第6話
戦乱は、常に大きく広がる。しかし、必ず終わるものである。私はそう考えていた。みんなもそう、その終わるための鍵は、最も身近にあった。
戦争が、さまざまな場所で悪影響を出し始めた時、倹約と言う言葉が流行った。いまでも、政府がその事を盛んに言っている。そんな中、司、美春、達也、玉緒、久美子は、校長室に呼ばれた。
「何の用でしょうか?」
司が代表して聞いた。
「久美子についてだけど…」
「ボク?」
「久美子はロボットと言う事を、前にも話したでしょ。それで、久美子も、この叛乱側に加わる恐れがあるの」
「ちょっと待ってください!」
口調を強くしている達也が言った。
「彼女は、旧世代よ。ロボット3原則の適応期間外なの。いいえ、そもそも、それがあったとしても、彼らの言い分どおりだとすると、それも意味がないでしょうけど」
「久美子は、どうなるんですか?」
「理事会の諮問は、廃棄にするべしと言う事だったの」
「じゃあ、久美子は、殺されるのですか!?」
今にも掴みかかる勢いで、玉緒が言った。
「殺されるのじゃないの、廃棄といったでしょ。人間からみると、ロボットは物。それが通例よ。そりゃ、私だって辛いわよ。なにせ、久美子の産みの親の一人だもの。でも、理事会の諮問は、この学校の運営に係わっているの。彼らの意向を無視する事はできない」
「久美子を助ける方法はないんですか?」
美春が、校長に聞いた。しかし、彼女は、首を縦には振らなかった。
「久美子の事は、あきらめてもらうしか…」
「いや、道はあります」
司が言った。
「元はと言えば、自分が久美子を起動してしまった事が原因。だとすると、彼女が殺されるのも、自分の責任です。彼女は、自分が引き受けましょう。これからの事、一切」
司は、他の4人を見て言った。
「美春、達也、玉緒、手伝ってくれるよな」
彼らは、少し考えてから言った。
「仕方ないわね」
「やるっきゃないでしょ」
「できる限りの事はする」
司は、その答えを聞いてから、校長を再び見た。校長は、ため息をついてから言った。
「…これからが大変よ。それに、理事会は退学を求めるでしょう」
「自分達も、退学しましょう」
「ちょっ、待ってよ……」
しかし、司は、美春の反論をもろともしない顔つきをしていた。美春は、その顔を見て、何も言わなかった。
翌日、久美子の退学が正式に理事会で決定されると、それにあわせて、司、美春、達也、玉緒も退学届けを提出し、受理された。
「さて、これで晴れて中退生だな」
「あまりうれしくないけどね」
「ごめんね、ボクのせいで…」
「久美子は、何も気にするな。悪いのは、理事会だ」
司達は、いつの日にか来た、海岸に来ていた。
「親に怒られるし、まあ、仕方ないね」
5人は、沈み行く夕日を見ていた。
辺りが暗くなってから、あることを思い出した。
「そう言えば、これ、もらったまんまだった」
司は、背負っているかばんから、分厚い本を取り出した。みんなは、司の周りに集まった。ちょうど、街灯の明かりで、文字もはっきりと読む事ができた。
「それは?」
「久美子の取扱説明書らしい。一回も開けた事はないけども」
目次だけで、50ページは軽く超えていた。
「あった。緊急時用パスワード一覧表」
さらに、それを読み解いていくと、久美子には、鍵が入っている事が分かった。
「この鍵は、メインコンピュータの鍵とリンクしており、その、封印されている区域を開ける事ができる」
司は、そこに書かれている文章を読んだ。そして、そのパスワードも。
「パスワードは…」
司は、立ち上がって、久美子の手を両手で握り、しっかりと目を見て言った。
「お前の事が、世界の誰よりも好きだ」
その瞬間、久美子の目の焦点が定まらないようになった。司達は、読み取りが終わるまで、ずっと、辛抱強く待った。
「ふう、終わったよ」
久美子は、なんともないようだった。
「大丈夫なのか?」
「うん、平気」
司が、聞いた。
「しかし、あんなパスワード、よく言えたな」
達也が言う。達也は玉緒の手を握り言った。
「お前の事が、世界の誰よりも好きだ」
「あたしもよ」
二人は、そのまま抱きついた。そんな二人をほったらかしにして、久美子と話を進める司と美春。
「どんな情報があるの?」
「今おきているロボットの叛乱を鎮める方法」
一瞬で、久美子の周りに4人は集まった。いつになく真剣な顔をしている。
「どうやってやるんだ?」
「特殊な信号を、何でもいいからロボットに送り込んで、それから伝播させていく。そうすると、その信号を受け取ったロボットは機能停止すると言う仕組み」
「その信号は?」
「ボクしかしらない。だから、最初はボク。でも、相手のロボットがいない」
「何でもいいんだよな」
「うん、叛乱の組織に加わっているという条件がつくけど…」
「じゃあ、単純だ。敵国に乗り込めばいい」
「全然単純じゃないよ」
達也が出した意見は即座に却下された。しかし、他に案が思い浮かばなかった。
司達は、どうにかして、海軍の船にもぐりこみ、敵国に侵入した。そして、ばれないように偽装しながら、船から下りた。その後、彼らは、軍や他の優秀な機関ですらできなかった、叛乱の収拾を実現させる。




