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15.ゲノムボックス

 中央塔にたどり着いた俺たちは早速中を探検することにする。

 中に入ると、ここも明かりがついており、塔の機能がまだ生きていることが伺える。1階層はがらんどうで、壁に沿って螺旋階段が設置されているだけだった。上を見上げると吹き抜けになっており、螺旋階段から各階層へ入り口があると言った感じだ。確かに、この1階層は外観から考えるとやたら狭いので、外壁側にそれぞれ階層があると言った感じなのだろう。


「取り敢えず、登るか」


「めんどい、私は飛んでいくよ」


 俺が登る提案をするとノータイムで反論してくる白虎。いうが早いがフライを発動させ、さっさと飛んでいってしまう。


「おい、白虎。お前協調性ってやつをだな……」


 そうこぼすが、すでに俺の独り言が聞こえる範囲にはおらず、2階層への入り口へと消えていった。


「取り敢えず私たちは地道に階段を登るとしましょうか」


 青龍が嘆息しながらそういうと、俺たちは隊列を組んで階段を登る。

 まぁ、視界は開けているので、いきなりの敵襲とかはないだろうが、それでもちゃんと隊列は組んでおく。

 程なくして、2階にたどり着くと部屋の中へと入る。中には白虎がすでにいて、部屋を漁っていた。

 部屋の中は共同寝室と言った感じで、妙に生活感のある場所であった。ベッドが並んでいて、机と椅子が一セットある、それだけの部屋だった。


「だーめだ、ここはなんもないね。住人がただ寝るだけの部屋っぽいね」


 部屋を漁っていた白虎がそう告げると、白虎は部屋を出て再びフライで飛んでいった。


「もう、全部あいつ一人でいいんじゃないか?」


「いや、流石にそういうわけにもいかないんじゃ……」


 俺が諦め半分でそういうと、桜がおずおずと告げる。


「冗談だよ。取り敢えず白虎を追おう」


 全員で部屋を出ると、3階へと向かう。


 ガシャーンガラガラ!


 向かおうとしたら突如そんなでかい音が周りに鳴り響く。


「あいつなんかやらかしたか?」


 音がしたのはちょうど3階のあたりなので、急いで現場へと駆けつける。


「白虎、どうした!?」


「あ、ごめん。ちょっとゴーレムがいたんで沈黙させたんだよ」


 部屋の中を見ると、西洋の鎧武者みたいな感じのゴーレムがバラバラで床に散らばっていた。


「いや、まさか正拳突き一撃で沈むとは思わなくてね。ちょっと大きな音立てちゃった」


 全く悪びれた様子もなく部屋漁りをしながらそう言う白虎。


「しかし、ここにも何もなさそうだね。みた感じ普通の部屋っぽいし。誰かの私室か書斎って感じかな?」


 内装を見た感じ、本棚があり、ベッドがあり、流し場があり、机があり、椅子がありという部屋であるので、ここだけで生活できるような部屋になっている。言うなれば、ワンルームマンションの内装といった感じだろうか。


「じゃ、次行こ、次」


「おいおい、本棚は見ないでいいのか?」


「もう見たよ。ざっとだけどめぼしいものはなさそうだったよ」


 白虎はそれだけ言うと4階へとさっさと向かう。いや、RTAしてるんじゃねーからさ、そんなにせかせか急がんでも。

 そう思うが、白虎が先行しているおかげで、探索時間は大幅に減っているわけだから、効率的と言ってしまえばそうなのだ。


 RTAしている白虎を追いかけ、4階へと向かう俺たち。今度は何も音しないな。ゴーレムがいないのか、無音で倒したのか。

 4階にたどり着き、中に入ると、そこは今までと違った異質な部屋だった。

 端的に言うと、いかにもな研究所って感じの部屋であった。具体的に描写するなら、アレだ、でかい試験管があちこちに設置してあり、中に生物とか臓器とかが浮かんでる、いかにもテンプレな研究所って外見を想像してもらったらいい。とは言っても、その想像と違うのは、試験管の中は全部空っぽで何も浮かんではいないのだが。

 そんな部屋の中で、白虎は一つの端末を前にして唸っていた。


「うーん……」


 そして、端末のボタンをおもむろに押すと、


「奇跡の力が足りません。奇跡を補充してください」


「どれ選んでもこうかー。こりゃ私たちにはお手上げだね」


 そう言って、お手上げのポーズで肩をすくめる白虎。


「これはなんの装置なんだ?」


「これ? どうも、生物の遺伝子を研究してた施設っぽいね」


 俺がそう聞くと白虎はそう答えを返す。


「遺伝子の研究? ファンタジー世界っぽいのに随分先進的なんだな」


「いや、遺伝子の研究って言ったのは、たまたまそうってだけだよ。多分、これ作った人たちは遺伝子って存在をまだ認識できてないね。生物のカケラからコピーした生物を生成する。言ってみれば、クローン発生装置か。そんな研究をしていたみたいだね。で、その生物のカケラってやつがまだまだデカすぎるんで、遺伝子と言う存在にはまだたどり着いてないね」


「遺伝子の研究……。そういえば、この世界。家畜とか普通の動物って見かけなかったよな?」


「マザーの話でもでなかったし、生きてる動物は人間とクリーチャーだけっぽいよね。ま、ご主人の考えてることは分かるさ。確かに、これが稼働すれば、食糧事情は劇的に改善されるだろうね。家畜なんて面倒なことをせずとも、ここで作って即座に屠殺すればそれだけでお肉の完成だ。カケラを食べずに取っておけば、永久機関の完成だ。エコボックスなんてものに頼る必要はない」


「じゃ、じゃあこれを持って帰れば……」


 桜が嬉しそうな顔でそう言うが、


「これを持って帰る、ねぇ……。アイテムボックスには入るだろうが、ちょっと規模がデカすぎて、この場所から動かしたらなんか不具合がありそうでな」


「あと、これは生物のカケラから、生物を増殖する機械であって、肝心の遺伝子、生物のカケラはここにはないっぽいね。まぁ、あったとしても奇跡の力とやらが足りなくて稼働しないんだけど」


「遺伝情報がないのか。それじゃ絵にかいた餅だな」


「そっか、残念」


「ま、これは一度置いておこう。次向かうよ次」


 白虎は毎度のようにフライで飛行し、5階へと向かう。というか、ここまできて分かったが5階が最上階のようだ。

 さて、最後の部屋には何があるやら。


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