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秘密の花園  作者: フローラ
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入学の洗礼 2

修正済み洗礼2


1時間目の授業はロングホームルーム。マーリンの時間だ。



「そうねえ。

転校生蜜樹ちゃんを迎えたことだし、軽く自己紹介をしましょうかっ!」


「めんどくせーなー」



「コラッ。じゃあまずは私から。


改めまして、こんにちは皆さん。

今日からアンタ達の担任になる優しい先生、別名『ヒメリンゴの妖精』こと『草壁万理(くさかべまり)』よ。

1年間どうぞよろしくね。」



へえ、マーリンはヒメリンゴの花の力を持ってるんだ。


「どこが妖精なんだか…」




口々に言う生徒達に無言で威圧するマーリン。扱いに慣れてるな。



私以外の生徒は初等部から一緒だから、みんなお互いを知っているみたい。


そりゃ9年間も一緒の学園にいたら大体の顔は分かるよね。




「はーい、出席番号順にどんどんやっちゃって~。」



マーリンがそう言って、次々に自己紹介をし始める。


皆んな自分の花名と人間っぽい名前を言ってくれてるんだけど、どっちで呼べばいいのだろうか。




「ねえサンダーソニア。

ここの人達ってさ、花名と人間みたいな名前と、2つ名前を持ってるよね。どっちで呼べばいいの?」




するとサンダーソニアは、一瞬?という顔をしたけれど、すぐに思い当たったようで笑顔を向けてくれた。



「ああ、フラワーネームのことね。」


「フラワーネーム?」



「うん、蜜樹ちゃんが言うところの

『花名』のことよ。

私だったらフラワーネームは『サンダーソニア』で、名前は『葉山絵理香(はやまえりか)』。


んーとね、名前はフラワーネームとくらべて個人的なものだから、いきなり呼ぶと良くないかも。」


「へええ、そうなんだ…」



サンダーソニアの場合、サンダーソニアがフラワーネームで名前が葉山絵理香…って、



「私達同じ名字だったんだ!!」


「そうみたいだね。最初びっくりしちゃった。」



そう言ってふふふと笑うサンダーソニア。そうそう、これでこそ花御子よね。


サンダーソニアと同じ名字…なんか運命感じちゃう~。



ニヤけているとまた悪党1に睨まれた。しつこい男は嫌われるぞ。



するとサンダーソニアが立ち上がった。

ああ、自己紹介の順番が回ってきたんだ。


自己紹介を終えて椅子についたサンダーソニアは私を見てふわりと微笑む。



「これから私のことは絵理香でいいよ、私も蜜樹ちゃんって呼んでるし。改めてこれからよろしくね。」



!!


「あ、ありがとうっ。こちらこそよろしくね、絵理香っ!」



きゃーーーっ!!!!



女子高生っぽい!!!

いや、女子高生なんだけれども。


最初このクラスに入って来た時の印象が散々だったから、こういう素敵なやりとりはできないかもと半ば諦めていた。


ああ、本当にこの席でよかった。絵理香、マイオアシス!




自己紹介を聞いていると、さっき私に罵声を浴びせた悪党共とそうでない紳士淑女達が明確に分かる。


何故なら、悪党共は自分を紹介する間チラッチラと私にガンを飛ばしてくるからだ!



私がそいつらにイライラしていると。目の前に座っていた、黒髪をお団子にして、その中から三つ編みを垂らしている女の子が立ち上がった。


私の右隣の絵理香から、もう順番が回ってきたんだ。


それにしてもあの髪型ってどうやって作ってるんだろう。



「…大道香栖実(だいどうかすみ)アル。よろしくアル。」



…アルアル口調か。相変わらずキャラが濃い学園だ。


あれ、花が何かは言わないのかな?




膨れっ面でそう言って座るその子に、「フラワーネームはー?」とクスクス嫌な笑いを浮かべるのは、さっきから私にガンを飛ばしてくる悪党共。

嫌な奴はどんな時も嫌な奴だ。


何か言いたくない理由があるのかもしれないし、そっとしておこう。




そういえば、私の左隣とさらにその隣の席は空席だ。

一体どんな人達なんだろう。


初日から2度寝をする勇者かもしれない。だったら是非2度寝同盟を組みたいところだ。




「紅薔薇君とサクラ君は今は抜けてるわねっ…と、それじゃあもう全員自己紹介は終わったのかしら?


そうねえ、そしたら班にでもなってお話ししててちょうだい!

蜜樹ちゃん以外はお互い知ってるかもしれないけど、一応新しいクラスなんだしね。


私ちょっとやらないといけないことがあるのよね。じゃあ、よろしくね~!」



そう言って先生は私達を投げて、何やら自分の仕事をしに行ってしまった。


先生がいなくなった途端に再び喧騒を取り戻すクラス。

鳥カゴかここは!!!!


皆んな班にする気なんてさらさらないんだね。



「蜜樹ちゃん、この学園のことで何か聞きたいことはある?」


「ああ!えっとね…実はまだ聞きたいことがよく分からないんだ。」



絵理香が話しかけてくれる。


すごくありがたいんだけど、まだ質問ができるほどこの学園のことを知っていない。


あれだ、勉強が分からない人が、「まず何が分からないのかが分からない」と言うのと同じだ。




すると、私達の会話を聞いて誰かがやってきた。



「おっす!俺も混ぜてよっ。


はじめまして葉山さん。

俺、『ネコノヒゲ』こと『羽鳥圭介(はとりけいすけ)』!

皆んなからは『はちょり』とか『けーすけ』って呼ばれてるから、葉山さんもそう呼んで!」



おお、なんか元気そうな奴が来たぞ。

ネコの癖に鳥らしい。



「はじめまして、葉山蜜樹(はやまみつき)です、よろしくね、はちょり君。」


鳥ネコは人の良さそうな笑みを浮かべてヘヘッと笑う。うん、コイツは敵ではなさそうだ。




私達3人が話していると、異様に感じる前からの視線。

えっとこの子は確か、アルアル口調の大道香栖実(だいどうかすみ)ちゃんだ。


どことなく羨望が混じったその視線は、私た合ったとたんにそらされ、またそらされ。

それの繰り返しだ。


さてはこの子、私達の会話に加わりたいな!

よし、話しかけてみよう。




「ねえねえ!」


「うわっ!!な、何アルか?」




香栖実ちゃんは自己紹介の時と同じように膨れっ面だが、話しかけられてなんだか嬉しそう。


…そういえば。話しかけたはいいけど、この子のことなんて呼べばいいんだろう。



さっき絵理香が「いきなり名前を呼ぶのは良くない」と言ってたから、香栖実ちゃんって呼んでいいのかわからない。


かと言って、この子自己紹介の時にフラワーネームを言わなかったからなあ。



すると、絵理香が助け船を出してくれた。



「香栖実ちゃん。蜜樹ちゃんになら、花を教えてあげてもいいんじゃない?」


「!!

い、嫌アル!!絶対嫌!!!!」



そういってお団子頭がぷいっと横を向く。頑固だなあ、なんだかとっつきにくい子かも。


サンダーソニアは困ったなあと言うかかのような笑みを浮かべている。




「…、か…み。」


「ん?」



お団子頭が小さな声で何か言ったけど、そんなに小さな声じゃ聞こえないよ。




「っだから、香栖実でいいって言ってるアルッ!」



!!びっくりした…



「…そ、そんなに喧嘩腰で言わなくてもいいじゃんっ!」


「なな何アル!嫌ならほっとけばいいだロ!」



…イラッ。



何だコイツーーーー!!!!

いきなりそんな喧嘩腰にならなくてもいいじゃないの!


ああもう、アンタも悪党達の仲間に入るって言うの?

それなら容赦しないわよ!




すると、団子の左隣、つまり私の左斜め前に座っる、薄く紫がかったホワイトロングヘアの子が振り返った。



「もう、香栖実ちゃん。そんな態度じゃ気持ちが伝わらないわよ?

ちゃんと口に出して言わなくっちゃ。『私も会話に入れて下さい』って。」


「っ、南は黙ってるアルッ!」



どことなくお姉さんっぽい雰囲気が漂う子だなあ。


隣の団子と本当に同じ歳だよね?



その子は私をチラリと見るとニコッと笑った。


お洒落なフチのメガネが良く似合っている。



「香栖実はちょっと意地っ張りだけど、根はいい子なのよ。嫌いにならないであげて。


申し遅れてごめんなさいね、私は

小鳥遊(たかなし) (みなみ)』。

パーソナルフラワーは『カンナ』よ。

南って呼んでね。


こっちの世界のサブカル、オカルト、ゴシップのことならドーンと私に任せてちょうだい!」



「!!ありがとう、

よろしくね、香栖実、南!」




……ちょっと意地っ張り??

ちょっと?


確実にちょっとではないと思ったけど、言わないでおこう。



お礼を言った私に、姉御肌の南はウインクでどういたしましての合図をする。


…それにしても1人3役だなんて、南は超人のようだ。


たった1人にサブカルもオカルトもゴシップも任せるだなんて、他の奴らは一体何をしているんだ。




「私達は皆んな蜜樹ちゃんの味方だから、安心してね。四童子さん達に何か言われたら、すぐに呼んでちょうだい。」


「ありがとう南、すごく心強い!」



四童子さんっていうのはどうやら、廊下で健気に立っていた私に罵声を吠えたサルスベリへ


「そうですわっ!いきなり外部の輩に入って来られたら困りますっ。」


と同意を示した悪党2のことだ。

なんで転校してきていきなりこんな目に合わなくちゃいけないというのだ、まったく。



「ねえ南、私まだ何もしてないんだけど。何でいきなり嫌われてるの?」


人間界では、普通転校生って歓迎されるものなんだけどなあ。



私がそう聞いた途端、南、香栖実、絵理香、鳥ネコの顔が曇った。


え、私何か悪いこと聞いた?




「…うーんとね…、それは蜜樹ちゃんが悪い訳じゃないのよ。


ちょっと転校してきたタイミングが問題だったのよねえ。」


「タイミング?」



入学と同時に転校してくるのって1番無難じゃない?




「ああ、ちょっとな。

俺らが中3の時、いろいろあったんだよ。」


「ふぅん……。」



納得いかないけど、皆んなが黙ってしまったので話題を変えよう。




「あのさ、話変わっちゃうんだけど。

ここの皆んなはご飯とかどうしてるの?」



私がそう言うと、4人は一瞬きょとんとした顔を浮かべ、次の瞬間一斉に笑い出した。



「ッハハ、お前もうお腹空いたのか?」


!!


これは心外だ!!

私はただ場の空気の入れ替えをしようとしただけなのにっっ



「えっ、いや、そう言う訳じゃっ!」


「ふふっ、かわいいなあ蜜樹ちゃん。大丈夫よ、私お菓子持ってるから。」


今度は絵理香までそんなことを言い出す。



「絵理香までっ!!

もーーっ、本当に違うってば!!」


お菓子は貰うけどね。




皆んなの空気を明るくするために、入学早々自分のポジションを犠牲にした私だった。








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