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第3話

彼女が、目覚めてから、ずっと、彼女は、自身と同じ存在を探していたと思う。でも、もう、この世界にその存在はいないのに…


「じゃあ、教科書開いて、え〜、32ページ」

「ロボットの叛乱…」

この授業は、哲学科学、つまり、人間についての本質を追求する、哲学に、科学的な、心理やその他の人間行動学を交えながら説明をするという、基本的に、非常に眠くなる授業。でも、私達は、今日の話題に眠くならなかった。


「今から、35年前、とある研究所で作られたロボットにのみ伝染する病気、ロボット病によって、共通の意識を持ったロボット達が、人間世界に対して「ロボットに対しても平等を」と言って、戦争が起こったわね。今回は、その事について、考えていきたいと思います。では、まず、このロボットの叛乱について、ちょっと話しましょうかね」

そう言って、先生は、その事について、簡単に説明を始めた。

「みんなは、もう、歴史の授業で習っているはずだけど、あの先生の話し方は、眠くなるからね、もう一度話しておきます。さて、35年前のこと、あなた達が生まれる、30年前、感情を共有すると言う名目で、政府が作り、そして、歴史の中に失われていった、R-5963。彼らは、世界で最初の自律した知能を有するロボットとして、この世界に公表された。当時の開発者は、このような事になるとは思っていなかったでしょうね。さて、この、R-5963は、全世界で、400万台作られたの。でも、その一方で、裏社会では、彼らを効率よく、コントロールする方法を編み出していたの。それが、通称ロボット病と呼ばれる、ロボットのみに感染するウイルスだったの。このウイルスを今でも有しているロボットは既にこの世界にはいないと言われているわ。さて、このウイルスに感染すると、全ての人格が、ひとつにまとまったの。その名前が、若草久美子。あら、偶然?若草さん、同じ名前なのね」

久美子は、ちょっと驚いて、しかし、本性を隠す事が優先すべきことと考え、

「偶然でしょう」

とだけ言った。


授業は続いていた。しかし、突然の睡魔に襲われ、不覚ながらも眠ってしまった。


「はい、じゃあ、今日の授業は、ここまで」

先生は、教室から出て行った。その時、誰かがいない事に気がついた。

「あれ?宮崎は?」

司は、周りを見渡した。

「ああ、彼なら、今日は、お母さんの3周忌でお休み」

玉緒が言った。

「そうなのか?」

事情を知らない、司は、美春に聞いた。

「そうよ。あ、そっか。司、知らないんだった…」

その時、後ろから聞いてくる声があった。

「3周忌って、なに?」

久美子だった。

「誰かが死んでから、翌々年にする、法事の事だよ」

「死ぬって、なに?」

久美子が再び司に聞いてくる。しかし、司は、その返答に困った。

「う〜ん、死についての概念の説明って、難しいからな…何かないかな…」

「………」

久美子が、こちらをじっと見ている。司は言った。

「例えば、久美子が、今、周りに友達がいなくなったとする。その時、どんな感情が出てくる?」

「…多分、哀しさだと思う。それと、今までの思い出、友達だったから…」

久美子は、何か思い当たるものがあったらしく、少し考えていた。

「もしかして、ボクが寝ていたときに、ボクの仲間がみんな消えてしまった、あんな感覚なのかな?」

「一番近いだろうね。その感覚が、死の概念だよ」

「ちなみに、辞書によると、死というのは、生活機能が復活しない状態のことを言うみたいだね。でも、細胞レベルで生きていたら、それは、まだ死んでいないと言う事になるみたいだけど」

「精確には、死の概念は時代と一緒に変わるものだからね。一概に言えないけど、さっきの感覚が近いんだ」

玉緒を司が交互に説明をしていた。久美子は、何かを考えているようだったが、何かは分からなかった。


家に戻り、5人で机を囲んでいる時、久美子が言った。

「…今日言っていた、死についてだけど…死ぬ事って、怖い事?それとも、いい事?」

「宗教的にみても、死ぬ事と言うのは、いい時と悪い時とがあるから、さっぱり切れているわけではないよ。学校でも言ったけど、死については、いろいろな事が言えるから、分ける事ができないね」

司が言った。久美子は、ずっと、何かを考えているようだった。その顔の下に隠されたその情報は、まったく、分からなかった。


夜、それぞれの家に帰ってから、ふと、久美子は言った。

「もしも、ボクが死んだら、司達は、悲しんでくれる?」

「ああ、そう思うよ」

司は、久美子の質問に対して、ほとんど何の反応もなく答えた。

「そっか…」

久美子は、少し微笑み、彼女の部屋に戻った。


翌日、久美子は、何事もなかったかのように、登校した。その胸の中の気持ちを、全て伏せて、そして、これからおこそうと思っている行為全てを、誰にも話さず、ただ、一人、胸の中にしまいこんでいた。

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