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秘密の花園  作者: フローラ
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入学の洗礼 1

草壁先生に連れられて歩きながら、1年生の教室棟までやってきた。


しっかしどこもかしこも花だらけだ。



あちらこちらに花びらが散っていて、掃除のしがいはありそう。





辺りをキョロキョロ見回しつつ、花を踏まないように注意して歩く。





…それにしても。

やけに教室の中が騒がしいんだけど一体何やってるんだろう?


何かが割れる音が聴こえてきたのは私が疲れてるだけだと思いたい。



花って言うくらいだから、「ホホホ、ごきげんよう!」みたいなの想像してたけど、これは確実に見当違いのようだ。




普通の学校だったら今頃入学式だけど、草壁先生によると花園学園には入学式や始業式が一切ないらしい。



ホームルームで担任が挨拶して、「1年間宜しくな!」みたいな感じで始まるんだと。

なんとも軽いノリだ。





「花園学園の子は初等部からこの学園で育ってるから、めんどくさい式とかいらないのよ〜」らしい。


…だんだん分かってきたけど、この学園は割といい加減だ。


確かに人を落とし穴で連れて来て綿毛に案内させるくらいだもんね。

私まだ根に持ってるんだからな。





すると、先生が一つのドアの前で立ち止まった。




「着いたわよ。

貴女は今日からここ、1年2組の生徒になるわ。


…最初は今までの学校との違いにちょっとびっくりするかもしれないけど、住めば都よ、都!」


「は、はい。」




「ちょっと私が先に行って皆を座らせて来るから、貴女はこのまま廊下で待っててちょうだい。」




驚いた、ボンジュール顔から日本のことわざが出るなんて!!親近感が湧きそうだ。




「みんな、お待ちかねの転校生連れてきたわよ〜。

席にお着きなさ〜い!」


ガラガラッと先生が扉を開け、蜘蛛の子のように一斉に席を移動し始める生徒たち。

そういうとこは現代中高生と一緒なのね。



すると何やら生徒達が口々に物騒なことを言いはじめる。





「おいマーリン、花御子としての自覚が無い転校生ってなんなんだよ!

ありえないだろ、そいつただの人間なんじゃないの?」


「そうですわっ!いきなり外部の輩に入って来られたら困りますっ。」







…。


…。




…何コレやだこれ。今すぐ帰って寝たい。



確実に私のことで険悪なムードになってるーーーー!!!!!






その転校生って200%私のことですよね。

そしてマーリンが草壁先生のことだね、草壁万理だもんね…マーリン…マーリン…。





次々に文句を言う生徒達を、「はいはい」「うるさいわねー」と適当にあしらうマーリン。

もっとガツンと言ってくれガツンと‼︎



その程度じゃコイツらは引かないよ!!






「俺認めらんねー」


「もっと詳しく説明してよ先生っ!!納得いかないんだけどっ」



「うるっさいわね〜、今その転校生が廊下まで来てるのよ!!!!

アンタ達がギャーギャー喚くからめちゃくちゃ入りにくすぎるでしょうが!!!!


あ、いじめたりしたら許さないわよ。

分かってるでしょうねアンタ達、あの子に何かした奴は片っ端からヒメリンゴの刑だからね。」



「ゲッ‼︎」




…しーん。






とうとう草壁先生がキレた。やっと喧騒もおさまったよ、怖い怖い。


…生徒達はキレた先生よりリンゴ飴の刑云々に恐れてるようだったけど。



みんなリンゴ飴が嫌いなんだろうか。





「はぁ、やっと静かになったわね。手間がかかるったらないわぁ。

…お待たせしてごめんなさいね蜜樹ちゃん、入って来ていいわよ〜!」




めちゃくちゃ入りにくすぎるでしょうが!!!!





会う前からあんなに文句を言われてたんだ、対面したら消しゴムや鼻ティッシュを投げられるかもしれない。

薔薇の棘とかだったらいよいよシャレにならない。




全身が入ることに拒絶反応を示してるけど、タイミングを逃してまたあんな風に騒がしくなったら困る。




クッソあの綿毛これを見込んで私から離れたな、後で締めてやる。


かわいそうな私は身も心も縮む思いで、チヂミと化して教室へと足を踏み出します。








「⁈」





…クラスを見渡して、心臓が飛び出るかと思った。


なな、な何だこのカラフルな色の髪の集団は!!





赤、黄色、青、ピンク、紫……カラーリングのCM撮影が始められそうだ。


忘れてたけど先生も髪の毛ピンクだったね。花と何か関係があるのかな。






「蜜樹ちゃん?」


「あっ」




やばいやばい挨拶するのすっかり忘れてた。ううう視線の雨あられが体に突き刺さって痛いです…。




「は、葉山蜜樹(はやまみつき)です…。

友達になれたら嬉しいです、どうぞよろしくお願いします。」





アホかーーー!!



さっき友達になれそうな雰囲気どこにもなかったのに何言ってるんだ私ーー!!





…睨まれてる睨まれてるすっごく睨まれてる。

視線で穴が開くってこういう事だったのか。後で穴が開いたところに絆創膏を貼りたい。




「コラコラ皆、転校生が気になるからってそんなに見つめちゃ恥ずかしがっちゃうでしょ。


そうそう、蜜樹ちゃんの席は最後列の右から3番目よ。

サンダーソニア、オレンジ色の髪の毛の子の隣ね。」






‼︎サンダーソニアが同じクラス‼︎しかも隣‼︎


綿毛が曰くおっとりしてて優しい女の子!!!!




…ふっふっふっ当たり席だ、この子なら友達になれるかもしれない!!






私の首を狙う数々の悪の視線に怯えながら自分の席にたどり着くと、見るからに優しそうなサンダーソニアらしき女の子がふわっと笑いかけてくれた。



「サンダーソニアです、よろしくね。」


「よっ、よろしくね‼︎」



いっ、いい子だ!!


何だか涙が出そうだ。

こんなに落ち着いたいい子もいるんじゃないの。

くじけるな私、まだ始まったばかりだ。友達なんて今からいくらでもできる、目指せ友達100人っ


サンダーソニアの優しさにニヤけていると、耳障りな声が私を現実に引き戻した。





「ゲッ、お前俺の斜左後ろかよー‼︎」




…出た私の首を狙う悪党1。


さっき私が廊下にいるにも関わらず、



「自覚無しの花御子とかありえねー」



と大声で罵声を吠えた、少数派民(私)に理解の無い性悪男!!!!


斜左後ろの席にまでいちゃもんをつけてくるな!!!!





ギロッと睨み返してやったら舌を出してあっかんべーをして来やがった。小学校低学年かコノヤロウ。





マーリンがこっちを向いての意味でパンパンと手を鳴らす。



「皆んな聞いて。

前も言ったけど、蜜樹ちゃんは自分が花御子であることを知らずに、しかも人間界からやってきたの。


もちろんまだ花術は使えないし、花園界のことも分からない。

皆んながお手本となって教えてあげるのよ。」




花術?花園界?

さっそく先生の話についていけない。



でもここでサンダーソニアに聞いたら悪党1が振り返って馬鹿にしてきそうだから後でこっそり聞こう。






「…はぁ、何でそんなやつがここに来てんだよ。」



相変わらずでしゃばる悪党1。後ろ目に睨んできているのがとてつもなくうざいぞ。その口ガムテープでぐるぐるにしてやろうか。






「うるさいサルスベリ!いい加減にしなさい!」



はははは怒られてやんの。その調子よマーリン、もっと言って。


奴はサルスベリの花御子らしい。まったく、全世界のサルスベリに謝れ。




そうこうしているうちに1時間目を告げるチャイムが鳴り、落ち着かない中授業が始まった。

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