序章
こういう話を考えるのが初めてなので、つたない文章になりますが、読んでくれると嬉しいです。
仕事を終え、家に帰ると、おいしいご飯を作って待っていてくれる愛しい妻と「ただいま」と嬉しそうに出迎えてくれるかわいらしい子どもたちが待っている。他の人にとったら、何の変哲もない日常だろう。しかし、この男にとっては、これほど幸せな時はなかったのだ。
その男は今日もいつも通り仕事を終わらせ、家族の待つ家へ帰った。今日もあの幸せな空間がそこに広がっていると疑わなかった。
しかし、そこにはいつもと違う光景が広がっていた。暗い室内、破られたカーテン、壊れている子どもたちのおもちゃ、ただならない部屋の荒らされように男は焦りを隠せない。男は家の中を探し回った。いつもいる妻と子どもたちがいない。大声で妻と子どもたちの名前を呼び探すが、返事もなくただするのは家族を探し回る男の足音と早く鼓動する心臓の音だけだった。一階をくまなく探すが、姿は見当たらない。急いで二階に駆け上がる。二回には子どもたちの部屋と男と妻の寝室がある。もしかしたら、そこに隠れているのではないかと男は思っていた。子どもたちの部屋に行くと、いつもと変わりない。荒らされてはいなかったが、どこかに隠れているのではないかとくまなく探すが、クローゼットの中にもベッドにもいなかった。男は子どもたちの部屋を出ると、隣にある夫婦の寝室のドアをあけた。
そこには、夫婦のベッドに横たわる変わり果てた妻と子どもたちが横たわっていた。胸に刺さった七つの木の杭、胸に添えられた手、妻と子どもたちを囲う無数の青い花、壁には血で書かれた十字。妻と子どもたちにすぐに駆け寄るが、体を触ると冷たく反応もない。朝は温かかった体は、固まり冷たい氷のようになっている。
死んでいる。それは分かっている。だが、感情と理性が自分の体の中でこんがらがって、目の前も真っ暗になり、ただ狂ったように、獣のように叫ぶしかなかった。
その後のことは男の混乱が解ける前にトントンとことが進んでいった。叫び声を聞いた隣人が家の中に入り、狂う男と変わり果てた家族を見つけ、警察に通報した。そこから男に同情した隣人が葬儀の手続きもしてくれたが、男は放心状態のままだった。妻と子どもたちが埋葬された墓の前を男は離れることはなかった。隣人たちはそんな男を気遣ってか男をおいていった。
男は妻と子どもたちの墓の前で、泣きながら小さな声で呟いていた。
「殺してやる…」
男は復讐しか残っていない。自分の家族が味わった恐怖、痛み、絶望全てを味わって殺してやると、それだけが男の生きる理由になったのだ。
男は表の世界から去り、裏の世界に飛び出した。
自らを復讐の鬼と変え、悪魔となり、殺人を繰り返す。
利用できるものは余さず使い、自分の利益になるものはこぼすことなく奪っていった。
いつの間にか一目置かれる殺し屋となった男は思った。
『自分の駒が欲しい』
自分が思うままに操れる駒が欲しくなったのだ。
時には甘い言葉を、時には力を見せ、時には欲するものを与え、自分の駒を増やすことにした。
男は復讐心しかもっていない。道徳の心は壊れて、すでにない。
男は駒を探して歩きまわる。頑丈で扱いやすい駒を探すために歩き出したのだった。