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作者: piero

 彼の目の前にいたのは彼自身であった。彼は目の前の彼に違和感を覚えた。何とも奇妙な違和感だった。彼がその違和感の正体に気づく前に目の前の彼は言葉を発した。その言葉の細かな内容はわからなかったが、どうやら自分への悪口の類であるらしいことが彼には理解できた。だが、彼はなぜだか不快にはならなかった。いや、そもそも、それを聞いて何も感じていなかったのだ。ただ淡々と自分から自分への悪口を聞いている。逆に、目の前の彼は辛そうだった。悪口を言うたびに自分自身をナイフで刺しているような、そんな感じがあった。しかし、それでも彼は何も感じない。

 彼は目を覚ました。枕もとの時計を確認する。目覚ましのタイマーが鳴る五分前だ。彼は今日がいい日になることを疑わなかった。

 彼は恐らく人生最悪であろう一日を終え、帰宅した。もう何もしたくなかった。彼はそのまま眠りについた。

 彼の目の前にいたのは彼自身であった。彼は目の前の彼に違和感を覚えた。まず気づいたのは目の前の彼がナイフのようなもので何かを刺しているということだった。彼にはその何かが人に見えた。彼の見知った人に見えた。彼は胸が締め付けられる思いだった。彼は叫んだ。やめろと。お前はなにをしているんだと。目の前の彼はさっきからこちらを見ている。しかし、まったく表情を変えない。彼は茫然とした。ただその光景を見ているしかないのだ。彼は何もできない。


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