第10話
宥嶽と久美子が出会ってから、さらに数年が経った。司は、ようやく医師免許を取得し、インターンに入っていた。美春、達也、玉緒、久美子は、達人の下で、研究に力を注いでいた。一方で、美春と司、達也と玉緒は、それぞれ、結婚をした。ちょうど、1年前だった。
「どう?うまくいってる?」
美春は、ほとんど毎日、夜、家に帰ると司に電話をかけていた。まだ、実家にいた。
「ああ、だいじょうぶ。自分の事は気にするな。今日は、内科の方にまわってきた。外科とかは、まあ、血を見るのが好きではないから、あまり…な。そっちの方は、どうなんだ?」
「うん、こっちも大丈夫。宥嶽君は、元気にしてる?」
「同じところでインターン中。あいつは、外科の方に進むって言ってるから、そのまま、行くだろう。久美子は、どうしてるんだ?」
「今の所は元気。時々司のことを思っているみたい」
「……まあ、いいや。分かった。じゃあ、また明日」
そして、司側から電話を切った。今までと変わらない、普通のやり取り。これからも、これは変わらないと思っていた。しかし、変化は、隠れてくるものである。
それは、突然の情報だった。
「聞いたか?日本政府が、正式にロボットを製造する事に決めたらしい。しかも、中身は、発展型アルゴリズムを採用したロボットと言う事にするらしい。久美子と宥嶽は、ちょっと用心しとくべきだ」
「どういう事ですか?所長」
達人は、その情報を手に入れてすぐ来たらしく、息切れを起こしていた。落ち着いてから、続きを話し始めた。
「久美子と宥嶽には、この採用されたものとまったく違う、当時でも知る人は研究者のみだったと言うプログラムを採用している。いまでは、君達も知っているが、それぐらいだ。しかし、彼らもロボットであり、さらに、一般人と同じような行動をするが、他方、新たに採り入れられたプログラムは、久美子、宥嶽に対して、政府が破壊する命令を出した場合を考えてみろ。ロボットの叛乱、第1次も2次も、両方ともだが、あれは、旧式のロボットが起こしたものだ。旧式のロボットを破壊せよと言う命令が下された場合は、彼らは従うだろう。何の躊躇もなく」
「じゃあ、久美子と宥嶽は、どうすべきなんですか?」
「君達が一番良く知っているはずだ。君達が最後の砦だ。二人を、よろしく頼んだ」
所長は頭を下げた。
「分かりました。では、久美子はいいとして、宥嶽の方はどうするんですか?あのままだと、いつ攻撃されても文句の一つも言えませんよ」
「そこにも策は既に仕込んである。まあ、見ときたまえ」
そのまま、所長はどこかへと出て行った。
翌日、司と宥嶽が、研究所を訪れた。
「どうも、インターンが終わった、司と宥嶽です」
「今日から、君達も、この研究所に勤める事になった。みんな、仲良くするように」
「いや、みんなと言っても、ここにいる全員が顔見知りですし…」
「そう言ってはいけない。とりあえずの、社交辞令って言うやつだ。さて、君達と共に、今日から、この二人も作業に入る。今の所、どこまでできているんだ?」
美春が、そこにいた。他の人達は、研究室にこもっていた。
「はい、38%が完成しました。理論から入ったので、思ったより時間がかかったんです」
「言うよりも先に、考えるべし。考えるよりも先に、行動すべし。さあ、やろう」
彼らは、医学の知識と、ロボットの知識を組み合わせ、新たなるものを生み出そうと考えていた。それこそが、第3世代のロボットであり、なおかつ、ロボットと人間の共存に役立つと言う事を願いながら…
「で、結局、どこまでできてるの?」
司が、美春に聞いた。
「うーん、あんまりできてない…理論は完成しているから、とりあえず試作機を作ってるところ。モデルは、久美子よ。今の所、38%が完成したの」
「って言うと、どのぐらい?」
「外見と神経系と筋肉系と骨格ね。後は、それぞれを組み合わせて動作する方法とか、そんなプログラムを組み込むんだけど…」
「それだけで、残りの62%になるのか」
「そうなの。プログラムって、思ったよりも難しいからね。今は、ただひたすら基礎部分を打ち込んでるだけ。それで、毎日毎日、10時間ぐらいパソコンと向き合ってるから、すごく目がいたくて…」
「湿らせたタオルを目の上に当てて寝るといい。結構気持ちがいいから」
「分かった。ありがと。じゃあ、司と宥嶽君で、ロボットに必要なものを考えて。基礎部分のプログラムは終わったんだけど、上位部分、つまりは、本能より少し上の理性の部分について今みんなで考えてるんだけど…」
言いながらも、3人は、美晴達が詰めている研究室に到着した。
「ここが、私達の研究室。特別に、1部屋当ててもらってるの」
「基準が分からないから、なんとも言えないな…」
「もう、司ったら。こんな措置が取られるのは、異例らしいわ。一年目から、こんな部屋が割り当てたれたんだけど、最初は掃除からだったわ」
美春が、部屋を開けると、達也、玉緒、久美子が、机に敷いてある、白紙の紙を見ていた。
「…………」
その光景は、結構怖かった。
「どうしたの?」
「なかなか、妙案がでなくてね」
「ロボットに必要なものだろ」
司が言った。
「そんなもの、決まってるだろ?」
「え?なに?教えて」
「それは人類との共存だ」
その時、みんなの顔が、明るくなった。
「そうか、それだな」
「確かに、決まっているわね」
「じゃあ、それを軸にして、プログラムだ。司達も、手伝いに来たんだろ?」
「いや、自分達は、プログラムが打てないから、見てる事しか出来ないな。まあ、何かあったら言ってくれ。できるだけはしよう」
「ま、よろしく、だな」
こうして、司が出した意見が採用された。これからのロボット産業は、政府が出したプログラムと司が出したプログラムの二つに分かれる事になる。




