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「っ」
「わりっ、痛かったか?」
風呂から上がったセントは髪を下ろしているのもあって誰かに見られたら一発で「女」と、わかる雰囲気だった。
ーしかし…
あの時の天使か妖精程ではないが、見れば見るほど美少女だ。
前髪で顔が隠れているから普段はそこまで分からないだろうが、こうやって近くで見るとそれがよくわかる。
フランクさんから救急箱を借りて来て手当をしながらそんな事を思う。
「傷、小さいからすぐ治るだろ」
テープで止め、思わず見入ってしまうとセントの青い瞳と俺の瞳がぶつかった。
「ずっと気になっていたのですが」
「…なんだ?」
「…聞き耳立てられていますけど、そうゆう趣味が?」
「…」
俺は驚きセントを見るとセントは閉じられたままのドアを見、目を細めた。
「まぁ、これくらいの声の大きさじゃ、何も聞こえないと思いますが…。無作法な方、多いですね」
まるで人を威圧するかのような表情に言葉。
ーこいつ…
ただの子どもじゃないかもしれない。そう気がついた時には俺はセントから目が離せなくなっていた。
◇
「お仕事、行かなくていいんですか?」
夕食の後。する事も無く各々本を読んだり、剣を手入れしたりしていた。
そんな中、セントは窓からそっと外を見、俺に尋ねた。
「今日は休みだ。」
「そうですか。」
なんで何かを警戒するかのようにそっと覗くように見るのか、とても気になったが答えてくれそうな気がしなかったから聞かずに他の事を尋ねる。
「なぁ。」
返事が無かったが、その代わりにセントは何故か腕を組み窓際に立ちながらこっちを見ていた。
「お前さん、今後どうするんだ?昼間の今でこんな事を聞くのもどうかと思ったが…やっぱり先の事も少し考えた方が…」
セントは腕を組んだまま、黙って俺を見、そして目を閉じ沈黙が訪れる。
「眠い。」
「…お前さん、無理矢理話をそらそうったってそうはいかねぇぞ」
ぐー
わざとらしく声まで出している。
「立ったまま寝る奴なんて居るか!」
思わず突っ込むとセントは薄く目を開き、迷わずベットに潜り込んだ。
「お前さんな…」
「お休みなさい」
それ以上答えないのは崩さないらしい。
もそもそと動いたかと思うとブーツをベットの端からポトンと落とし、その後すぐにスースーと寝息が聞こえてきた。
俺はその後、少しの間剣の手入れをしていたがなぜか激しい眠気が襲ってきて、そのままランプを消してソファーに横になった。
ベットよりは眠りづらいが、このソファーもなかなか悪くない。
そんな事を考えている間に意識が遠のいた。
◇
ギシ…
誰かの歩くような音が聞こえ目が覚めた。
まだ窓からは日が射してはいない。
俺は目だけ動かしそのままじっとしていた。
すると。
「ライドさん。」
思いもかけず、セントの声が聞こえた。
驚き、ベットを見るといつの間にか横になったまま上半身を起こし頬杖をついていた。
ほのかについていたランプの光に照らされ、その美しさにゆえ迫力がある。
「ロイさんがおいでです。」
「…お前さん、もしかして気がついて…」
全て言う間もなく。
ガタンっ!!
「うわぁっ」
「ぐえーっ」
「いてえっどけっ!」
「ぎゃーっ!」
突然ドアの方からものすごい音が聞こえ振り返ると、壊れたドアの上に宿の奴らが籠売りの果物や野菜のように重なって乗っかっていた。
「…なにやってんだ、あんたら」
俺は呆れてそれ以上言葉が出てこなかった。
「いや、その…セントくんとはうまくいってるかなー、なんて…」
「や、別にのぞきとか聞き耳立ててた訳じゃねぇんだぞ?」
「ま、ドアが古かったんだ」
なんて口々に言っている。
おおかた、夕食時に食堂に現れたセントが思いのほか可愛らしかったから、様子を見にきたんだろう。
男の悲しい性かな…
悲しい。あまりに悲しすぎる。
俺は額を押さえた。
「お前ら、何してるんだ?」
ダダンの声が聞こえ、皆ハっとした表情になったのがわかった。
「こんな夜更けに、こんなところでなに騒いでんだ?なあ?」
そう言うと壊れたドアを見、ため息をつく。
「仕事が終わって、一段落ついたかと思ったらこれか。」
「ダ、ダダン!」
「や、これは…」
「あの…」
「つべこべ言わず直せ!今すぐだ!」
「「「はいっ」」」
ダダンの迫力に全員背筋を伸ばし返事をした。
「悪いね、セントくん。悪い奴らじゃないんだけどな。どうやら君の事が気になって仕方が無いらしい。」
いつの間にかランプの火を強めたらしい。部屋の中が照らされていた。
セントはいつの間にかベットから起き上がり俺の陰に隠れるようにし、ダダンをただ見ていた。
「だいぶ打ち解けたようだな。ライド、変な事してねぇだろーなぁ」
ダダンがにこやかな表情のまま俺に低い声で尋ねた。
「…何馬鹿な事言ってんだよ。つーか、なんでここに居るんだよ?見回りでもしてたのか?」
「当たり前だろう。セントくんになにかあったら親御さんに申し訳ないからな。」
そう言うと、ダダンは笑いセントを見た。が、セントはやはり何も答えず俺の陰に隠れていた。
◇
「おい、眠いなら部屋で寝てていいんだぞ?」
「…」
俺の言葉が聞こえているのかいないのか。
うとうととした様子でセントは出された茶をズズっとすすっている。
目が覚め、セントが居ない事に気がつき慌てて上着を羽織り部屋を飛び出すと、人もまばらの食堂のカウンターで一人座っていた。
「つーか寝てねぇだろ?結局朝まであいつらドア直ししてて騒がしかったし。俺、いつの間にか寝ちゃってたし…。」
セントはまだこの宿の誰にも気を許していない。俺に対しても。
なんとなくそんな気がしていた。だから、気を許せる奴の前でしか眠らないのではないか。
そう思った。
昨夜だって眠いと言ってベットに潜り込んでいたが、本当に眠っていたかどうかすらあやしい。
ふわぁ~
セントは小さくあくびをした。
「なぁ。」
セントは黙って顔を俺に向ける。
青い瞳とぶつかる。
「あいつらに何かされてねぇよな?」
「?」
セントは首を傾げ、俺を見る。
どうやら俺が心配するようなことは、何もなかったらしい。
「悪かったな、ちゃんと見張ってやれなくて。」
「別に、何も謝る必要は無い。私は私自身を守れるし守るつもりだ。だから、貴方が背負うようなこと何もはない。」
もぐもぐと出されたパンをほおばりながら言うセントに、妙な違和感を感じた。それと同時になんだか納得していた。
普通の子どもと言うのは誰かに甘え守られているものじゃないのか。
甘やかされて、可愛がられて。セントくらいの年頃だったらそれが普通だろう。
なのに。セントは。
助けるのに損得を必要とし、安易に人を助けるなと言う。
俺はなんだか不思議な気持ちがわき上がっていた。
ポンポン
「!?」
「そう言わずに、たまには誰かに守られておけよ。お前さんが家に帰るまで俺が保護者になってやる。」
頭に手を乗せられたセントは怪訝そうな表情で俺を見ていたが、俺はなんだか満足だった。
どうしてそんな気持ちになったのかは分からないが、こいつを守ってやろう、そう思った。
◇
「別に、ライドさんの助けは必要ありません。」
「子ども一人だとあぶねぇだろ」
「今までそうやってここまで来たんです、これからも大丈夫です。」
「…かーっ!可愛くねぇなっ!黙って俺に守られてろよ!」
「ごめんです。押し売り、って言うんですよ、そーゆうの」
セントと二人で町を歩きながらそんな会話を繰り広げる。
町ですれ違う人々は俄に騒がしい俺らを不思議そうに見ていた。
「だからな…」
どんっ
「!」
話しながら歩いていると突然セントは誰かにぶつかった。
いや、相手が突然現れたように見えた。
セントも驚いたように相手を見る。
「どこ見て歩いてんだ、ガキがぶつかってきたせいで、腕がいてぇな!」
「ぶつかってきたのは…」
セントが反論しようとするが相手はにやにやとただ笑っている。
「ぶつかって来たのはそっちだろ?おまえ、わざとぶつかって金取る気だったろ?」
俺がセントの前に進み出ると男は表情を変えるが、すぐにニヤリと笑い手をポキポキと鳴らす。
「なんだ?こいつの連れか?なら話は早い。ぶつかられて怪我したんだよ。病院行くから金だしな!」
男はニタニタと笑い言う。
どうやらこの町の者ではないようだ。
自慢じゃないがこの町では一応顔くらいは知られている。…まあダダンの後ろだてのせいもあるが。
どうやら俺とセントくらいどうにでもなると思ったらしい。
「セント、下がってろ」
俺が前に進み出ると男はなんだ、やるのか?と笑ったまま構えた。
「いや、無駄に騒ぎを起こすとろくな事がない。お前も金をせびるの止めてちゃんと稼げよ」
俺がそういうが、男は笑ったまま拳をくりだしてきた。
ーどこの腕がいてぇって言ってんだ、こいつは!ピンピンしてんじゃねぇかよ!
俺は少し体をひねりそれをよける。
「少し腕に覚え有るからって、俺に勝てると思うなよ!かっこつけヤローが!守ってみろよ、そのガキを!」
更にくりだしてきた拳は俺にではなくセントに向かっていた。
「セント!」
「まずその布取って顔みてやらぁ!」
俺は慌てて男の前に飛び出したが。
ドカッ
「ぐふぅっ!」
ドサッッ!!
「やっぱり素手じゃ痛いな…」
辺りで様子を見ていた者、通りを歩いて居た者達はあんぐりと口を開き、ただ、こっちを見つめていた。
俺も、何が起こったのか分からなかった。
いや、理解しがたい、驚くべき光景がそこには広がっていた。
布を深くかぶったセントが、襲って来た男を逆にのしてしまったのだ。
男はセントのパンチが鳩尾にでも入ったらしく、倒れたままピクリとも動かない。
セントは俺に背を向けぶつぶつ言っていたが、くるっと振り返った。その瞬間もかぶった布はずれる事無く、顔を隠している。
「ライドさん。手が痛い。」
そう言われ俺はハッとなりセントの手を見る。
「殴ったから手が痛くなったんだろ。宿に戻ったら氷で冷やそう。しかし、お前さん…」
俺がセントを見つめると布の奥でにやりと笑っているのが見えた。
「だから、守ってもらう必要は無いって…」
言いかけた時、まるで緊張の糸がほぐれたように周りで立ち尽くしていた者達が俺たちの周りに集まって来た。
「すごいわ、あなた!」
「すてき!なんてお名前なの!?ライドさんと同じチームなの!?」
「カッコいいな、あんた。おれ、ファンになっちゃったよ!」
「顔見せてー!」
「なんで顔隠してるの~!?」
そしてグイグイとセントの布を引っ張り始めたのだ。
「!」
セントは驚き、布を押さえるが痛めた手に力が入らないらしい。どんどん布が外れて行く。
「おっと」
俺はとっさにセントを抱きかかえ、その顔を俺の胸に押し付けるように隠した。
「!」
セントは驚き俺を見上げる。
「いいから、そのままで居ろ。」
小さく告げるとセントを抱える手に力を込めた。
「悪いが、コイツは肌が弱くてな。太陽の下ではこうやって布で覆っていないと駄目なんだ。」
俺の言葉に一瞬にして好奇心の固まりだった野次馬達は申し訳なさそうな表情になった。
「ごめんなさい、知らなくて」
「そうゆう体質ってあるもんな!」
などと、謝罪の言葉が投げかけられる。
「分かってくれたなら良かった。そうだ、誰か俺のチームの奴ら呼んで来てくれないか?この男をとりあえず捕らえておかなくちゃならねぇ。」
「俺!行ってくるよ!」
一人がそういい、俺らのアジトまで走って行った。
「サンキュ。それから、だれかコイツを見ていてくれないか?実は、さっきこの男とやりあったときにコイツ怪我したみたいで手当しに行きたいんだ」
そう言うとすぐに皆申し出てくれ、俺とセントは無事にその場から逃げる事に成功したのだった。
◇
「ライドさん、もうおろしてほしい。一人で歩ける。」
セントを抱きかかえたまま歩くと通りすがりの人々の好奇心の視線を感じた。だが俺は気にしない。
「お前さん、手、力入らないみたいだな。何かあるといけねぇからこのままだ。」
「なっ…!」
驚いたような声に俺は笑い布の中を覗き見る。
「!」
驚いた双眸が俺をとらえる。俺は不思議な引力、というべきものに引き寄せられるかのような感覚に陥りながらも話を続ける。
「保護者ってのはこうゆう時の為に居る。」
「別に、一人だって…」
「ああゆうやつに狙われやすい。それに、お前さんはキレイ過ぎるから…その布取ったらもっとあぶねぇだろ。」
「…?」
セントは俺の言葉の意味が分からない様子で首を傾げ、俺を見る。
「わからねぇならいい。とりあえず、怪我の手当だな。しかし、ダダンの奴…いくら昨夜の仕事で全員出払って日中の人が居ないとはいえ、セントを見回りに出させるなんて何考えてやがる」
◇
「働かざるもの食うべからず。」
「は?」
「ただで泊めてもらって食べさせてもらっているんだ。見回りくらいかまわない。」
行きつけの飲み屋にやってきた俺とセントはマスターに迎えられ、セントの手はマスターに手当してもらっていた。
手当をするのにかぶっていた布が邪魔になりそうだったからセントは素顔をさらしていた。
マスターは初めこそ少し驚いた様子だったが、すぐににっこり笑い手当を始めてくれた。
「だいぶ痛そうだね。この後腫れそうだ。ライドさん!女の子は守ってあげなくちゃ!」
マスターがそう言うと俺とセントは同時にマスターを見た。
「マスター…セントが女だって気づいて…?」
マスターは頷き、セントの手に冷やしたタオルを当ててやる。
「布をかぶっていたのに…私の変装は下手なのだろうか…」
呟くように言うセントに俺は半眼になる。
「下手っつーか…顔見たら分かるだろ。まあ。あの宿の奴らはなんとか男で納得してるみたいだがな」
「えぇっ!?」
セントの驚いた様子に俺は半眼のままつっこむ。
「や、バレバレだぞ…?しかしマスターが気がついてたなんてな」
俺はセントからマスターに顔を戻すとマスターは手当を続けながら微笑んだ。
「こうゆう商売してるからね。だいたい人見ればわかるもんだよ。さ、できた。あと戻ったら、ライドさんにもう一回冷やしてもらってね」
「ありがとう…ございます」
セントは手当してもらった手をマジマジと見つめる。
「ちょっと休んで行きなよ。ライドさん、そうするだろう?」
「ああ」
「お茶、淹れるからちょっと待ってて」
「悪いな」
「可愛いセントちゃんの為だよ、ライドさんの為じゃないからね」
「…あ、そ」
奥でがちゃがちゃやってるマスターに返事を返し、セントに眼をやると、ぼんやりと手を見ていた。
「痛むのか?」
カウンター用の椅子を少しセントの方に近づけ尋ねるとセントは少し驚いた様子で俺に顔を向けそして再び自分の手を見る。
「いえ…」
何か違う事を考えていたらしい。
俺は徐にセントの頭に手を置き、ポンポンと軽く叩いた。
「!?」
セントは再び怪訝そうな顔をして怪我をしていない方の手で頭を抑える。
その様子がなんだか可愛くてもう一度手を乗せた。
「!」
「そうゆう顔すんなって。」
セントの手をつかみ笑うとセントはムウっとなんだか困ったような顔をして俺を見る。
「さっきの話に戻るけどな。」
「?」
「別に、無理に働かなくったって、いいんだ。お前さんは子どもなんだから。」
「…私は私の目的の為に一人で旅をしている。だから、目的の為には働かなければならないこともある。 それに、町の貧しい家の子ども達は私よりも幼い年からいろんな仕事をして生活をしている。それをするな、なんて言えないだろう?生活の為やっている事をとめることはできない。そうゆう人々より私は恵まれている。この年まで何不自由無く暮らして来た…これからも。」
まるで子どもらしくない話方に、考え方…それに…
ーこいつ、いいとこの子どもなのか?
なんとなくそんな話ぶりだ。
「ライドさん。貴方の私を助けてくれようという気持ちは、他の人に注いであげてほしい。私は…」
何かを思いつめたような表情になり、そこで言葉を濁す。
と。
「まあ、お茶でも飲みなよ、セントちゃん。」
ふんわりと優しい匂いがし、振り向くとマスターが俺たちの前に茶を出してくれた。
「ケーキもあるんだよ」
「初めて見た。」
俺が言うとマスターは当たり前だよー、と答える。
「これはね、疲れてやってくる女の子限定だからね。ライドさんみたいに酒だけ飲みにくる人には出した事無いよ」
「へえ」
「でも今日はライドさんも特別。人気が出るといけないからみんなには内緒だよ」
そういうと片目をつぶった。
「いただきます」
「いただきます」
俺とセントは茶に口をつけ、ケーキを食べた。
「うまいっ!」
あまりケーキを食べないが、これが美味しいということだけは分かった。
「だろ?」
マスターは得意げに腕を組んでいた。
「どうかな、セントちゃん」
すっかり「セントちゃん」というのに慣れてしまったらしい。後で間違っても宿の奴らの前ではそう言わないよう、注意しておかないといけねぇな。
なんて考えていたらセントの声が聞こえた。
「…おいしいです」
あまり抑揚の無い声だったが、なんとなく喜んでいるように感じた。
「よかったな。」
「はい」
素直に返事をするところをみると本当に喜んでいるらしい。
なんだか難しい事を考えて生きているようだが、甘いものに喜ぶなんてやっぱり年頃の女の子なんだな。
「さてと。今夜なんだがな。俺は仕事がるんだ。今日はダダンに守ってもらえ」
「一人で平気です。」
「お前さんなぁ。…まあいいや。それから、戻るの遅くなるから鍵を閉めて寝ろ。いいな?」
「小さな子どもじゃないんですから。それくらいできますよ。」
「小さな子どもじゃねぇから色々心配してんじゃねぇか。いいか、誰か入ってこようとしても絶対誰も入れるなよ?」
「…わかりました。」
「それから、俺の事はライド、だけでいい。“さん”はいらねぇ。あとその畏まった話し方も。他人行儀みてぇだし…もっと普通に話してくれよ。」
俺が言うとセントは少し驚いた表情で俺を見るが、すぐに顔を正面に戻しそして少し口の端を吊り上げて茶に口を付ける。
「わかりました、ライドさん」
「っ!お前さんなぁ…!」
わざとやってる。
俺を見てくる瞳がなんだか面白いおもちゃでも見つけた時の子どものような眼をしている。
「どうしたんですか、ライドさん?」
「…絶対、ライド、て呼ばせてやるからな…!」
そう言うとセントはフンと鼻で笑い、マスターに笑みを浮かべティーカップを差し出した。
「マスター、すみませんがお茶をもう一杯いただけますか?」
「あ、ああ。」
マスターは受け取るとカウンターより奥の部屋へ入ってゆく。
その様子を見ながらチラリと横目でセントを見るとセントもニヤリと笑い横目で俺を見ていた。
先は長そうだ。




