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Episode EX -その原因-

おまけの小話。Episode3の少し前くらいのお話

 ――くしゅん。

 薔薇園にミシェルのくしゃみが響いた。

 主人のために紅茶を淹れていた執事のクリストフ――ちなみに今は月齢の影響で羊の姿である――は、その手を止めてミシェルへ近づいた。

「寒いですか?」

「ううん。違うの。なんだか鼻がくすぐったく……っ」

 言いながらもくしゃみは止まらない。続けざまで辛いのだろう。ミシェルの瞳に涙が滲んでいる。

「熱はないようですね」

 クリストフはミシェルの額に手をあてて言った。

「身体が重いわけでもないし、埃を吸っちゃったのかも……くしゅっ」

 治まる様子のないくしゃみに、クリストフはミシェルの横でうろたえることしかできないでいる。

「おーいたいた」

 どこからか陽気な声が聞こえた。

 木の影から顔を出したのはアドルファスだった。頬が少し煤けている。

「ティータイム中すまんな。クリス、あとで確認してもらいたいんだけど……ってミシェルどうしたの?」

 訊ねられても、己と格闘中のミシェルは返事をすることができないでいる。代わりにクリストフが答えた。

「くしゃみが止まらないらしい」

「原因は? なんか変わったことやったとか?」

「いつも通りだったと思うが……」

 うーん、とアドルファスが考える仕草をする。

「羊アレルギーとか」

「羊……アレルギー……?」

 何の気なしに呟いたアドルファスの言葉がクリストフの心に深く突き刺さった。

 アレルギー。羊。原因は自分なのか。大事なご主人様を苦しめているのは自分なのか――?!

 そのようなことを考えているのか、クリストフの顔がみるみるうちに青ざめていく。よろり、とおぼつかない足取りでクリストフはミシェルから少しだけ離れた。

 ひとつひとつは小さいものの、彼女のくしゃみが止まる気配はない。

「効きそうな薬草あったかなー。……ミシェル、ちょっと診せて」

「待ちなさい!」

 はっと我に返ったクリストフは大声をあげ、アドルファスの進行の邪魔をする。

 眉を顰めた顔を向けて、アドルファスは「何だ?」と訊ねた。ミシェルの順応な執事は彼に負けず劣らずの厳しい表情を見せた。

「狼アレルギーがあるかもしれないでしょう! ミシェルに近づくのはやめなさい!」

「俺が近づいてもなーんもないじゃん? ねーミシェル」

「そんな……」

「とりあえず、お前もうちょっと離れてろ。本当にアレルギーだと悪化するかもしれないぞ」

 打ちひしがれているクリストフをちらりと見やり、アドルファスはにやりと笑った。

その原因。アドルファスが何かしたかも…しれない。

羊毛から抽出したケラチンねー。これアレルギーあるとやっぱ駄目なんだろうねー。羊ねー羊…と思いついたお話。

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