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犬の一生  作者: ブリキの
三、オッタルの賠償金
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3.18. オーディンへの定期報告書

独眼の主神(オーディン)〉宛 定期報告書

 九世界の現状に関して、危険度C以上の対象について述べる。なお、本書面ではその思想による敵対可能性の大小は考慮せず、敵対した場合の危険性についてのみ記載する。

 以下に危険度の指標について示す。

C - 個体としての能力が低いが、九世界の不安定性に寄与しうる。

B - 個体としての能力が高く、九世界の不安定性に寄与しうる。

A - 魔法によって九世界を不安定にさせうる

AA - 九世界そのものを存続不可能にさせうる。


魔狼(フェンリル)

 第一平面アースガルドの〈魔狼〉である。現在は《銀糸(グレイプニル)》によって第一平面のアースガルド大草原にある洞穴に拘束中である。《銀糸》はかの狼の呪力によって活動しているため、〈神々の宝物〉を通して〈魔狼〉以上の呪力を叩きこめば支配が反転して拘束から逃れられる可能性はあるが、この個体よりも強大な呪力を持つ個体は数えるほどしかおらず、基本的には拘束から抜け出る可能性は薄いと考えられる。ゆえに脅威度はCとする。


軍神(チュール)

 アース神族軍の将である。これまでは〈神々の宝物〉を所有していなかったが、近年になって三剣の一である《魔剣(ティルヴィング)》を所持している。入手経路は不明。三剣は所有者登録されていない者には扱えないはずであり、その魔力を行使することはできないはずだが、彼が三剣の力そのものを理解しているのかどうか不明であり、《魔剣》を使用している姿を観察できなかったことから、剣の状態についても不明である。現状では《魔剣》は通常の剣としてしか使用できないと考えるが、その入手経路の不明さなどを踏まえて脅威度はCとする。


雪目(ウル)

 アース神族軍の将である。〈神々の宝物〉は持たないが、弓の腕前に関しては卓越したものがあり、アース神族の中では比較的危険度は高いが、それだけでは危険視には値しない。しかしながら後述する〈妖精王〉の魔法に気づいている節が見られ、潜在的な脅威となりえる可能性がある。ゆえに脅威度はCとする。


半死者(ヘル)

 第三平面ヘルモードの〈半死者〉である。近年、第三平面ヘルモードを脱出し第二平面に辿り着いたとの報告が上がってきている。〈狼の母〉の子の他の二者とは違い、第二平面の巨人族や人間族に溶け込むことが可能であるため、発見が容易ではない。人伝の噂話では尋常の代物ではない足鎧を装備していたということで、これが〈独眼の主神〉さえも認知していない〈神々の宝物〉である可能性も考慮する必要がある。現在の動向や目的が不明であることを加味し、脅威度はCとする。


雷神(トール)

 アース神族軍の将である。〈雷神〉の通称で知られており、《雷槌(ミョルニル)》を持つ。先の巨人族との戦争では、〈世界蛇〉の介入があったとはいえ、実質独力で戦争を勝利に導いており、個体としての力は非常に大きい。それだけではなく、後述する〈狼の母〉との親交があるという点でも脅威となりえる可能性があるため、脅威度はBとする。


世界蛇(ヨルムンガンド)

 第二平面ミッドガルドの〈世界蛇〉である。〈ミッドガルド蛇(ミズガルズオルム)〉の通称を持つほどに巨体であり、単純に個体の力で見ると最高到達点であるといえる。これまでは海の中で育っていたためか陸地に出てくることは稀であったが、昨今ではミッドガルドの内陸域でもその姿が見られる。現在までの観察では、〈雷神〉に興味を抱いているように見える。その巨体と予測不能性を考慮し、脅威度はBとする。


狼の母(ロキ)

 アース神族に与する巨人族である。犬の耳と猛禽の羽を持っているため、その姿を晒している場合は特定は容易ではあるが、行動範囲が非常に広いため監視は容易ではない。《炎斧(レヴァンティン)》に代表される〈神々の宝物〉を複数所持しており、さらに魔法にも通じている。先の巨人族の戦争で《双翼(ナルヴァーリ)》の大部分を失っており、脅威度は低下したが、未だその行動は予測がつかない。また、彼女の3人の子に対して影響力があることなどを総合的に考慮し、脅威度はAとする。要監視対象。


妖精王(フレイ)

 アース神族に使者として籍を置くヴァン神族である。三剣のうちの一振りである《妖剣(ユングヴィ)》は先の〈金の鬣〉との決闘の際、その〈神々の宝物〉である《赤球(ギャルプグレイプ)》によって封印されてしまっており、使用不可能な状態である。また、決闘において左足を失っている。しかしながら依然として魔法が使えるという要素は他者とは大きく異なる不安定要素であり、継続しての監視が必要なことから、脅威度はAとする。要監視対象。


白き(ヘイムダル)

 アースガルド大草原などでしばしば観測される個体であり、外界介入者である。これまでの報告と同様、未だ動作は非常に緩慢であるが、巨人族との戦争の際は〈狼の母〉の召喚した〈泥の大巨人(ミストカーフ)〉を破壊するなど、昨今では通常の速度で行動をする頻度が増加している。これまでの観察から推測すると、〈世界樹(ユグドラシル)〉もしくは九世界全体の呪力低下に伴い瞬間的に免疫機能が低下したことで、転送速度が一時的に上昇し、その結果として速度の齟齬がなくなっているものと思われる。しかし最終的な覚醒までの時間は未だ不明である。脅威度はAAとしている。継続監視対象。


黄金の林檎(イドゥン)

 アース神族に使者として〈妖精王〉とともにやってきたヴァン神族ということになっている外界介入者である。〈白き〉とは異なり九世界に完全に適応しているが、その呪力を九世界と〈世界樹〉に供給するための《金環(ブリーシンガメン)》を装着しているため、通常時の能力は人並みである。しかし《金環》を外したときの能力や彼女の消失によって九世界そのものの崩壊の危険性を孕んでいることを考慮し、脅威度はAAとしている。継続監視対象。


以上。


記入者:〈戦乙女(ブリュンヒルド)

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