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目をつぶれば知らない世界  作者: まる○◎
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凪間

ぼくはじいちゃんが大好きだった。




だった、と言うと今は嫌いなのか?




もう好きじゃないのか?




そんなふうに思われるかも知れないけど、今までも、これからもずっと変わらず大好きなじいちゃんだ。





では、なぜ




だったと言ってしまうのか。






それはたぶん、もうこの世にいないからだ。






存在していない、過去の人物、という認識になってしまったから、ぼくはそんな風な言い方になってしまったのだろうと、思う。





自分でも変な感覚だと思った。




あれだけ好きなじいちゃんを、過去の人物だと。





もう今はそれほど好きじゃないような表現をしてしまっている自分に。




小さい時から親よりもぼくの面倒を見てくれたじいちゃん。



当然怒られた回数も沢山だし、なにより、褒められたり、色んなことを教えてもらったのもじいちゃんだった。






尊敬する人は誰ですか?





なんてことを小さい時に聞かれた気がする。





胸を張って



「じいちゃん!」




と言っていた。




じいちゃんに名前を呼ばれるのがたまらなく嬉しかった。



とても安心した。




本当にじいちゃん子だと、自分でも思う。







漁師だったじいちゃんはとても指先が器用だったし、海や近くの山に頻繁に連れて行ってくれた。




特に海で過ごすのが気に入ったぼくは、暇さえあればずっと海辺にいた。





夜明け前の少し肌寒い空気が、水平線の向こうからゆっくりと昇る太陽の光で暖められていく感覚や





テトラポッドの内と外で、全く違う顔見せる波間を不思議とワクワクしながら眺めたり


  

どこから来たのかわからない海風に、子供ながらの外国の拙い想像を巡らせながら体で感じる







そんな時間が好きだった。





すべてじいちゃんから教わったようなものだ。





じいちゃんが話すことはたまに難しいこともあったけど





話す内容も長いけど





同じことを繰り返すこともあったけど




それらは不思議と耳に、頭に入ってきた。





教えてくれた話に対してどんな質問をしたかも、もう覚えていないけど





じいちゃんは笑って聞いて、答えてくれた







テレビから流れる戦争の番組や、時代劇にはいつも熱の入ったお話しがあった。





戦争は特に。





熱、というよりかは



悲壮



決して戦争の話で笑顔を見せたことは無かった




それだけはしっかりと覚えている






あれは小学生のとき、社会の授業で戦争の勉強をしたときだ




何気ない、いつもの茶の間での雑談の1つで、戦争の話題をだした。





じいちゃんは一つひとつ、ゆっくりと、だいじに思い出すかのように言葉を紡いでいた




いつもとなにか違うと思った、私は片手間にしていたゲームを、いつの間にかやめていた。






そこで初めてじいちゃんが戦争に行っていたこと






遠く、厳しい異国の地で捕虜になっていたことを聞いた






仲間が何人も倒れていくなかで、無事に帰れたのはありがたいことだ




そう言って、部屋の鴨居のところに飾られていた賞状を見た。




当時の内閣総理大臣から賜ったものだった。




幼い私は何を感じたのか、何を思ったか、今となってはもう感じることはできないけれど





歳を重ね、見聞を広め




あのとき、じいちゃんが無事に帰ってこれたことで






今の私が生きていられるのだ





そう思えるようになった





私も今や2児の父になった







大好きなじいちゃんに会わせられなかったのが本当に後悔したが




仏壇や墓参りの際にはうるさいほどに伝えている



じいちゃんに教わったことは忘れない





私の生きる指針になるほどに影響を受けたこの思いを




この子達にうまく伝えられるだろうか




私の見ている目線で、じいちゃんも見てくれていたのかなと思うだけで





私は本当に愛されていたんだなと







今更ながら感じた





思春期のどうしようもない反抗期もあったけど




折れず、挫けず、諦めず、投げ出さず



感謝しかない










面と向かって言えなかったな









一緒に酒を飲みたかったな








当日グズって行かなかった旅行に、行き直したかったな








なあじいちゃん




俺はちゃんとやれてるか?






じいちゃんが育ててくれた俺は







ちゃんとやれてるかな









俺は胸を張って





じいちゃんの孫だ!






なんて言ってるけど









じいちゃんは言ってくれるかな







そんなわかりきったことを悩んでも意味がないけどさ





だから





俺は毎日言ってるんだ









俺の大切な、だいじな宝物だぞ!!






てさ。





うまくいかないことはもちろんある



けど



じいちゃんだったらどうするかな




なんて考えたら





気持ちが楽になるんだよ





不思議だよ





心のお守りになってるんだ。







じいちゃんを見送ってから




もうだいぶ経ったけど




今でも言えるように頑張ってるよ







俺はじいちゃんの孫だ!











これまでも






これからも死ぬまでも









子どもたちが今の俺と同じ年になっても







ずっと言えるように









昔一緒に見た







太陽の光を受けてかがやく




あの波をみながら





私は二人の手を握った






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