表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
16/16

第16話

キリオテテスに侵入した一行を見届けた、上空の監視衛星を操っている事務局、人類圏総合指令センター長兼校長の、渡辺眞里子は、その情報を、全ての大陸支部に伝送した。そして、各軍の被害状況の確認を問い合わせた。


「アジア大陸、既に、3分の2以上を侵略され、20億人以上がやられました」

「アフリカ大陸は、今のところ主だった被害はありませんが、これからが問題だと思います。すでに、中近東からエジプト方面へと、着実に、侵略を進めています。現在の所、アフリカ出身の兵は、1億人弱被害にあいました」

「アメリカ大陸は、さまざまな種類の爆弾が雨のように降ってきており、10億人がやられたという情報があります」

「ヨーロッパ大陸は、地中海東部の方向から、徐々に侵略が始まっています。今の所、2000万人程度が死亡したという情報があります」

「オセアニア大陸については、現在、電波異常の影響で、通信途絶中です。何かあれば、連絡を」

校長が、オセアニア大陸について伝えた。そして、全ての大陸支部に対してこう伝えた。

「先日伝えました、司君達、この高校の卒業生達のキリオテテス侵入について、まったくそれ以後の情報はありません。この戦争に勝つためには、さまざまな障壁を乗り越え、人類圏として一体化して戦う必要があると思われます。それを考慮すると、この時点で、世界政府として、人類圏国を作るべきだと、私は、ここに、公表します」

「人類圏国…国連の枠組みをさらに広げるようなものか?」

「そう考えてもらっても構いません。ただ、私は、それが必要だと思います。それぞれの、支部で話し合い、国連臨時総会場である、この高校に、伝えてください」

そして、校長は、画面と音声を同時に切った。

「ふー」

疲れたように、一気に息を吐き出した。

「あの子達は、大丈夫だろうか…」

気が付くと、つぶやいていた。


司達は、あの通路を抜け、建物の中に入っていた。重力場の中は、けっこう、過ごしやすかった。さまざまな種類のロボット達が動いており、あちこちで、戦闘に出動するためのロボットが動いていた。

「ここで待て」

そして、ロボット達は、そのまま、どこかへ彼らをおいて行った。

「どうしようか」

「この場所を動いたら、なにをされるか分からない。だからこそ、こんな、道のど真ん中において行ったんだと思う。どこからでも、不審な動きをした途端に、狙撃できるように」

確かに、この周りには、比較的高い建物が集中していた。そして、この道路の交差点を中心として、町は、構成されているように感じた。しかし、この都市の大半は、ロボットの組み立ての為の工場群にみられた。

「総力戦だな…」

司がつぶやいた。そして、周囲を見回した。先ほどから完全に形が変わらない基本的デザイン。直方体の棒が、あちこちに長さを変えて育っているような感覚を受ける町並み。どこもかしこも白一色で、何も楽しみがなさそうな世界。色が付いているのは、空と影とロボット達だけだった。

「よくこんな場所で生きてられるね。俺は無理だな」

「人間には耐えられないと思うね。こんな世界は」

「そして、我らは再び戦う」

話している時、突然後ろ側から、そんな歌が聞こえてきた。

「そして、我らは再び戦う。何も無くなりし時、手を差し伸べるものに対して、何も消え去りし時、友情を語るものに対して、何もかも見失いし時、暖かさを授けてくれるものに対して、気を付けよ!世界は既に動いている。神々は、見守ってはくれぬ。運命こそ、我らの自由なるもの。気を付けよ!世界は常に動いている。神々は、我らを見放す。全ての物は、我らが手にすべし物」

そして、歌は終わり、そちらを振り返った。そこには、人がいた。

「ようこそ。キリオテテスへ。我が、この世界、ロボット共和国首相の神野口治田(こうのぐちはった)だ」

「これはどうも」

司は、神野口を睨みつけた。そして、言った。

「さあ、我が首相官邸へ。招待しましょう」

彼らは、招かれるがままに、とにかく行くしかなかった。


「ここが、首相官邸?」

そこも、白い直方体だった。窓の一つも外から判断できなかった。

「そうです。上原さん。さあ、中へどうぞ」

周りは、銃を持ったロボット達で囲まれていて、逃げ出す事はできなかった。司達は、中に入るしかなかった。


「それで、なぜ、あなた方は、このロボット共和国首都である、キリオテテスに入ると言う、暴挙をなされたのですか?」

「きつい事を言いますね。自分達は、あなた方と和睦をするために来たんですよ。人類圏国の使節としてね」

「なるほど。おっしゃる事は分かります。なにせ、既に人類は駆逐されているのですからね」

彼が指を鳴らすと、そこに、スクリーンがするすると降りてきて、それに、世界地図が表示された。そこには、青と赤、2色のコントラストで表示された地域分けがされていた。

「これは?」

「青が、我が軍。赤が、君達の軍だ。今、世界の領土の半数が、わが国のものだ。残りも、すぐに我々の手の中に入るだろう。世界は、もうすぐ、我の物になる」

「…どうでしょうか。ロボット共和国と人類圏国の戦争は、そちら側次第によっては、この世界は、何もかもなくなるほどの核戦争になるでしょう。人間どころか、ロボットが、動く事すらできない事になる可能性もあります。そんな世界にいたところで、神野口さんは、楽しいですか?それとも、たった一人で、誰も周りにいない状態こそが、望むものなのですか?」

「…」

久美子に諭されるように話されて、何かを考えているようだった。

「あなたは、ロボットの何が分かるのですか?」

「私自身がロボットです。だから、逆に、人間の考えることの方が、よく分かりません」

「……いいだろう。だが、条件がある」

「どのような?」

「ロボット共和国側の領土については、人間が住めないと思われるものを相談の結果決定し、そこを全て領土とする。それと、その領土の管轄権は、完全に我らの手の中にあり、全ては、我らの法律、条令、その他いろいろの指定されたものについて従ってもらう。人間圏については、ロボットについて、優勢であるための法律を施行してもらう」

「最後は受け入れられませんね。だが、人類とロボットの平等を言う事なら可能ですね。それを守らせるために、双方から一定の人数を出し合い、評議会を結成し、そこに全ての権限を集中させると言うものも、可能です」

「決まりだな。ロボット共和国首相、神野口治田。それに、人類圏国特別大使代表、上原司。それぞれが交換文書を交換し、世界を一つの政府によって、変えるべきだろう」

この時、神野口の心の奥底には、何かを考えているかどうか分からなかったが、それを叶えられる事はなかった。交換文書調印式には、さまざまなところから、人々が集まった。戦争は、こうして終わった。


「やれやれ、ようやくの母国だ」

「司!あれ!」

海軍の船で送られた、司達は、何ヶ月ぶりに帰ってきたか分からなかった。この戦争によって、世界中の人口は、戦争前の1%になった。その一方、ロボットの数も、戦争前の3%になっていた。美春は、船から降りる時の、人々で、地面がまったく見えなくなっている、その場所に降りた。

「どうしよう…こんな事になってるなんて…」

人々は、口々にこの戦争を終わらせた人たちを祝福した。

「万歳!万歳!」

声は、一つの言葉を天にまで届く勢いで言っていた。


ロボット共和国と人類圏の和睦が成立してから1年後。正式に、条約が締結され、戦争は正式に終結した。そして、一時的に、世界政府が樹立された。ロボット共和国と人類圏国の間に立ち、さまざまな仲裁をする機関として、世界政府の全権を握る機関としての、評議会が結成された。そして、そのメンバーの中には…


1年前、あの戦争を終わらせた、上原司、桜井美春、宮崎達也、東間玉緒、若草久美子、箱根宥嶽、上原小太郎、上原高戸、宮崎領一、宮崎戸酉、宮崎毬亜、計11名の総称として、呼ばれ始めた尊称であった、11人の英雄達と言う呼び方は、すでに、全ての人々の中に浸透していた。そして、彼らが、人間圏側の代表として、評議会の中に入った。

「中央評議会を開催するこの時にあたり、世界は、混沌の中にある。それを救い出す事がこの評議会の目的である。戦争によって、さまざまな地域、人、ロボットが、傷つけあってきた。その事をかんがみ、この世界は、人類=ロボット国として、再統一をする必要があると思う。だが、今はその時期ではない。時期が来れば、自ずから、今のように連邦制を敷かずとも、どうにかなるだろう。現在、ロボット側の領土は、全地表面の6割。残りは、人類圏側の領土になっている。この評議会は、第1回開催時に、首都の決定、領土の確定、ロボットと人間の境目に付いて協議する事になっている。今回は、首都について…………………………」

こうして、第1回会合では、首都や領土についてが決定された。


首都については、爆撃を受けた、ニューヨークが制定された。ここには、国連本部ビルがあったからである。一時的に、その建物を借り、第2回目以降の会合を定期的に開いた。


そして、ちゃんとした建物が建設され終わってから、ちょうど、第15回目の会合の時に、正式に、協議会は、世界政府ビルの中に作られた部屋に入る事が出来た。


その後、3年経ってから、世界政府発足から18年後の時、評議会は、その役割を閉じ、新たに、人類=ロボット国として、一つの国として再発足した。その政府は、あの、評議会の面々と同じだった。


「こうして、新しい世界へ踏み出す事が出来たのも、ここに集まってくださり、これを見てくださり、何もかも、全て、人類とロボットの協調の賜物だと考えております。これを以て、世界政府はその過渡的役割を閉じ、人類=ロボット国として、正式に、一つの国として世界を牽引して行く事になるでしょう。この偉大なる時に、我らは生きることが出来ました。これからの事は、今、子供である、次世代へ引き継ぐ事になるでしょう。我々は、政権から去ります。しかし、この偉業は、人々の心から去らないでしょう」

そして、世界政府の人々は、人類=ロボット国の方へ、さまざまな権限を移譲した。評議会は、解散した。


「やれやれ、これで本当に終わりなんだな」

さらに、何年も経った時、どうにか一軒家を買うことに成功した司と達也が、懐かしむように言った。

「なに?懐かしいの?」

お隣同士になった彼らは、地下室を作り、そこをそれぞれの家の下にまで広げた。地下室には、掘りごたつを作り、みんな、そこでいろいろ話をしていた。

「いやいや、懐かしいの懐かしいんだけどね…」

その部屋には、久美子と宥嶽がいなかった。

「久美子達は、元気にしているかなって…そう思ってね」

「彼女達は、大丈夫。今でも、人類=ロボット国閣僚として、生活をしているみたいよ」

すでに、子供達は、独り立ちしており、この地下室には、司、美春、達也、玉緒しかいなかった。時々、子供達も来るのだが、それでも、めったに来なかった。


「どうも、こんにちは」

久美子が帰ってきた。

「あれ?久美子。政府の方は、どうした?」

「ん?大丈夫。あっちの方は、今休暇中なの。それを利用してここに来たんだ。宥嶽は、研究所の方に向かうって。自分が生まれ育ったところをもう一度確認したいからって」

「なるほどな。まあ、入れよ」

そして、再び、5人になった。


「久しぶりだな。この5人が揃うのって。高校にいた時、自分が間違って開けた久美子のあの機械。あれが、全ての始まりだったのかな?」

「小さい一歩も、時には、未来を変える力を持つの。どんなものが、未来を帰る事になるかは、後々にならないと分からないけどね」

「校長、今も元気だと。あの人も変わらないね」

「とりあえず、私が、司に告白したのも、達也達が付き合っているって知ったのも、全部高校時代なんだね」

「そう言えばそうだな。あの時は、小さな恋だと思っていたけど、今考えたら、アレこそが、真実の恋だったんだな」

「うまい事言うね〜。達也。さすが、あたしがほれ込んだ男だよ!」

「…まだ酒も飲んでないぞ?もう酔ってるのか?」

「あたしは、酔い易いんだ!」

そして、夜は更けていった。


ビールを片手にまだ起きているのは、司と美春と久美子だけだった。達也と玉緒は、その場に突っ伏して、眠っていた。

「やれやれ、この二人はよく寝るね」

「それは、しょうがないな。寝る子は育つ。ただそれだけさ」

突然、久美子と美春が、両側から司にもたれかかってきた。

「大好きだよ。司」

「私も」

「ちょっと、二人とも酔ってるのか?」

そして、同時に言った。

「うん。ちょっとね」

そして、笑った。世界が、いくら変わっても、どんな事が起きても、この事は変わらない。そう思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ