第1話
桜が色つき始める季節。私は、高校に入学した。今までの中学校とは比べ物にならないほどの、異質な空間、時間が流れている場所。これから、私は、どんな事して行くんだろうね。
上を見上げてみると、私を祝福するように、澄み切った青空が広がっていた。
「ふぁ…」
周りの目を気にせずに、1回、大きく伸びをする。
(昨日はあまり眠れなかったし…)
昨日のことを思い出すと、今日の事が気になりすぎていて、なかなか寝付けなかった私の姿を思い出す。それをかき消すように首を横に振り、気合を入れた。目の前には高校の校舎と校門があった。
「よ〜し」
新しい一歩を、大きく踏み出した。
それから、1ヶ月がたった。高校生活にもなれ始めた頃、転入生が来た。私が教室に入ると、その噂で持ちきりだった。
「あ、やっと来た」
「おはよ、玉緒ちゃん。どうしたの?」
「どうしたのよ?じゃないよ。今日、転入生が来るんだって」
「ふ〜ん。そうなんだ」
そして、椅子に座り、かばんを自分の右に置いた。
「そうなんだって、美春は、興味無いの?」
玉緒は、美春の机に手を置いて、彼女の目を見ながら言った。
「うん、全然ない」
何も気にしないような感じで返した。
「じゃあ、今日の転入生の名前は、上原司っていうっていうのも興味ないんだね。美春の幼馴染の」
「え?司が?」
司は、小学校の途中でいなくなってから一回もあった事がなかった。そして、美春の初恋の相手が、司だった。しかし、何も言わずにいなくなったので、まだ、彼女の胸の中には、わだかまりみたいな物があった。
「そう、彼、またここに戻ってくるんだって」
しかし、美春は、玉緒の話を聞いていなかった。
(司、帰ってくるんだ。でも、どうして今なんだろう。もっと、早く帰ってくる事も出来たかもしれないのに)
そんな事を考えていたら、チャイムが鳴った。
教室の前の扉が開き、先生が入ってきた。教室の窓は全て閉められていて、外の事が見えないようになっていた。
「はいはい、みんな座ったね。じゃあ、もう知っているかもしれないかもしれないけど、今日から、転校生が入る事になった」
そして、先生は、扉の外にいる転校生を呼んだ。彼は、一番前に立ち、1回お辞儀をしてから、言った。
「今日から、皆さんと一緒に机を並べさせてもらう、上原司です。よろしくお願いします」
そして、また1回お辞儀をした。先生が彼の横に行って、美春の横の空いている机を指差した。
「じゃあ、彼女の横に座って。はい、じゃあ、朝礼終わりだから、一時間目の準備しといて」
そして、先生がいなくなると、すぐに彼の周りに人垣が出来た。矢継ぎ早に質問する中に「なあ、上原って、好きな人とかいたりする?」と言うのもあった。
「そんな、急に聞かれても…今日、始めて来たのに…」
「ふーん」
気づけば、美春の横に、玉緒がいた。
「ね、チャンスよ。彼、まだ誰の事も好きとか、決めていないみたいだから」
「そんな、チャンスとかなんて…そんな事言ったって…」
美春は自分の足の上に置いた手の平をみた。指同士を絡めるようにする。
「そんな事、言ったって…」
「とにかく、早くしないと別の人に取られるかもよ。なにせ、彼、かっこいいからね。他の男子と比べて、髪の毛も整っているし、それに、インテリっぽいメガネかけているしさ。あ、でも、あたしより、足は短いかな…まあ、そんなことよりも…」
玉緒はそこで言葉を濁し、少し考え込むようなそぶりを見せた。そして、あることを思いついたようだった。
「ね、告白するいい場所、教えてあげる」
「え?もう?いいよ、私、彼に聞くのが怖いし…」
横からは、未だに彼に質問している声が聞こえていて、気づかれる心配はなかった。
「大丈夫。そんな事もあろうかと、ほら、これ使いな」
玉緒の手の中にあったのは、便箋と鉛筆だった。
「これって…もしかして…」
「そう、そのもしかしてよ。これで、告白文を作って、机の中に閉まっておくのよ。それで、彼が気づけば、中をみるはず。そしたらもうこっちのものよ。あとは、手紙に書かれている通りの場所に行くはず。そしたら、後は、あなたの番よ」
「でも、もしも、拒絶されたら…」
「そんな事は考えない。さあ、ほら、文面は私が考えてあげるから、言った通りに書きなさい」
「うん、分かった」
そして、美春は、玉緒の言ったとおりの事を書いた。
そして、一時間目が終わり、彼が席から離れた時、美春は彼の机の中にその手紙を入れた。
その日の放課後、玉緒が言った場所にいると、誰かが近づいてきた。
「えっと、「あなたの事が好きでした。私のことが好きならば、体育館裏の用具箱の前で待っています。桜井美春」あいつが、自分の事を好きだった?はは、まさかな…」
司は、その場所についた。目の前には、確かに、自分の幼馴染の桜井美春がいた。
「あ…」
「手紙、読んだ?」
「ああ、読んだ…これ、本当か?」
「…うん。私ね」
玉緒が司に近づく。司は動かずに、何がおきるか分からなかった。そのとき、玉緒が、少し顔をあげて、キスをした。そして、
「私ね、あなたのことが、前から好きだったの。だからね、私と付き合って、くれる?」
司はめがねを外して言った。
「ああ、いいとも」
「本当!?」
「ああ、本当だとも」
その時、用具箱の裏から、誰かでて来た。
「やっと、終わった?」
「みたいだな」
出てきたのは、玉緒と、同じクラスで、玉緒の前の席に座っている、宮崎達也だった。
「え?なんで二人ここにいるの?」
「決まってるでしょ。あんたが、もしも振られた時のために、ここで待機していたのよ。すぐに慰めれるようにってね」
「だが、それも用無しだったようだな」
「って言うか、なんで二人そんな場所に隠れているんだよ」
「この場所を教えたのが、この俺だからさ。玉緒も知らなかった場所だからな。さすがに、屋上という手もあったんだが、確認すると、あそこに通じる扉は緊急時以外開かないからな。それで、ここにしたんだ」
「で、達也は玉緒のなんなの?」
「俺か?俺は、玉緒の彼氏だ」
そして、二人揃って、
「えー!」
と叫んだ。
「なんで?いつから?」
美春が玉緒に迫った。
「まあまあ落ち着いて。ちょっと前に、彼の方から告白されたのよ。付き合おうって。それからね」
「しかし、身長差がでかいぞ。玉緒の身長が、160弱で、達也の身長は、170強だよな。よくそれで付き合う決心したな」
「人それぞれ。人生も一回しかないし、楽しまないと。高校時代も、ね」
美春は、玉緒を見ていた。達也は、空を見ていた。司は、何かを見ていた。それが何なのかは、分からないが、ずっと先の方、未来を見ていたのかもしれない。




