〜二章 ライカVSイリス2〜
ライカVS イリス2
イリスside
戦闘開始からイリスには単純な単独戦闘能力では勝てないのはわかりきっていた。
だからこそイリスは奇襲戦法に徹する事にする。魔法スキルメインの私にとって接近戦はさけたい。
最近習得した私の新しいスキル《詠唱破棄》でまずは《ラスターエフェクト》をかける。
《詠唱破棄》は自分の力量にあわせて成長するので今の私では中級魔法が限界だ。
姿を消すと同時に《反響魔法》を展開する。これはライカに私の位置を悟らせない為だ。
(ここまでは計画通り·····)
イリスはライカからある程度距離をとると詠唱を開始する。
範囲攻撃の上位魔法 《ラスタージャベリン》
直線攻撃の中級魔法 《フレアバースト》
《詠唱破棄》があっても流石にラスターエフェクト、反響魔法を使っているため攻撃用の魔法までは破棄出来ない。術者としての能力が上がれば可能になるようだが····出来ないものは仕方ない
ライカは私の位置を特定するために挑発してくるが今は無視だ
「我が意志に従い···」
声に反応しライカが攻撃を仕掛ける。
私の場所からは検討違いの場所だ。すかさず私は風魔法の初級 《ウィンド・ショット》を放つライカの左肩に直撃し衝撃で吹き飛ぶ。
「!?これは風魔法···」
驚きながらもライカは体制を立て直す。この間もイリスの詠唱は聞こえるが場所が一節一節違うところから聞こえてくる
「白き光の槍よ···」
「紅き紅蓮の炎よ···」
「集え···」
「焼き尽くせ··」
正直ちょっと無理をした。
《二重詠唱魔法》デュアルスペルマジックと言われる同時詠唱だ。
魔力を大きく消費するし他の魔法を使っているので演算処理がキツい。
頭がズキズキと痛み限界を感じつつある。
だがここまでしないとライカに通じないのもわかっていた
ライカにはまだ私の場所がバレていないようだ悪態をつきながら警戒している
「一度に5種類の魔法だって!?いったいどうゆう頭してるんだか··天才め!」
ライカの言葉に私は嬉しさを感じながら僅かに微笑む。天才と言われるのはあまりなれないがここまでライカを追い詰めたのだ誇ってもいいだろう。
自己評価をしながら詠唱を続けるラスターエフェクトの効果が間もなく消える。それに合わせてライカに今の私の最高の一撃をはなつ
「その輝きをもって····」
「我が前に立ちはだかる···」
「撃ち貫け···」
「敵を打て···」
詠唱が終わり魔法が具現化する。それと同時にラスターエフェクトの効果も消えイリスの姿が見えた。
「見つけた!」
ライカは魔法発動の一瞬を狙い間合いを詰めるが既に遅い
「ラスタージャベリン!」
「フレア・バースト!」
無数の光の槍がライカを中心に範囲的に包囲し降り注ぐ
接近できないようにイリスの直線上には炎の熱線が走る
「私の勝ちだよ!ライカ」
イリスは完全にライカの退路を絶っていた直撃は確実。今のライカでは確実に命中するだろう。
「くそ!霊そ······」
ドオォォォォォォォォォォォン
直撃の爆発がライカを中心に巻き起こる
◇
「あ···やり過ぎちゃった?」
着弾地点を眺めながらイリスは膝をつく。
正直、魔力をギリギリまで使ったので立っているのもしんどいのだ
更に言うなら多少やり過ぎた。
イリスの上位魔法は普通に当たれば怪我ですまない。
大会前にライカに大怪我をさせてしまったかもしれない。
爆発の煙が晴れてライカの影が見えてきた。
その姿を見てイリスは苦笑いするしかなかった。
なぜならライカは大したダメージを負っていなかったのだ
「流石に驚いたよ···俺じゃなかったら流石にヤバかったかな」
ライカの周りには魔方陣が展開されておりそれがイリスの魔法を防いだようだ。
「間に合ってたんだ·····霊装。でも模擬戦は私の勝ちだよね?」
「ああ。俺は剣術のみで戦うって制限をしていたからね。
でも霊装を実戦で使えたからある意味テストは成功だね」
「ライカの霊装って防御特化?」
イリスの疑問にライカは答える
「霊装・ブリューナ・ソラス。中級魔法を弾き、上級魔法のダメージを軽減する霊装だね。」
霊装とは武器や防具に魔力を込める事で発動する特殊術式のことだ。
発動するのにかなりの魔力を使うのであまり実用的ではないが、一度発動すればある程度の時間、自動的に効果を発動し魔法のように詠唱を必要としないので魔力が高い人は割と自分に合わせて作っているのだ。
「それより、イリスだいぶ無理をしたみたいだね。マナポーションを持ってきた方がいいかな?」
「ん。····お願いしていいかな正直かなりキツくて····」
イリスは額に汗を浮かべ肩で息をしながら答える。
ライカは頷くとマナポーションを取るために闘技場から出ていった。
ライカがいなくなるとイリスは大の字に倒れる。疲労感と消耗しすぎた魔力で動くのも辛い。
「全く····かなわないよ。ライカってば軽くチートだよねどっちが天才なんだか。」
やはりギルドマスターだけあってライカは十分に強い。それはわかっていたがやりようによっては勝てると思っていたのだ。だが実際は試合に勝って勝負に負けた感じだ。
霊装を使われただけでイリスの戦力は半減するそれにもし水晶眼を使われたらそれこそ手も足もでないだろう。
イリスは闘技場の天井を眺めながら遠距離魔法以外の戦闘式を考えるべきだと思い始めていた。
◇
しばらくするとライカがマナポーションを持ってきたのでイリスはすぐに飲み干しある程度まで回復した。
マナポーションは魔力回復薬だがイリスの保有魔力を全て補う事は難しいそれだけイリスの魔力は高いのだがまだまだムラが多く修行が必要だ。
「さて、イリス今日はもう休もう。明日はでステータスの更新をしたいからティアに朝一で頼みにいかないと。いつも昼にはどこかに行ってしまうからね。」
「あ~ティアちゃんね。確かにあの子神出鬼没だからね···精霊は気まぐれさんって言うけどティアちゃんはかなり独特だよね」
ティアとはギルド月桂樹の葉自体が契約している精霊で一般的にはギルド精霊と呼ばれている。
各ギルドには必ず精霊が存在しメンバーのステータスなどを更新、数値化してくれるのだ。数値化された能力やステータスは特別な魔法紙に写され本人とギルド精霊のみが閲覧出来る。
他の人が見るためには精霊の眼である精霊眼か本人の承認が必要となるのだ。
「そう言えばここ2日くらい更新してないよね··私も詠唱破棄とか覚えてるし一度きちんと見て更新した方がいいよね。」
「ああ。じゃあ少し遅いけど昼食を取ってから今日はのんびりしよう。」
二人は闘技場を後にし、昼食を取ることにした。