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ホゴシャな日々  作者: 望月 沙夜
出会い編
1/15

言葉がおかしい部分もあるかと思いますが広い心で見てやってください。

序章


 今日は最低だ。

 はあっはあっ…

 息があがり嫌な汗が額から首筋まで伝い流れてゆく。

「きゃーっ♥︎待ってー♥︎」

ーなんで俺がこんな目に…!

 走りっぱなしで足が疲れて…いや、体が疲れてきたのがわかる。

 振り返ると女の集団が砂煙をあげんばかりの勢いで俺を追いかけてくるのが見えた。

 一体どこから集まってきたのか十人は居るんじゃないかと思われた。いや、もっと居たのかもしれない。

 このままじゃ拉致があかない。こんな小さな、一直線に進んだら町の端にたどり着いてしまう小さな町中では逃げ回るにも限界がある。

 ー隠れてやりすごそう

そう思い走り回っていた町中の細い路地の一つに入り込んだ。

「あーんっっ!路地へ入ったわ!みんなで手分けして追いかけましょう!」

『はい!』

 ー“はい!”じゃねぇよ!協力しあうな!

心の中で悪態をつき、眉根をひそめ更に走り続ける。道すがらすれ違う連中は面白そうにあるいはもの珍しそうに眺めている。俺もその中の一人になりてぇと本当に思う。


 しかし俺の経験からするとこうゆう場所に、こうゆう状況の時に入らない方がいい。戦う、と言う事であればそれなりに腕に覚えはあるし、その辺の輩には負けねぇ自信がある。

 だが、女(しかもまだ未成年のような子や少し年のいったどこかの主婦のようなのまでいる!)相手に剣や拳で相手をする分けにはいかない。しかも好意をもってくれている者に。

 突き当たりにぶちあたってすすめなくなり、追いつかれるか、はたまた路地裏に生息すると言う人相の悪そうな男達に絡まれるかどちらか、だからだ。

 そして細い路地に入るなら土地勘が居る。

 更に言うならば直感力や運と言うものも必要なのかもしれない。

 普段の俺なら間違いなく足を踏み入れないだろう。だが。今日は。

 ーなんとかなるかもしれねぇ!

 根拠は無かった。だが、そう思った。

 いや、思いたかったのかもしれない。

 だって、今俺は人生を歩んできた中で一番モテている状況で、走って逃げなくちゃならないほどなにをどうしていいのか対策が見つからなかったのだから。



◇1

 キィンッ!ガキィンッ!

 「おりゃぁっ!」

ーー夜も更け月が空高くに見える頃。

 小さな町の繁華街から少し離れた細い路地で。剣がぶつかり合う金属音と男達の怒声ともとれるような、獣のような声が暗闇に響く。俺はすでに何人か相手をしていた。背後には倒れている男達が数名居る。目の前で剣の柄を握り直す男は、俺を睨み、間合いを計っているようだ。すでに何度か剣を交えその度に少しずつ男に深手を負わせないようにしていたのだが…

 捕らえることが目的の仕事は殺すなと言われるからなかなか難しい。

ーー特に目の前にいるような体のおおきな奴はなかなか倒れない。


  

 オラクル歴156年。

 人々は通貨や紙幣を使い食べ物や反物を売り買いし、商いや田畑を耕し生計を成り立てており、それを統べているのは各国の王であった。王はモノに税をかけ国を豊かに、あるいは己の生活を裕福にしていた。それ故、国王達は…王族達は、国民の人気を得ようと或はかまわず独裁しようとこぞって力を手に入れたがった。中でも戦う事に特化した者、神と交信できる者、そして特別な力を持っている者達は王族だけに留まらず、権力を得ようとする者達に殊更気に入られ、受け入れられた。そんな時代だからこそ、我こそは、と言うものは王都へ向かい仕事を探す者も少なくなかった。

 そんな時代だからこそ、成り立つ職業もあったのだ。

 そんな時代に生きた男。その男の話を少ししてみよう。

 

 

 「っのやろう!」

 「うるせーよ。だまって縄で縛られておけ。」

 「俺が縛れるかーっ!やれるならやりやがれっ」

 俺の言葉に男は咆哮するような声をあげ血が滲む体を揺らし俺に向かって奴は剣を振り上げてきた。

  はあぁぁぁぁ

 俺はため息をつき、腰から下げている剣の柄を握ったまま横を向き黙って目を閉じる。

 「死ねぇっっ!」

 よく言われる言葉だ。

 だがここで、こいつの思う通りに死んでやるわけにもいかない。

 まだ、やりたい事はそれなりにある。

  

 ブンっ

ーーヒュッ

 

 剣が振り下ろされたであろう音とその風圧が俺の顔に当たり、前髪を揺らす。

 渾身の一撃だったのだろうが、それを躱すのは容易なことだった。

 これだけ狼狽していれば、この仕事をやって来た奴だったら簡単に動きが読める。

 一歩後ろに下がって、俺は足を突出した。

 

 ズサーッッ

 

 予測通りの音がし、顔を向けると、そこには短髪の軽装備で、腕やら胸やらとにかく全身から血を流した中年の男が(俺の予測では30半ばくらい)地に伏し、“仕事の仲間”達が素早く集まり男を縛り上げていた。

 ふう、と息をついたと同時に背中をバンっと強く叩かれた。

 「!!」

 「よーライドぉ。お前相変わらず優しくしてやってるんだなぁ。お前が相手してたヤロー達、全然傷ねぇもんな!」


 全然、と言うのには語弊があるが。

 まあ他の奴らが相手していた輩と比べると軽い傷で済んでいる。すぐに傷は癒えるだろう。証拠に、俺が相手した奴らは血を流しながらも騒いでいる。


 「ゲホッ…優しくねぇよ。つーか傷付けすぎるとしゃべれなくなるだろ」

 ライドこと俺はあんまり強く叩かれゲホゲホと咳き込み、仲間の一人、ロイを軽く睨む。俺と同じくらいの背格好にどのくらい着ているのかわからないズボンに袖のあるシャツ。それに最低限の防具をあてがい、適当に洗って乾かしたようなごわごわした長い髪を後ろで一つにまとめた出で立ちだ。

 ロイは俺が咳き込んでいるのにケラケラ笑っている。

 

 「そういえばそうだなぁ!お前、顔がいいだけじゃなかったんだな!」

 「なに…?」

 

 ロイは、一見人懐っこそうだが口の悪さは俺らの中じゃ一番だ。

 「いや、悪口じゃねぇぜ?だってお前、そのヒョロッとした体格にその顔…。いくら腰に剣差してたって、こんなゴロツキの溜まり場みたいな雇われ傭兵に似合わなすぎだろ!ただの頭がイカレタ奴か、荒れくれモンか、ともかく普通の奴はなかなかこんな仕事やらねぇからよ。てっきり俺はお前もそんなような奴だと決めつけてしまってた訳だ。許してくれ。まぁしかし…つくづく女受けする顔だよなぁ。」

 ロイの戯れ言を無視し俺は歩き出す。

 「おい!待てよ!怒ったのか?」

 後ろから声が聞こえ少し振り返り答える。いちいち怒っても仕方がない。

 コイツとつきあうには聞き流すのが一番だ。

 「もう仕事終わりだろ。一杯やりにいく」

 「おーっ!俺も行く!」

 


 捕まえた輩は大抵“仕事”のリーダー役、ダダンが役人や依頼主の元へ連れて行く。

 俺が属しているのは町の中でも人数の多いグループだ。

 猛者がおよそ15~6人。

 小さい町だが城下街からそんなに離れていないのもあり、不逞な(やから)が多くやってきては町で暴れたり、どこかで罪を犯した者がここに流れて来ていたりして騒ぎ事は日常茶飯事だ。

 何を隠そう俺も旅の途中、腕っ節のあるやつばかりが集まるゴロツキ宿に宿泊したが最後、いつの間にかこの自衛団のような傭兵集団に入る事が決まっていた。

 今日も不逞な輩を捕まえて欲しいとの依頼に夜更けに張り込みをし、ゴロツキみたいな輩を捕まえた。

 

 まあ、元々金が心もとなくなってきていたから働き口を探そうかと思っていた所だったのだが…しかしいくら個々に部屋を与えられ、食事が出たとしてもイカツイ男共と毎日寝食をするのはなかなか気分が滅入る。

 しかも俺は新入りだから俺を気に入らない奴も居るもんで、食堂に皆で揃って居るとなんだか居づらい。

 どこに属してもそんな空気はあるものだから慣れては居るが、それがチーム内でなかなか有力者だから周りの奴もやりずらいようだ。だから、仕事が終えたら俺は大抵、娼婦宿か飲み屋に向かう事に決めている。


 離れた所で捕らえた男達を立たせて歩かせ始めている一番ガタイのいい強面の男がこっちを振り向いた。

 「ロイ!ライド!飲みに行くのはいいが、店で暴れるなよ!」

 「そんなことしねーよ!」

 ロイが言うとダダンが続ける。

 「他の奴にも言っとくぞ!店で暴れるな!それから、女を手込めにするな!いいな!破った奴は俺が捕らえに行く!いいな!」

 ダダンには誰も逆らいやしない。

 荒れくれ者の集まりはダダンへの信頼とそれによるチームワークで成り立っている。

 とりあえず今日飲み屋で暴れる奴はいないだろう。

 ダダン他数名を残して俺とロイ、他にも数名、飲み屋へ向かった。


 

 「キャーっっ!ライドだぁ!」

 「絶対来るって思ってた!」

 「張ってた甲斐があったねぇ」

 町で行きつけとなっている飲み屋へ向かうと入り口付近で肌も露な艶やかな女達に迎えられた。

 この町はなかなか美女が多い。もちろん、スタイルもいい。

 「俺も居るぜ!」

 「俺も!俺も!」

 「よー、今日もいい女だなぁ」

 共にやってきた男達が女達の気を引こうとするが、女達は俺にくっついてくる。

 「あんたたち、お風呂くらいはいりなさいよ!」

 「ねー、ライド。今日はあたしにするでしょ?」

 「何言ってんだい!あたしだよ!」

 いわゆる娼婦ってやつだ。俺の腕に絡みついて誰がどこに座るか喧嘩し始める。

 それと同時に男達から激しい視線を感じる。

 店の中へ入ると夜更けにも関わらず賑わっていた。俺はカウンターに座り酒を頼むと、女達に今日は金が無いから今日は遊べない、と告げる。すると女達はサッと身を変えてロイ達の所へ向かった。

 

 フー、と。息を吐き、出された酒に口をつける。


 「なんだ、ライド。今日は収穫なしか?あの美女達を前にしてどうしたってんだ?」

 「別に。ただ、気分じゃねぇんだ。」

 「かーっ!流石、言うことがちがうねぇ。」

 俺の隣に席を移してきたロイがにやりと笑いながら言った。

 「お前ならこの大陸の美女全て虜にできるんじゃねぇか?」

 「無理だろ。」

 こいつの頭の中は女のことしかないのか。半眼になり答えると、まあ聞けって!と俺の肩に腕を回してきた。

 「この大陸には三大美女って言われている女が居るの知ってるか?」

 「ああ。今や皆嫁いだらしいが、オラクル国のディアラ王妃、カプリチオ国のフリージア王妃、それからギスノ国のライラ王妃だろ。それがどうしたんだよ?」

 俺が答えるとロイはフフフともったいぶったように笑い答える。

 「その、美姫達にも引けを引かない程美しいと言われている姫が最近現れたって噂、知ってるか?」

 「…いや、知らねぇ」

 ロイは俺から離れるとどこか遠い所を見つめ話始めた。酒が回り始めたのだろうか。

 「肌は透けるように白く滑やかで、まるで腕のいい職人が細工したかのように美しい顔立ち。髪は金糸のように美しく太陽の光があたるとキラキラと輝くらしい。天から降りてきた天使のように美しく、見た者全員が見とれてしまうらしい。」

 「へえー」

 「本当だぞ!最近すっごい噂になってんだぞ!」

 「そうか。あ、マスターおかわり。」

 どこか遠くを眺めていた様子だったロイは手をグーにしてブンブンと縦に振る。

 「信じてないだろうけどな、めちゃくちゃ噂になっててその原因がそのお姫様にくる国王や王子達のラブレターが半端じゃないって事だ。毎日百通と手紙が送られてくるらしい。しかも直々にやってきて会わせてくれと直談判する王子も居るらしいぞ!いっぺん会ってみてぇよなぁ。」 

 「そりゃ本当ならすごいな。すげぇ美姫なんだろうななんて名だ?」

 「セント姫。セント・クリスト・カプリチオ姫。御年十三…だったか」

 「子どもじゃねぇかよ。王子や王達は子どもなのか?それともロリコンか?」

 いくら美しいと言っても十三じゃ俺の範囲外だ。そもそも俺なんかが会う事もねぇ人だが。

 「さてなぁ。けど、カプリチオ国って言ったらオラクル国に次ぐ大国だし流通や国外とのやり取りも盛んだし、幼くても妻にしておけばスッゲー儲かるだろうな!」

 「お前みたいな考えの奴がそのセント姫とやらを娶ろうとロリコン根性出してる訳だな。しかし、そんな小さい頃から国の為に自分の人生決めなきゃならんのは辛いだろうな」

 俺はロイが頼んだ肉と野菜の煮込みをつまみながら言うとロイは意外そうな顔をした。

 「ライド…お前って結構真面目なんだな。」

 「はぁ!?」

 結構真面目、なんて初めて言われた。つーか、こいつは俺の事をどうゆうふうに認識しているんだ?顔がいいだけとかヒョロイとか…俺の事嫌いなんじゃねぇか?

 俺が呆れと驚きが混じった顔で見ているとロイが懐から小さな瓶を取り出した。

 「なんだよ、それ」

 どうやって着色したのか紅でも絞って入れたかのようにドピンク色だ。見るからに怪しすぎる。

 「なんだと思う?」

 ロイはニヤっと笑うとキュポンとコルク栓を外す。

 「怪しいいだろ、明らかに。なんだよ、その色。」

 俺が突っ込むとロイは突然俺の首をつかんだ。そして無理矢理上向かせ口を開かせる。

 「!?」

 「この町の美女達をまず虜にしろ。そして城下町に乗り込んでいろんな女を虜にするんだ!そして俺にそのおこぼれを!」

 「んぐっ!?」

 意味の分からない事を叫びながら俺の口の中に無理矢理それを流し込み口を閉じさせ、抵抗しないようご丁寧に手まで押さえてきやがった。

 

 ごくんっ

 

 「飲んだようだな」

 

 バコッ!!

 

 がターンっ!


 俺はロイの手が離れたと同時に思いっきりロイを殴った。その拍子に奴は椅子ごと倒れ、俺はその上にまたがり胸ぐらをつかむ。

 「いてぇっ」

 「何飲ました?なんだ、あの気持ち悪い色の液体は!!飲んじまったじゃねぇか!」

 「わっ!!ら、ライド待て!」

 「待て、じゃねぇよ!あんな気色悪いモン無理矢理飲ませられて怒らない奴がいるか!」

 俺が手を振り上げたとき、マスターが止めに入って来た。

 「ライドさんっ!今日は騒いじゃ駄目なんじゃなかったの!?」

 誰かが教えたらしい。

 俺ははっとなるが、やっぱり怒りは収まらない。

 「騒がない。だから二、三発殴らせろ、ロイ。なぁマスターそれならいいだろ。こいつが殴られれば俺はそれ以上騒がねぇ。」

 俺の言葉にマスターは少し考え、俺から手を離した。

 そしてにっこり笑みロイを見下ろす。

 「ロイ、殴られろ。」

 「マ、マスター!!」

 ロイの悲しそうな表情を背にマスターはカウンターの中へ戻って行く。

 周りの奴らも楽しそうにこっちを眺めているだけだ。

 「た、助けて…」

 ロイの声は空しく俺の振り上げた拳がその顔にめり込んだ。

 

 

 「それで、なんだったんだ、あの液体は!」

 未だイライラするが騒ぎを起こす訳にはいかない。俺は席につき、ロイと俺に同情したマスターのおごりの酒を呷る。

 ロイはマスターにもらった氷の袋を頬に当てながら答えた。

 「あれは、ホレ薬だ」

 ガコっ!

 「いてっ!」

 「ライドさん!」

 ロイを殴ると落ち着け、と言わんばかりのマスターの声が聞こえてきた。今度は床に倒れていない。殴り方が浅かったようだ。

 「ホレ薬ってなんだよ!?俺が誰かに惚れるってことか!?あぁ!?」

 胸ぐらをつかみゆさゆさと揺さぶりながら問う。

 「ああああ、ゆ、揺らすと、しゃべり、にくい~、首じめないで~」

 「ライドさん!死んじゃうから!」

 マスターの突っ込みに、いつの間にか胸ぐらをつかんでいたつもりが首を絞めていた事に気がつく。

 手を離すとゲホゲホと咳き込みロイは話を続けた。

 「ホレ薬と言っても本当に効くかどうかわからないんだけど、飲んだ人が誰かを好きになるんじゃなくて、周りの異性が飲んだ人を好きになっちゃうらしいんだ。」

 「なんだそりゃ!?そりゃ、意味なくねぇか?普通の惚れ薬って言ったら飲んだ奴が…てパターンだろ!つーか、なんてモンを飲ませてくれたんだよ!」

 俺は再びロイの胸ぐらをつかみ揺さぶる。

 「あああ、ラ、ラ、ライドォ、ほ、本当に効くか、わ、わからないしぃ~モノは試しって言うだ、ろ~。ゆ、揺さぶらないで〜」

 ピタっと俺は揺さぶる手を止め、怒りを右手に込め振り上げた。

 「自分で試せ!!!!」

 「グフッ」

 床にこそ倒れなかったが、当たりどころが悪かったらしい。

 ロイはそのままズルっと椅子にもたれ、動かなくなった。

 その様子を面白そうに見ていた同じ傭兵仲間達が娼婦達を突出してくる。

 「どーだ?お前達、ライドに惚れたか?」

 一人が尋ねると女はうーん、と少し考え今日の相手と決まった(やから)の首に腕を回す。

 「わかんなーい。でも、ライドって男前だから、誰でもドキっとはするんじゃないの~?町でも噂になってるもん、ライドに彼女が居るんじゃないか、とか。本当は結婚していて故郷に妻と子どもが居るーとか。」

 「はぁ!?俺は結婚なんて一度もしたことねぇぞ!彼女なんて持った事だってねぇし。」

 あんまり勝手な噂に思わず答えると、仲間達がガハハハと笑い始める。

 「彼女は作った方がいいんじゃねぇのか!?」

 「まぁそれだけ男前なら作らんでも女はわんさかやってくるだろうけどな、いいぞ、所帯をもつってのは」

 「お前、離婚してんじゃねぇかよ!それで語るなよ!」

 「…クっ!逃げたんだよ、あいつが!」

 「浮気するからだろ!」

 とりとめのない話になってくる。

 俺はため息をつくと、もう一度女達に俺を見て何とも思わないか確認し、思わないと言うのを聞いて胸を撫で下ろしてから宿へ戻った。どうやら偽モノだったようだ。

 もちろん、ロイなんか連れて帰ってやるもんか。

 店から放りだされて、道の真ん中で寝てろ!

 


 しかし、この時飲んだロイの変な薬のせいでとんでもない事に巻き込まれてゆく事を俺は予想すら出来なかった。

 そう。俺の平凡な日常が奪われて行く事を。

挿絵(By みてみん)

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