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12.礼拝堂地下

「『ライト』」


 礼拝堂の地下に入っていく俺たちだが、地下は明かりがないようで、俺が魔法で辺りを照らす。


「狭っ、ちょっと降りにくいわねこれ」


 桜が言うように、地下への階段は狭く、一人がようやく通れるような幅で階段の段も狭く非常に降りにくかった。


「いいねー、ますます秘密の地下室っぽいよ。さーて何があるかなー」


 対する白虎はワクワクが止まらないようで、ウキウキした態度のまま階段を降りる。

 そのまま狭い階段を降り抜くと、そこは少し手狭な小部屋になっていた。

その先には鉄格子状になっている扉があり、通路がある、そんな部屋だった。

 しかし、そんなものより一層目を引くものが、この部屋にはあった。


「が、骸骨……! ひ、人が死んでるっすか?」


「ちょ、白骨死体とかやめてよ! そっちの耐性はまだないんだってば!」


 千春と桜の両名が驚いたそれは、部屋の隅にうず高く積み上げられた白骨死体の山だった。まぁ、山とは言っても天井まで積み上げられてるわけでもなく、人数的には10人ぐらいが積み重なっている感じだ。

 しかし、俺もこいつら並みにビビったり驚いたりしてもいいようなもんだが、あまり動揺はしないな。なんだろう、そういう情動を感じる部分が壊れてしまったんだろうか? そうだとしたら、ちょっと危ない傾向かもな。気をつけないと。


「この風化具合から考えると100年程度では効かない時間が経過しているようですね」


「しかし、こんな入り口も入り口で死んでるとか何があったんだろうね?」


 青龍に白虎は、白骨死体に近づいてじっくりと見聞を開始する。まぁ、こいつらはこういうの平気だろうしな。逆にビビってたら驚く。


「この扉の先に何かあるんじゃないか? 鍵は……掛かってるか。『アンロック』。よし行くぞ」


 魔法であっさりと鍵を開錠すると、俺が先頭に立って通路を歩き出す。


「本当魔法ってズルいわよね……。あ、そういえばよく考えたらあたしと勇人の住む世界が同じってことは、あたしも頑張れば勇人の使ってる魔法が使えるってことよね? 今度時間があったら教えてくれない?」


 俺が鍵を開錠するのを見て、桜がそんなことを言ってくる。


「教えるのは構わんが、古代魔法は習得がすごい難しいみたいだぞ。俺はちょっとズルして覚えたからな。俺みたいにあっさり使いこなせるとは思わない方がいいぞ」


 まぁ、それ以前の問題として、俺はオールラーニングで最初から無詠唱で使えたから、ちゃんと教えるのは不可能なんだが。白虎あたりだったら教えてくれるかな? 青龍は絶対無理だろうな。


 そんな感じで雑談をしながら歩いていると、不意に背筋が冷たくなった。

 なんだ、と思っていると青龍が一歩俺の前に出て槍を構える。


「『ヴァルキリーブレッシング』」


 青龍がそう唱えると、青龍の持っていた槍がほのかに光り輝く。ていうか、またしても俺の知らない魔法だ。信仰魔法でも固有魔法でもなさそうだから、精霊魔法か?


「……ォォォォォォ」


 そして、青龍の睨んだ方向から低い唸り声のようなものが聞こえてくる。その方向に目をこらすと半透明の骸骨のようなものが見える。


「ゴースト……か?」


「そのようです。敵対的なら即始末致いたしますので」


 その言い方からすると、友好的なら始末しないと言うことか。友好的かどうかは俺らの対話の結果によると言うことか。ていうか、ゴーストに話とか通じるのか? とりあえず話してみるだけしてみるか。


「あのー、そこのゴーストさん。少し話を伺いたいのだが……」


「ォォォォォォ。ヲノレ、フランツ! 我らを盾に自分だけ逃げおおせるとは! あな口惜しや! 我に肉体があれば奴を八つ裂きにしてやるものを! やはり汚れた地上の民など信じるべきではなかった! 地上の民の追放を決めた、司祭様は正しかったのだ! あぁ、一度でも奴を信じた私が愚かだった!」


 俺が話しかける(?)と何やら勝手に喋り出したゴーストさん。話の内容でなんとなく言いたいことはわかるが、要するにフランツとかいう地上の民がこのゴーストさんを盾にしてこの隠し通路から逃げおおせたと言うことか。このゴーストさんはその怨念でこの場にとどまっているという。


「ゴーストさん、ちょっと聞きたいんだけど、ここは一体どういう場所なんだ? 礼拝堂の隠し通路というのはわかるんだが──」


「フランツもそうだが、何より許せぬのはヴィオラの女狐よ! 奇跡を体現したから目をかけてやったと言うのに、フランツと共に逃げおおせるとは! あぁ、憎い! 地上の民が憎い! 憎い!!」


 と、俺の言葉が全く聞こえてないかのようにひたすら独白を続けるゴーストさん。


「ダメだこりゃ。怨念で完全に固定されてる。こりゃまともな情報は聞けそうにないね」


 お手上げのポーズで首をすくめる白虎。


「まぁ、でも浮遊大陸から人がいなくなった理由の一端は分かった感じじゃない? 内乱か、外乱かはわからないけど、誰かに襲われて全滅したってところじゃあない?」


 ゴーストから得た情報でそう結論づける桜。


「で、どうするんすか。この幽霊さん」


「これ以上有益な情報はなさそうです。退治してしまいましょう」


 千春の言葉に青龍が応え、あっという間に間合いを詰め槍を一閃。哀れゴーストは成仏したのだ。いや、成仏したのなら祝福すべきか? どっちでもいいか。


「あー、なんか勿体なかった気が」


「でも、会話できそうになかったし……。とりあえず先に進もう」


 桜の言葉にそう答えると、俺たちは通路を進むことにした。


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