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16.ゲノム

 最上階にたどり着くと、白虎が一つの箱を前にして悪戦苦闘していた。宝箱っぽく見えるが、なぜか開かないようだった。


「おい、アンロック使えよ白虎、何やってんだ」


「使ったよ。使っても開かないんだよ、これ。なんなんだこれ?」


 白虎は箱を開けようと色々しているがどうやらアンロックは効果がないらしく、宝箱を持ち上げたり裏返したり色々やっていた。


「まぁ、アンロックは基本的に物理的な鍵か魔法的な鍵じゃないと効果がないからさ、それ以外の特殊な仕掛けで鍵かけた場合は効かなくはあるんだけどさ」


「それ以外の特殊な仕掛けってなんだよ……。物理でも魔法でもないって一体……」


「奇跡の力って奴なんじゃないの?」


 桜が横合いからそう言葉を投げかける。


「多分、そうだろうねぇ……。くそっ、ここまで来て開かないとか許されざるよ」


「取り敢えず、そっちはなんとか頑張ってみてくれ、俺たちは他を調べよう。おあつらえ向きに、デカめの本棚があることだし」


 そう言って、宝箱に悪戦苦闘する白虎をよそに、最上階の探索を開始する俺たち。

 俺は本棚の本を調べて見るかな。そう言って背表紙を眺めるが、どれも何も書いていなかった。これは一冊ずつ調べるしかなさそうだ。他の人員とも協力して、本を一冊ずつ調べる。


 何冊か流し読みするが、「奇跡の力についての科学的考察」など違う意味で面白そうな本とかはあったが、目の前の宝箱を開けれそうな内容の本はなく、諦めかけていた頃に、この部屋の主のものであろう日記を見つけた。


「お、日記だ。なんかよさそうなの書いてるかな?」


 取り敢えず、腰を据えて日記を読むことにする。内容はどうも日記ではあるもののどちらかと言うと、研究日誌としての色合いが強く、中身はほぼほぼこの塔で行われていた研究に関することだった。

 中身を要約すると、やはり白虎が推察していた通り、生物のカケラから生物を複製することを目的とした研究をしていたようだ。

 失敗したと言う記述が途中までは続き、中には研究がうまくいかない悔しさからか、殴り書きのような記述が増えてくる。そして、急に記述が綺麗になったかと思うと、研究の成功で喜びにあふれた記述が見つかる。


「研究は成功、か。しかし、記述から察するにこいつも奇跡の力は使えたみたいだから、こいつもマザーと同じ神なんだろうな」


 まぁ、奇跡の力を使った施設を作ってる時点で、自分も奇跡の力が使えなければ施設も使えないので当たり前といえば当たり前だが。


 日記をさらに読み解くと、今度は研究のために様々なサンプル集めをしていると言う記述が増える。自分の戦士に命じて地上の生物のサンプル集めをさせていたらしい。やっぱこいつも神か。

 しかし、神とやらはマザーしか知らないが、どうもこいつはあんまり神っぽくないな。

 で、集めたサンプルは部屋にある箱に入れて保管していると言う記述を発見する。これだ、これが知りたかった情報だ。

 だが、日記には箱に入れて保管しておく、としか書いておらず、開け方やどうやって閉めたかは書いていなかった。まぁ、常識的に考えれば日記にわざわざ開け方とか書く馬鹿はいないよな、大事な研究サンプルなんだし。


「うーん、開け方のヒントはないか。いざとなれば漢開錠も視野に入るかもしれんな」


「何、漢開錠って?」


「物理的に破壊して箱を開けるってこと」


 桜の疑問に答えると、白虎の方へと視線をやる。やはりまだ開けてないようだ。


「だーめだ。ピッキングしようにも鍵穴ないし、どうやって閉じてるのかすらわかんないよ。でも、漢開錠は最後の手段だよご主人。奇跡の力で鍵を掛けてるって言うんなら、開錠するのも奇跡の力でいけるはずだ。マザー・マリアがその開錠の奇跡を使えるかわからないが、ここで粘るよりは建設的なはずだ」


 白虎がそう言うなら、そうなのだろう。取り敢えずこれはアイテムボックスに入れて持ち帰ることにする。


「じゃ、塔の中はこれで探索し尽くしたか?」


「どっかに隠し扉でもない限り、これで全部探索したわね。で、どうするの勇人? まだこの浮島探索する?」


「うーむ……」


 桜にそう言われ、うなって考える俺。

 クローン発生装置と言ってもいいような実験装置を見つけたし、礼拝堂の地下では浄化装置も見つけた。かなりの収穫と言っていいだろう。

 まだ実際に使ってないため何とも言えないが、ソルテアボルトを救うためのピースは揃っていると言っていいだろう。あ、植物の種もあったか。

 だが、クローン発生装置は肝心の遺伝子がない状態だし、動物のクローンを発生させたところで、自然発生するクリーチャー達をどうこうする手段がない。植物の種も同様だ。

 何か……、あと一手何か欲しいところだが。


「あと一手欲しいところだな……。いや、いっそのことボルトの住人達をこの浮島に移住させるか? 霊亀の背中に移住させるよりは現実的な案だろ?」


「まぁ、場所は分かったから、起点となるものを用意すればここにポータル開くことは出来るだろうけど……。ボルトって他にもあるんだろ? ソルテアボルトの住人だけ救っても、それで解決って言えるかい?」


「む……」


 白虎にそう問われ言葉に詰まる。他のボルトとやらはまだ発見していないが、放棄されたボルトがある以上確実にあると言っていいだろう。この世界を救うとなったら、そう言った他のボルトも同じような住環境にする必要がある。

 まぁ、装置自体は千春にコピーして貰えば解決はするが、クリーチャーの問題はどうしようもない。まさか、俺が用心棒するわけにもいかないし、したとしても一つのボルトを守るのが精々だ。やはりあと一手欲しい。


「住居を守るような巨大なシェルターっていうか、外部からの影響を遮断するバリア発生装置みたいなのがないもんか……」


「そんなもん都合よく見つかるわけないだろ、ご主人。常識で考えなよ。あ、ちなみに、この浮島にはそういうのないだろうね。あったら、私たちがそもそも浮島に入れなかっただろうし」


「でも、クローン発生装置みたいに、奇跡の力が切れてただけとか?」


「その可能性はなくは無いけど……、私は望み薄だと思うよ。どうするご主人? もう少し探索する?」


「いや、探索してみよう。俺が訪れる異世界は俺がしたいようにすれば解決する世界だとアドミンは言っていた。なら、俺がどうにかしたいと思って探索すれば何か見つかるはずだ」


「ま、ご主人が成したいようにすればいいよ。私たちはそれをサポートするだけだ。さしあたっては、この塔の隠し部屋の探索から始めようか?」


「ん? なんでだ?」


「そう言った都合の良い、障壁発生装置があるとしたら、浮島の中心であるこの塔のどこかにあるはずだからさ」


 白虎はそう言って床に手をつくと、ソナーを飛ばし隠し部屋の走査を始めた。さて、これで見つかるといいが。


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