第1部 (6)
人間は自己の世界を経験すると、人は言う。これは何を意味するか。人間は諸事物の表面を行き来し、それを経験する。彼は諸事物の性質についてのある知識、ある経験をその事物から得る。彼は諸事物に関するすべてのことを経験する。
だが、諸経験だけが世界を人間にもたらすのではない。何故なら、諸経験は〈其〉と〈其〉と〈其〉から、〈彼〉と〈彼〉と〈彼女〉と〈彼女〉と〈其〉から成り立つ世界だけを人間にもたらすからである。
私が経験するのは〈あるもの〉である。
もし人が死の神秘を鈍麻させようとする人類の欲求に由来する一時的な区別に従って、〈外的〉諸経験に〈内的〉諸経験を継ぎ合わせたとしても、そういうことでは何も変わらない。内的事物は外的事物と同じく、諸事物の中の諸事物なのだ!
私が経験するのは〈あるもの〉である。
そしてもし人が、諸事物の中に密封された仕切りがあって聖なるものが残されていると知り、それを鍵でこじ開けようとする例の自惚れた分別で〈明らかな〉諸経験に〈密かな〉諸経験を継ぎ合わせたとしても、そういうことでは何も変わらない。おお神秘なき密事よ、おお諸知識の堆積よ!〈其〉〈其〉〈其〉よ!