漆:悪魔の魔法バトル
アラストルが地を蹴ってマモンとの距離を詰めた。
何かを唱え、バリバリと音を立てて電気を纏った拳をマモン目掛けて突き出す。
マモンは笑いながら後ろに大きく飛んでそれを回避すると、遠藤の背後に回り込んだ。
「コータ、魔法使用の許可をちょーだい」
「ああ、許可する」
「サンキュ!」
短い応酬の末、マモンはにやりと笑って右手をアラストルに向けた。
「バン!」
人差し指と親指を銃に見立てるポーズを決め、アラストルに狙いを定めてそう言い放った瞬間、指先から閃光が弾のように放たれてアラストルに向かった。
「効きませんよ」
アラストルは短く吐き捨てて左掌でそれを握り潰す。
マモンはちっと舌打ちした。
「くっそ。これだからエリートは嫌いなんだ」
今度は右手と左手の付け根を合わせて、両掌をアラストルに向ける。
「波ーっ!」
昔アニメでよく見たヒーローの必殺技のように、一本の太い光が掌から飛び出し、アラストルに向かう。
「品がないですよ」
アラストルはそれを跳躍で回避すると、空中で回転しながらマモンの背後に立ち、首を羽交い絞めにする。
いかにも知的な雰囲気のアラストルからは想像もつかないような荒業だ。
果たしてそれは品があるのか、と疑問に思うが、怖いので口には出さないでおく。
「ぐっ……何でこんな馬鹿力なんだっ……!」
「純粋な力の差でしょうね。私と貴方では、格が違うのですよ」
「スカしやがって!」
マモンが吐き捨てた直後、彼の身体から膨大な魔力が立ち昇った。
「おっと」
アラストルは冷静な様子で手を放して後ろに飛び退く。
「野性的ですね。下品な貴方に相応しい」
やたらと相手を見下す発言ばかりのアラストルを見て、ああ、ブチギレているんだ、と気付いた。
常に冷静沈着そうな顔をしているが、自身の魔法を阻害されてプライドが傷付けられたことに、心底怒り狂っているらしい。
なるほど、アラストルはキレると静かに暴言を吐くタイプなんだな。いや、実際喧嘩になっているから手も出しているけど。
「昔っから気に喰わねぇんだよ! お前のそういうところがな!」
飄々としていた態度から一変して、マモンがその辺の不良のような口調になって両手を掲げた。
「喰らえ!」
今度はマモンの手から、機関銃で放たれたように魔力が何発も放出された。それらは全てアラストルへ向かっていく。
それらを難なく躱すアラストルだったが、それを見たマモンが、唇を吊り上げた。
何か企んでいるのか、そう思った直後、遠藤が叫んだ。
「今だ! マモン! 許可するぞ!」
刹那、アラストルの背後に、黒い何かが渦を巻いた。
「っ!」
「アラストル!」
名を呼んだ瞬間、アラストルの腹部を、黒い何かが貫いた。
「ぐっ……!」
顔を歪めたアラストルに、マモンが勝ち誇った様子で高らかに嗤う。
「はーはっはっ! 引っ掛かったな! バァーカ! この瞬間を狙ってたのさ!」
そうか、悪魔は人間界において契約者の許可を得ずに魔法を発動することができない。だが、準備はできるのか。
魔法のことはよくわからないが、おそらく罠系の魔法を用意しておいて、契約者からの許可をもって発動するようにしていたのだろう。
「アラストル!」
名を呼ぶが、彼の口から応答する言葉はなく、代わりにごふ、と血が噴き出した。
ああ、悪魔も血は紅いのか、こんな時なのにそんなことを頭の隅で考えてしまう。
アラストルを刺したそれは、そのままずるずると伸びてアラストルの手足に絡みつき、彼を磔の状態にしていく。
その様子を見ていた遠藤が、俺を振り返って愉快そうに笑った。
「はっ! 勝負あったな! 山崎! 折角悪魔と契約したのに、また俺に負けるとは可哀想な奴だ!」
俺は唇を噛み締めた。
悔しい。
一度ならず二度も遠藤に負けるのか。
結局雪辱は晴らせぬまま。
アラストルにも悪いことをしてしまった。
俺と契約さえしなければ、こんなことにはならなかったのに。
そう思いながらアラストルを見ると、彼は何かを訴えるように俺を見ながら唇を動かした。
「きょ、か……?」
魔法使用の許可を出せた言っていると悟り、俺は声を上げた。
「許可する!」
刹那、アラストルが唇を吊り上げた。
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