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女心に、なってみた  作者:
高校一年生。秋。
9/12

月一の悪夢

 九月下旬。秋風が吹き、日の上っている時間が短くなる時期。でも、涼しさは置いてきたらしいけど。


「ふわぁ...」


 この姿にはだいぶ慣れてきた。下着の付け方も。


「葵、おはよ。授業中ずっと寝てたね」


 だけど、一つだけ疑問に思うことがある。


 明日香の存在だ。学校が始まってからというもの、明日香との距離感があまりにもおかしい。


 今だって、頬を両手で挟まれてるし。


 それに、なんだかドキドキ...いやいや、何言ってんだ俺。


「なんだよ、いいだろ」


「良くないよ。留年するよ」


「これでも学年二十三位だから。舐めるなよ」


「ほんとそれ信じられない。不正?」


「俺がすると思うか」


「うん」


「うんじゃなくて。とりあえず早く帰るぞ」


 もう放課後。ここ最近、明日香とずっと帰ってる。


「でさ、私たちのクラスってなんの出し物するの? なんか決める係だったよね?」


「そうだよ。でもまだ決まってない」


 そろそろ文化祭の時期に突入する。正直、乗り気じゃない。


 決まってないと言っても、候補はもちろん出ているわけで。


 お化け屋敷、射的、食べ物系と、ありきたりなものの中に、一つ。


 メイド喫茶、があった。


 別にやるだけならいいんだ。良くないけど。


 経緯が、葵ちゃんのためにー、だって。同じ係の麻里が変な提案をしたせいで候補に上がってしまっている。


 だが、なぜかみんな乗り気なんだよな。そんなにメイド姿みたいか? と思うけど。


 確かに、俺が男だったら、女子のメイド姿、と思うとソワソワする。そんな感じなんだろう。



 家に帰り、すぐベッドに寝っ転がる。最近は全然勉強できてないし、授業中も寝てるからのんきなこと言ってられないかもしれない。


 受験のために、今からしてないと遅いとか言われたけど。


 受験、受験...。


 まあいいや、炭酸飲んでぱーっとしよう。なんか社畜サラリーマンみたいなこと言ってるな、俺。


「葵、入るよ」


 部屋をノックして入ってきたのは、優奈。ふわりと、香水のいい香りがする。


「なんだよ、いきなり」


「そんな警戒しなくても。まあちょっと話させて」


 優奈は俺の勉強机の椅子に座った。


「葵はさ、今のままでいいの?」


「なにが」


「ママとパパとの関係。流石にずっとはまずいでしょ」


「そんなのわかってるよ」


「じゃあ、なんで関係を直そうとしないの?」


「なに、説教?」


 思わず、声を大きくして言ってしまった。優奈の少し傷ついた顔に、胸が痛くなる。


「...ごめん」


「こっちこそごめんね、いきなりこんなこと言って」


 自分だって、この関係は今すぐにでもやめたい。でも、あんな偏った考えをもったやつらとはまっぴらごめんだ。


「でも、なんでいきなり?」


「ほら、私十二月に引っ越すから、流石にまずいかなって」


 もう時間がない。優奈だって、夢に向かってのびのびとしてほしいから、引き止めたりはできない。


「ゆう姉。なんで俺にそんな優しくするの?」


 ふと聞いてしまった。こんな質問、答えにくいだろう。


「ん~、家族だし。それに...」


 優奈は言いづらそうな顔をして、言葉を発した。


「私と、同じ思いさせたくないから」


「ゆう姉と...?」


「ま、この話終わり。ママとパパのことよ~く考えておいてね」


 優奈は去り際にウインクをして、部屋から出ていった。


 もう頭の中が渋滞すぎる。勉強、文化祭、母さんと父さんのこと、明日香のこと、優奈のこと。


 もしかして、優奈も、父さんたちとなにかあったのか? その割には、今は普通にあいつらと接していたような。


 関係を直すのも、視野には入れておこう。



「朝...?」


 翌日。朝日に照らされ目を開けた。


 体がものすごくだるい。学校に行くのがだるいとか、そういうのじゃなくて。


 なんだかパンツも少し違和感がする。なんか、漏らした時のような。


 とにかく腹が痛い。吐き気もなんだかする。


「葵~、学校遅れるよ」


 階段から優奈の声が聞こえるが、そこまで声を出すことすらままならない。


 なんとか起きようとし、纏っていた毛布を剥がすと。


「血ーーー!」


 ズボンに血のシミがついていた。嘘だろ、出血? 俺死ぬのか?


「葵!?どうしたの!?」


 優奈が階段を駆け上ってきて、ドアをばんっ、と開けた。


「ゆう姉、なんか血が...」


「...あ~、始まったみたいだね」


「これ、まさか...」


「女の子の日...生理だね」


 嘘だろおい。生理って、めちゃくちゃきついって聞くけど、絶対耐えれないって。


「とりあえず着替えよう。シミとらないと」


 俺は服を着替え、ナプキンとやらをつけた。なんかすごく違和感しかない。


「学校、行けそう? ...って、聞かなくても分かるね」


 症状はまったく落ち着かず、俺はソファにうずくまっていた。


「学校、連絡しといてくれない...?」


「分かった。今日講義ないから面倒見てあげる」


「さんきゅ...。というか、なんで生理なんてものがあるんだ」


「赤ちゃん生むための準備だよ。我慢我慢。ほら飲んで」


「俺産む気ないんだけど」


 差し出されたホットココアを飲んで、ソファに寝る。


 しかし、想像以上だった。生理というものはこんなに大変なのか。いや、大変とかでは表せれない。なんか、ふわふわしてるというか、そんな感覚だ。


 これからは一ヶ月に一回あると思うと、気が重いとかいうレベルじゃない。





 


 


 

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