第8話
あの戦争がロボット側の敗北で終わった時、久美子は、その身を犠牲にして勝利に導いた。でも、私達は、久美子がその時に死んだと思っていた。校長先生に呼ばれるあの時まで…
放課後、あの階段の下の隠し部屋に呼ばれた私達は、大きな機械を目にした。
「これは、なんですか?」
司が言う。
「これは、若草久美子の陽電子頭脳、つまり、主記憶装置よ。基本的なデータは全てこれに保存される仕組みなの」
「じゃあ、久美子は…」
「あの体は、元々記憶する場所なんてほとんどないの。あるのは、この陽電子頭脳と交信する事だけ。だからこそ、この体があり、なおかつこのデータが破損していなければ」
「…彼女は生き返る」
「達也君、その通りよ。そして、この中身は、私ですら分からない。だから、こうして直接つなぐしかないの」
そう言って校長は、久美子の首筋のジャックにコードをつないだ。その途端に、久美子の体が震えだし、そして止まった。そうして、コードを外し、久美子に語りかけた。
「久美子…私よ…分かる?」
「…おかあ、さん?」
「そう、あなたのお母さんよ。じゃあ、ここに立っている人達は?」
「…司に美春に達也に玉緒。ちゃんと憶えてるよ?」
「じゃあ、久美子の最後の記憶は?」
「どこかの山の奥で、ロボットに対して信号を送ったところ…そこで途切れてる」
「じゃあ、久美子、今立てる?」
「うん、大丈夫だと思う」
そう言うと、ちゃんと久美子は自らの足で立っていた。その場で、片足バランスとか、いろいろして見せた。
「ほら、ちゃんと大丈夫だよ。でも、みんなはあまり大丈夫そうじゃない。どうしたの?」
「久美子が眠っている間、いろいろな事が起きたの。でもね、久美子は彼らとは違う。そうそう、司君達、この国の政府から、あなた達をロボット開発研究育成センターの研究員にしたいって言う話があるんだけど…」
「復学して、間もないですからね。その上、あの戦争、第2次ロボット内乱によって、まだまだ助けないといけない命がある。自分は、ロボットの研究もいいけれど、人の命を救う仕事に興味があります」
「私は違う。司についていくために、命を救う手伝いをするロボットを作りたい」
「俺と玉緒も、その話は了承するよ。ただ、久美子も連れて行っていいのかな?研究員として採用してくれるかと言う意味だけど…」
「それは、センターの所長と話して見ないと分からないわ。でも言えるのは、久美子は、こうやって再び生きる事ができた。でも、本当はこうはいかないと言う事。それは憶えといて」
みんな、笑いながら、言った。
「はい、分かってます」
そして、久美子を連れて、上へと戻った。
校舎の一番高い所、つまり、屋上で、5人は話していた。
「そう言えば、なんでここが戦争のレジスタンス総本部になっていたんだろうな」
「ここの周りは、特殊なフィールドによって、ロボットが近づきにくい状況になっているの。ボクは大丈夫だけどね。だからこそ、一番攻撃しにくいと判断されたからこそ、ここが総本部になったんだと思うよ」
「いまでも職員室の半分は戦後復興総本部が置かれているから、こっちとしては大変だけど、時々、オーロラが見えるのは、そう言う理由か」
「君達、なにしているの?」
出てきたのは、同級生だった。
「ああ、ちょっと、な」
司が答えた。
「ねえ、久美子さん、今回の戦争、大変だった?」
「え?何のこと?」
「だって、司達と一緒に激戦地へ向かって、その知識を駆使してロボット達をなぎ倒していったんでしょ?」
「なぎ倒してはいないけどね…」
ちょっと焦っていたように見えた。
「あ、そうそう、これ、久美子さんに」
渡されたのは、プリントだった。手紙折りにされているので、中身は見る事が出来ない。
「これって、なに?」
「開けてみて」
同級生が何か急かしているように見えた。久美子は、開けて見た。あちこちに、クラスメイトからの寄せ書きが書いてあった。
「これって…」
久美子は、感動で泣きそうになっていた。
「誕生日、おめでとう」
久美子は、渡してくれた彼女に抱きついた。
「ありがとう」
屋上には、再び5人のみとなった。
「誕生日って、俺達教えたっけ?」
「教室の一番後ろに貼ってあるよ。それをみたんじゃないかな?」
久美子は、青空を見上げていた。ただ単に、どこまでも澄んだ青空を…




