10.浮島
「はい、隅っこ確保ー」
「あぁっ! 取られた! でも、まだ一箇所だけっす。まだ負けてないですよ!」
放棄されたボルトで浮島が通過するのを待っている俺たちだが、あまりに暇なのでオセロとか将棋とかで遊んでたりする。
走査役の青龍か白虎が外に出て、それ以外の4名はゲームで遊んでる状態だ。
「王手」
「げっ! 投了よ投了。ていうか、白虎ちゃん強くない!? 少しは手心っていうものをね……」
「ま、これでも長生きしてるからねー。大将棋なんてもんもやったことあるし、これぐらいなら余裕余裕」
白虎と桜は将棋をしているようだ、桜は一向に白虎に勝ててないようだが。
「うーん、それにしても暇だねー。待つしかできないってのはどうにもストレスだ」
白虎がそうこぼすが俺も同意見だ。早いこと浮島が見つかってくれればと思うのだが。
「暇はもう終わりですよ、白虎」
そう思っていたら、外で走査していた青龍がボルトの中へと入ってきた。
「お!? 浮島見つかったか!?」
青龍のその言葉に白虎が喜色を上げる。
「えぇ、あと数時間でこの上空を通過しそうです。面倒なのでこちらから近づいてしまいましょう」
「おお、ついに見つかったか。じゃ、みんな移動するぞ。ほら、千春も盤面にらめっこしないでさっさと行くぞ」
「うーん、あと少しだったんすけどね」
オセロの盤面を片付けると出立の準備をする俺たち。
ものの数分で片付けは終わり、ボルトの外へと出る。
外に置いてある装甲車に全員で搭乗すると、青龍の先導で浮島を目指す。
「見えました、アレです」
天井から青龍の声がして、俺は窓から身を乗り出してその方向の上空を見やる。
「うわ、マジでラ○ュタだな。あれ」
「うん、確かに、○ピュタだわ」
桜も俺と同じように上空を見、同じような感想を漏らす。
そこにあるのは、某天空の城と同じような巨大な浮島だった。島の構造物は遠すぎてよく見えないが、全体的な造形はまさしく天空の城だ。
浮島が全員で見えるような位置に来たところで、白虎は装甲車を停止させる。全員で降りると、俺は装甲車をアイテムボックスに格納する。
「さて、行くか。『召喚 鳳凰』!」
この世界に来ての初めての召喚なので呼晶を使ってクリムを召喚する。俺の呼び声に応えて、赤き不死鳥がこの世界に召喚される。
「す、すげぇ……、マジでフェニックスっすね」
千春がそう感想を漏らすが、一応鳳凰とフェニックスは別物なんだが。青龍は同一視されてるとは言ったが、違うだろ。違うよね?
「む、ここは一体……? マナの流れが違う。主よここはどこだ? 私は何をすればいい?」
クリムが辺りをキョロキョロしながら、俺に尋ねかける。やっぱ、異世界ってのはなんとなくでもわかるんだな。
「ここは地球とは違う異世界だ。そして、これからあの浮島に俺たちを連れて行ってもらいたい」
「お安い御用だ。載せるのは主を含めてそこの3人で良いのか?」
「話が早くて助かるな。青龍と白虎は自力で飛べるから、俺たち3人を乗せてくれ。出来るか?」
「主よ。私に聞くならば、出来るか? ではない。どれくらいかかるか? と聞くのだ」
おお、大した自信だな。俺たち3人を運ぶぐらい造作もないということか。
「おお、頼りにしてるぞクリム。ほら、二人とも乗った乗った」
「空を飛ぶなんて初めての経験だわー。楽しみ」
「大丈夫っすか? これ燃えないっすか?」
桜は嬉々として、千春はおっかなびっくりクリムの背中に乗る。俺も二人と一緒にクリムの背中に乗る。というか、3人が乗るとクリムの体が大きくなって余裕を持って乗れるようになった。体の大きさはある程度自在なのか。
「準備できた? それじゃ先導するからついてきてよ。『フライ』」
白虎が飛行魔法を使い空に浮かぶ、そして浮島を目指して飛行を開始する。
それと同じくしてクリムもバサっと羽根を鳴らして、飛翔を始める。
「すごーい、飛んでるー!」
「あ、あわわ。お、俺こういうのダメっす!」
喜ぶ桜と、怯える千春で対照的だった。ていうか、こういうの役割逆じゃね? 俺自身は桜よりの感想だな。空飛ぶの結構楽しい。
せっかくなので空から地上を見てみるが、やはりというかあたり一面の荒野で、先ほど立ち寄った放棄されたボルトがある廃墟群が見えるだけだった。
しばらく飛び続け、無事浮島に辿り着いた俺たち。障壁とかあって簡単に辿り着けないことを予想していたので、こうもあっさり辿り着けてのは正直拍子抜けである。
「ついたついたー。ねぇ、勇人。また鳳凰ちゃんに乗せてもらっていい? また一杯空飛びたいし」
「まぁ、機会があればな。あとこいつの名前はクリムだ。そう呼んでくれ」
「分かったー」
喜色満面の桜に適当に返す俺。というか、白虎をちゃん付けするのはまだわからんでもないが、クリムまでちゃん付けって、こいつのネーミングセンスどうなってんだ。どう見ても、ちゃんって見た目じゃないだろうに。
「では、主よ。また役目があれば呼んでくれ」
そう言って、クリムは姿を消す。乗り物としてしか使ってなかったのに、あまり不満そうじゃないなクリムのやつ。いきなり腕試しを挑んでくるほど血気盛んだったから、不満の一つでも述べるかと思ったんだが。あぁ、それにしても増えれば増えるほど、召喚獣の扱いに困るなマジで。役目が偏らないようにするのに神経を使いすぎる。
「ここが浮島の上ですか。まさしく空中庭園と言った感じですね」
「割と朽ちてるけどね」
青龍と白虎が浮島を見てそう感想を述べる。
確かに、二人が言うように、見た目はテンプレ的な空中庭園といった感じだ。何故か上空にあるのに、水路があり、水が流れている。噴水もありまだ機能が稼働しているように見受けられる。
しかし、白虎が言うように所々朽ちているので、人の手が入っていないと言うのは確実のようだ。
「じゃ、探索を開始するか。いくぞ、みんな」
そう言って俺たち5人で歩き出し、浮島の探索を開始した。