうだったら、回収した時点で浮島は墜落を開始していただろう。浮力発生装置じゃなくて本当によかった。
「い、いえ、奇跡の力が尽きた状態でも浮いてたから違うかなって思ったんで」
そう言われればそうか。あの時点で装置の奇跡の力は尽きていたから浮力とは関係ない装置になるか。
「ともかく、そういう気づいたことは言ってくれよ。じゃ、帰るか」
それだけ言うと、俺たちは揃って塔を出た。
「ちょいちょい、ご主人。帰るんならポータルで帰ったら一瞬でしょうが」
普通に塔から出て帰ろうとした俺を白虎が止める。そうだった忘れてた。
「そうだったな。じゃ、『ポータル』」
ソルテアボルト近くの地上をターゲットにポータルを開くと、順に中へと入っていく。
「こ、これなんスか? ワープゲート!?」
千春だけはなんか驚いてたが、返事に代わりにポータルに叩き込む。
ふと、白虎の方を見ると、地上に何か小さな魔法陣のようなものを描いていた。
「何やってんだ?」
「もしもの時のためにポータルを開くための基点作りかな。まぁ、公転も自転もしてる惑星の一箇所に正確にポータルを開けるぐらいだから、浮島が移動してようが正確に浮島の上にポータルを開けるだろうけどね。ま、念のためだよ、念のため」
今までそんなん一度も意識してなかったな。確かに、地球は公転も自転もしてる上に、銀河系自体も移動してるわけだから、座標は目まぐるしく変わってるはずだ。その状態で特定の一箇所にポータルを開くというのがどれくらいの難物か、俺にも流石にわかる。
まぁ、そこら辺は意識しなくてもちゃんと調整してくれているのだろう。アドミンからのチートだし、そこら辺は気にするところじゃないだろう。
「じゃいくぞ白虎。凱旋だ」
「あいー。とは言っても私らはそれには入れないけどね」
そういえばそうだった。ワープしたら改めてこいつらを呼ばないとな。そこらへんやっぱり不便だよなこいつら。
まぁ、そんな感じで俺たちはソルテアボルトに帰還する。




