第2話 遊と神と勘違い
病により死をむかえた主人公は気がつけば草原に立っていた。
そこで神と名乗る男から突然愛の告白を受ける。
「僕はこれでも男だ!!」
お詫びとばかりにもらった身体能力と魔力、そしてエンチャント能力をひっさげ異世界に降り立った主人公。
ファンタジー世界に憧れを抱く少年の冒険譚。
「初めて見たときから好きでした! 結婚を前提につきあってください!!」
今、僕は唐突に結婚を前提とした告白を受けていた。
正面に立っているのは人は年齢20歳ぐらい。
サラサラな金髪に青い瞳、目鼻立ちが整ったキリッとした顔。
体つきは出るところは出て、締まるべきところはキュッと締まっている。
きっと町を歩けば異性の視線を多く集めるであろうことは間違いないだろう。
「お断りします・・・」
しかし告白を受け入れることは出来ない。
どれだけ顔が良く、スタイル抜群でもだ。
そう、出ることは出ていて(盛り上がった上腕に引き締まった大胸筋)とか、締まるべきところ(大殿筋)締まっていてもだ。
「どうして!! 理由を教えてください!!」
「どうして僕が同姓の男とつきあわなければならないの!!」
そう。つきあえない理由は単純。
僕も男だから。
「え?」
理由を聞いた瞬間、一瞬場を沈黙が支配した。
そして次の瞬間、絶叫が響きわたったのだった。
「おとこ・・・? そんなの嘘だ~!!」
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時間はわずかばかり遡る。
僕が再び目を覚ました時、そこは穏やかな風が吹く草原だった。
少し離れた場所には色とりどりの草花が咲いている。
「ここが死後の世界なのかな?」
僕があのまま死んでしまったであろうことは自覚している。
何より人工呼吸器もつけず、外を出歩くことなんか出来はしなかったのだから。
とりあえずあたりを探索してみようと立ち上がり歩き出してみる。
「うわっ! 体が軽い!」
病気で体を動かすことが出来なかったから普通がどのようなものかわからないけど、僕が思っていた以上に足取りは軽やかで、大地を踏みしめる感触には驚きと感動を覚えた。
「ふふふっ」
思わず笑みがこぼれる。
見渡す限りの草原が心を解放する。いつの間にか僕はかけだしていた。
「ちょっとまってくれ~」
どれ位走り回っていただろうか。
声をかけられて振り返ると誰かが走り寄ってくる。
僕以外にもお亡くなりなった方がいたのかもしれないと勝手に納得して僕はその人に向かって歩み寄っていった。
「はぁ、はぁ、こっちにやってきたと思ったらいきなり走って行っちゃうから驚いたよ」
やってきたのは所謂細マッチョのイケメンで、息を切らしながら笑顔で話しかけてきた。
「すみません。穏やかで優しい風が吹いて気持ちよかったし、見渡す限りの草原で気持ちが高ぶってしまってつい・・・」
「いや、別に責めている訳じゃないんだけどね。とりあえず自己紹介といこう。
私の名はアルト。ここの管理を司っている者だ」
「初めまして。自分は鏡 遊と言います。
管理を司っていると言うことは貴方が神様ということでしょうか」
失礼かなとは思ったが、アルトと名乗った彼は20歳程度にしか見えず、僕の中の神様=老人という予想像から大きく外れていたので思わずきいてしまった。
「神と言えばそうなるかな。私は神王様の名により、人の生死、転生を管理している」
「そうですが、それじゃ自分はこれから地獄か天国に向かうと言うことなんですね」
「いや、そういう訳じゃないんだが・・・。それにしても君は落ち着いているね。
普通は自分が死んだことが信じられずに暴言を吐いたり、泣き崩れてしまう人が大半なのだが」
「元の世界では満足に立ち上がることはおろか、呼吸すら機械の助けを使わなければ出来ませんでしたからね。
こうやって走り回れている段階で元の自分とは違うことはわかりますよ」
多くの本、特にライトノベルを大量に読んでいた僕にとって死後の世界、転生といった物は特に驚くことではなく、すんなりと受け入れてしまっていた。
むしろ考えているのはもっと走り回ったり、向こうに見えている草花を見てみたいということだったりする。
僕の思考は落ち着いていると言うより、どこかしらずれていた・・・
「まぁ、死んでいることを理解しているのなら話がしやすい。
一度死が確定してしまった人間は生き返ることは出来ない。
普通なら魂を清めた上で転生し、新たな人生を歩んでもらうわけなんだが・・・」
「なにか問題でもあったんですか?」
アルトと名乗った神が言葉を濁す。
「よく聴いて欲しい。」
そう前置きすると彼は突然腰を90度折り、右手を僕の方に差し出して大きな声で言い放った。
「結婚を前提につきあってください!!」
「へ?」
思考が追いつかない。
神という存在に告白されているという事実、そして相手は男。
何故死んだ後に突然同姓に告白されているのか。
何か悪い夢でも見ているのかと思ったが、なおも状況は止まらない。
「初めて見たときから好きでした! 結婚を前提につきあってください!!」
再度大きな告白が一帯に響きアルトと名乗った神は右手を差し出して頭を下げている。
正直よくわからない状況ではあるが、遊にとってやるべきことは一つ
「お断りします・・・」
よく訳のわからない状況に戸惑いつつ拒絶する。
その瞬間、アルトはがばっと顔を上げて必死な形相で問いかけてきた。
「どうして!! 理由を教えてください!!」
「僕はこれでも男だ!!
どうして僕が同姓の男とつきあわなければならないの!!」
まぁ、同姓以前に普通は初めてあった人から結婚前提の告白を受けて首を縦に振るような人はいないだろう。
そもそもあったばかりの人に結婚を申し込むような人も普通はいない。
僕が理由を発した瞬間、アルトと名乗った神の顔が驚愕に歪む。
そして出てきたのはアルトの魂の叫びだった・・・
「おとこ・・・? そんなの嘘だ~!!」
第2話目です。
出来れば週一回、日曜日に投稿できたらいいな~