第5話 遊と異世界と空腹
病により死をむかえた主人公は気がつけば草原に立っていた。
そこで神と名乗る男から突然愛の告白を受ける。
「僕はこれでも男だ!!」
お詫びとばかりにもらった身体能力と魔力、そしてエンチャント能力をひっさげ異世界に降り立った主人公。
ファンタジー世界に憧れを抱く少年の冒険譚。
僕が目を開けると鮮やかな緑色が飛び込んできた。
森林らしく清々しい匂いがし、その中にわずかにだが甘いにおいが混じっている。
あたりに視線を巡らせると赤い色をした楕円形の果実やら黄色い丸い果実など、様々な果実が実った木が所々に見受けられる。
どうやらそれらが甘いにおいを放っているようだ。
「僕、本当にきちゃったんだな・・・」
幼い頃から碌に外に出ることが出来なかった僕にとっては正しく幻のごとき光景。
見る物全てが新しく、心が歓喜で少しずつ満たされていく。
「うわっ! あそこで咲いてる花おっきい!。こっちの花はうっすらと光ってる!!」
これまで望んでも決して経験することの出来なかった出来事に我を忘れてあたりを走り回る。
きっと他人が見たら小さな子が遊園地ではしゃいでいるように見えた事だろう。
いつしか時間を忘れあっちへふらふら、こっちへふらふらと手当たり次第にあたりを観察していたが、人が生きている以上は必ず訪れるものがある。空腹だ。
「う~、おなかすいた・・・どうやって食べ物手に入れればいいんだろう。ライトノベルとかだと魔獣におそわれている村人Aとか助けて食事にありつけたりするのに・・・」
ぐ~ぐ~とひっきりなしに主を責めたてる腹の虫に僕はほとほと困り果ててしまった。
死んでから異世界にやってくるまでどれ位の時間が経過したのかわからないが、容態が急変して死ぬまで少なくとも丸一日は何も食べていないはずだ。
目の前に甘い香りを放つ果実が実ってはいるが、食べられるかどうかの判断がつかない以上はうかつに手も出せない。
何せ異世界産だ。毒があったり、笑いが止まらなくなったり、はたまた別の生物に変貌してしまっても不思議ではない。
「こんな事なら身体能力や魔力より食料を頼めばよかった・・・」
最終的には自分の夢のことをすっかり忘れて弱音を吐き、とにかく最寄りの村にさっさと向かおうと思っていると、脳裏にジリリリリ~ンとけたたましいベルの音が鳴り響いた。
「もしも~し。遊さん、聞こえてますか~」
「はっ? えっ?」
突然聞こえてきたベルの音に続き女性の声が聞こえてきた。しかし辺りを見回しても視界に広がるのは青々とした木々ばかり。
「遊さ~ん、聞こえてたら返事してくださ~い。おかしいな~聞こえてないのかな~。返事をしてくれないと泣いちゃいますよ~、グスン。」
うわ~、グスンって本当に口に出す人は初めてだよ。そう僕は思いながらもとりあえず返事を返さないとまずそうなのでとりあえず返事を返してみることにした。
「あの~どなたでしょうか? というよりいったいどこに?」
「も~ちゃんと聞こえてるじゃないですか~。名前を呼ばれたらちゃんと返事しないとだめなのですよ~。寂しいとウサギだって死んじゃうんですからね。ぷんぷん!」
「はぁ、すみません」
「え~と~、私は貴方が出会った変態神。いや、貴方が出会ったアルト神の上司をしてます。世界管理神のノエルといいます~」
いま変態といったよこの方と思いつつも、つっ込みを入れると面倒臭そうなのでスルーすることにした。
それにアルト神が変態だと思うのは僕も一緒だし、このノエルさんという神もあまり深く関わってはいけないタイプの相手みたいだしね。
「今回ご連絡させていただいのは~、遊さんにアルト神が十分な説明をしないで送り出してしまったので~、私の方から補足説明をさせていただこうと思ったのですよ~」
「管理神様自らわざわざありがとうございます」
「ノエルと呼んでくださるとうれしいのですよ~。私、あまり硬い雰囲気は嫌いなのです~」
ノエルさんはそう言うとこの世界について説明を始めていく。
「この世界の名前はレイルフィアというのですよ。遊さんが望んだとおり剣と魔法が存在する世界なのですよ~」
ノエルさんによると、この世界は中央の大きな大陸を中心に東西南北を4つの大陸が囲むように存在しているのだとか。
そして僕の希望通りエルフやドワーフと言った亜人の他、ドラゴンを筆頭とした魔獣たちも多く生息しているらしい。
また、人と亜人間、そして亜人同士の仲もそれほど悪いわけではなく、若干の衝突はあるものの世界は比較的に平和であるとのこと。
中央大陸と北大陸を除く3つの大陸は複数の国々が存在しており、交易もそれなりにあるらしい。
北大陸については寒さが厳しく、農作物の収穫も大して望めないことから人は殆ど済んでおらず、結果として魔獣が闊歩する大陸となっているそうだ。
一通りこの世界に関する基本的な説明してもらい、次はもらった能力に関する話となったのだが・・・
「あの~、説明をしていただき非常にありがたいのですが、話はあとどれくらい続くんでしょうか? 実は先ほどから空腹でして、早く近くの村に向かって食料をどうにかしたいのですが・・・」
「それは失礼したのです~。でも遊さんは村に行ってどうやって食べ物を手に入れるのです? お金は持ってるのですか?」
「あっ・・・」
あまりにも当然な問いかけに僕は絶望の味をこれほどかと言うほど味わうこととなった。
もちろん絶望で腹がふくれるわけもない。
「まぁ、そんなに落ち込む必要はないのですよ~。食べ物なら直ぐに手にはいるです」
絶望により地面に崩れ落ち、まさしく『orz』を体現する僕に希望の言葉が投げられる。
「どうやってですかっ!!」
「ま、まずは落ち着くです。遊さんはアルト神にいくつか能力をもらっているはずです~。その中に無属性の初級魔法で鑑定という魔法が含まれてるはずですので~それで周りに食べられるものが無いか鑑定すれば良いのですよ~」
「ちなみに初級魔法は特に詠唱は要らないのですよ~。魔法名を声に出して効果をイメージすれば発動するです」
言われたとおり近くの木になっていた赤い果実を手に取り、『鑑定』と唱えてみる。
イメージはRPGゲームのステータス画面だ。
「鑑定」
鑑定魔法による効果が発動し、果実から半透明の吹き出しが現れる。
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名前:マルゴの実
説明:温暖な地方のごく一部に自生するマルゴの木の果実
独特の香り、柔らかく甘い果肉が特徴で、食用として
珍重されている。
自生域が狭く、なかなか見つからないことから高級品
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僕は説明文に『食用』の文字を見つけた瞬間にかぶりついた。柔らかい果肉は口の中で溶けていき、甘い果汁がのどを潤す。
どこからかクスクスと微かに笑い声が聞こえた気がしたが一心不乱に食べすすめる。
どうやら異世界についてそうそう飢え死にというパターンは避けられたようだ。
今回はここまで~
中途半端なところで切れてしまった感はありますが・・・
それにしても文章のグダグダ感が自分でも恥ずかしい限りです・・・