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ホゴシャな日々  作者: 望月 沙夜
お屋敷で傭兵編
13/15

2-7

キィ…

 「お待たせ致しました。」

 部屋に入ると中央に設置された大きなソファに座っていた、存在感たっぷりの人物が立ち上がった。

 体格がいいというわけではないが、かなり鍛えているのだろうと思われる体つき。そして涼しげな目元に整った眉。顔立ちも男前だ。

 長くのばした濃い茶色の髪を後ろで一つにまとめている。少し薄汚れたような姿はまるで旅を続けているかのようだったが、きちんと鎧をつけ剣を持ったらそれはそれは絵になるだろうと思った。


 「急の訪問、受け入れて下さってありがとうございます、ライラ・フェリーアーテ殿。」

 うやうやしく頭を下げる様子にライラ嬢は多分キチンとした作法に乗っ取った式礼をしたんだろう。エスコートしてきた俺から離れるとドレスの裾を持ち上げ会釈と共に軽くかがんだ。

 

 「いいえ、カプリチオ国王陛下直属部隊隊長ズイ様が御自ら御越しになるなんて、滅多にございませんもの、お会いしないわけにはございません。どうぞ、おかけになってくださいませ。」

 フフフっと笑うと懐から扇を取り出し、上級貴族の婦人達がしているように口元を隠した。

 「失礼します。いや、いつぞやの舞踏会でお会いしたきりでしたが…本当にお美しくなられた…!お父上も貴女にこのお屋敷を任せておくのが気が気ではないのではないですか?」

 「いいえ、父は相変わらず仕事の一筋。私とお会いするのも年に数回です。随分お忙しいみたいですわ。でもそれでカプリチオ国が住み良い国となるのであれば少しくらい我慢致しますわ。」

 ライラ嬢が少し寂しげに言うとズイ隊長が少し身を乗り出し答える。

 「貴女のお父上なしにはこの国はここまで発展しなかったのではないかと言われています。あの手腕なくして外交なし。と陛下がおっしゃられたくらいです。国民、いえ、陛下に変わって私がお礼を…そして貴女と過ごす時間を奪ってしまった事を謝らせて下さい。本当に、申し訳ない。」

 ズイ隊長が頭を下げた時だった。



 ガシャーンッ

 

 突然、窓ガラスでも割れるような音が聞こえた。

 ズイ隊長は機敏な動きで立ち上がると警戒するように辺りを見渡す。

 俺もすぐにライラ嬢の脇に行く。

 と。

 ガチャッ!

 よほど急いでいたのだろう、ノックもなしにドアが開くと傭兵が一人入ってきた。

 「ライラ様っ!敵襲ですっ!入り口の警護兵三名負傷っ内部に忍び込まれたようですっ!」

 「敵は何名だ。」

 「二人は確認できましたが、それ以上は…」

 ズイ隊長の言葉に傭兵が答えるとそのままドアへ向かってあるきだす。

 「ライラ殿。私の部隊を動かす許可をいただきたい。」

 振り返り言うズイ隊長の側にはすでに部隊2番手と思われる男が立ち膝になり、承諾を待っている。

 

 ーいつの間に現れたんだ?

 

 報告しにきたヤツも驚いた様子で立ち膝の男を見ていた。

 「ライラ殿。」

 少し声音を強めに言うとライラ嬢は目を伏せ、そして頷いた。

 「屋敷内の戦闘行為を許可します。私の屋敷の兵達も助けてください。」

 「もちろん!」

 そういうとズイ隊長は一言二言2番手の男に何か言うと男は頷き、足音も無く消えて行った。

 「さて、私も向かいます。そして…この騒ぎ…もしかしたらあのお方がいらっしゃるかもしれない。」

 独り言のように言うとチラリとライラ嬢を見る。が。

 ライラ嬢はこの騒ぎの中、ものともしない様子で扇子を口元を隠すようにし、黙ってズイ隊長を見ていた。

 

 二人の視線が交わる。

 

 

 しかし、それは、

 まるで無言の探り合い。

 しばらく二人は見つめ合ってあっていたが先にズイ隊長が目を伏せた。


 

 俺は黙ってその様子を見ていた。

 

 ーなんだかすげーもんみたな。

 

 

 「失礼します。」 

 

 ズイ隊長はそう言い部屋を出て行った。

 ライラ嬢は少しの間ズイ隊長が出ていったドアを見つめていたがすぐに俺に顔を向ける。

 「早く、追いかけなさい。」 

 「…へ?」

 「セント様は御逃げになられましたわ。」

 「は!?」

 「でもこの騒ぎ…無事に抜け出せたかしら」

 ライラ嬢は扇であおぎながら言うとやってきた侍女に傭兵を一人こっちに連れてくるよう言い渡した。

 「私なら平気です。さあ、早く追いかけなさいませ。それが、貴方とセント様の方式なのでしょう?」

 「いや、別に、そうゆう訳では…てか、なんで逃げるんだよ!?」

 「貴方、セント様から何もお聞きになっていないの?」

 「何もってわけでもないが…殺し屋に狙われてるっていうのは聞いてる。」

 そう言うとライラ嬢はそう、と言い、そして悲鳴やら叫ぶ声、バタバタ走る音が聞こえる廊下の方に顔を向けた。

 「それじゃあ教えてあげますわ。セント様は追いかけられている。」

 「…誰に?」

 ライラ嬢は目を伏せ首を振った。

 「それは…セント様、ご本人からお聞きした方がいいわ。ここまで話しておいてなんだけれど、大事な事だから。ライド様の人生を左右するかもしれない程に。」

 「はあ?」

 「とにかく!セント様には今頼れるのは貴方しか居ないんですのよ!早く追いかけてあげてください!」

 そのとき、丁度侍女が傭兵を連れてやってきた。

 「ライド様を馬のところへ」 

 そこまで言うと侍女は頷き、俺促すと歩き出す。

 

 「ライド様。御武運を祈っていますわ」

 

 それがライラ嬢との最後の言葉となった。

 廊下へ出ると辺りは静まり返っていた。

 「ならず者はどうなったんだ?」

 「二人はズイ様の部隊の方々が応戦し、捕らえたと…更にもう一人居りまして、それはどうやらセント様が…」

 「セントが?」

 「応戦し、戦意喪失させたと聞き及んでおりますが…」

 「戦意喪失って言うのはなんだ?殺したのか?」

 「…動かなくなったようです」

 「…そうか」

 それ以上聞けなかった。

 もしかしたら、侍女はセントを恐ろしく思っているのかもしれないと思った。


  ◇


  「こちらです。」 

 屋敷の裏手にある今は使われていないような古びた馬屋に一頭の馬が繫がれ、鞍までつけられていた。

 「荷はつけてあります。…どうかお気をつけてくださいませ」

 

 草むらの中を誰にも気づかれないように歩き、挨拶を交わす。

 

 「世話になった。ライラお嬢様にも宜しく伝えてくれ。」

 「はい」

 

 俺は辺りを見回し、そっと馬に近づくと結んであった手綱をほどくとそっと歩き出した。

 馬も良くしつけてあるのだろう、大人しく俺の後をついてくる。

 このまま屋敷を出て街中で人ごみに紛れて町を出て…

 そこまで考え、フとセントならどう出て行くか考える。

 

 ーまさかここまで追いかけるはめになるとはなぁ…

 そう考え笑う。と。

 近くから馬を引く男が見えた。

 さっきまでいなかったような気もするが…もしかしたらライラ嬢が誰かに連絡を取るのに使いを出したのかもしれない。

 

「…なあ、あんたも町をでるのか?」

 

 声をかけると男はビクッと少し驚いた様子を見せたがすぐに頷いた。

 「俺もだ。どうだ、ここは協力してみねぇか?一人よりかはうまくいきそうな気がするんだが。」

 俺の誘いに男は少し考え、頷いた。

 「分かった、そうしよう。」

 「よし、そうと決まったら…まずこの屋敷だが…」

 「それなら、こっちの森に繫がる道を通った方がいい。」

 「そうか。あんた、詳しいな。ここ、長いのか?」

 俺の問いに辺りを警戒しながら答える。

 「ああ。一年くらいかな。」

 「そうか。俺は…」

 「知っている。ライドさんだろう?有名だったからね。」

 「そ、そうか。」

 どんな有名具合なのかはわからないけれど、あんまり良い噂じゃなさそうだ。

 俺とその男はそっと森の中へ入って行った。

 

 ◇ 

 

 「ここまで来れば国境も越えられるでしょう。」

 「ああ。あんた、どこまで行くんだ?」

 森の中を随分歩き、町を出てかなり経った頃。

 俺と男はこの先の話しをしていた。

 

 「オラクル国に。ライドさんは?」

 「俺は…ルイル国に。」

 「そうですか。それじゃそこでお別れですね。」 

 

 男が指差した所は丁度道が二手に別れていた。

 

 「ああ。そうだな。」

 「それじゃ、元気で」

 手を差し出してきた男に手を握る。

 その瞬間、なんだか違和感を感じた。

 「?」

 男を見るが、ただ不思議そうに俺を見ている。

 「どうしたんだ?」

 「いや…」

 何が不思議でどうしたのか、なんてうまく説明出来ない。けれど、何故か初めてセントに出会った時の事をが脳裏をよぎった。

 「そろそろ行かないと。」

 「あ、ああ。そうだな。じゃ。」

 

 それぞれの方向に歩み出す。

 

 行く先にセントは居るだろうか。

 今度も見つけ出せるだろうか。

 今回ばかりは不安だ。


 けれど、いまは。

 何故かさっき別れた男が無性に気になった。

 「あいつ、大丈夫かな」

 

 ◇


 「そっちを御探ししろーっ!」

 「この辺りにまだ居るはずだ!徹底的に見るのだーっ!!」

 あちこちで声があがる。

 まさか国境付近の森の中をこんなにくまなく探すなんて。

 流石にそこまでするとは思っていなかった。

 このまま馬を連れたままだと不利になる。

 馬を放すか…

 木の陰に隠れながらなんとか歩いて来たがここまでか…

 

 「ここは見たのかーっ」

 「!」

 すぐ側から声が聞こえ、思わず身をすくめる。

 が。

 

 ザッ!!!

 

 木の隙間を縫って一頭の馬が何かを乗せて走り抜けて行く。

 驚き見ていると、突然背後から口を塞がれた。

 

 「!!!」 

 「しっ!」

 

 そのままどこから用意したのか木の葉の集合体を自分達の上にかける。

  

 「馬が駆けていったぞ!」 

 「ああ、きっとあれだ!」

 「おぉーいっ!集合の合図だ。」


 何人かの男達は常人とは思えない足取りで姿を眩ました。

 少しの間の後。


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